2023年5月31日水曜日

連れてこられたスポンサーの悲劇

超星神グランセイザーが放送されていよいよ20周年を迎えつつある今、
「メインスポンサー」として未だに年長のオタクから名前を挙げられがちなコナミだが、
コンプリーションが出た今、自分の認識は

「制作の為に呼ばれたスポンサーであり、超星神シリーズ自体の企画の責任が殆どない会社」
というものしかない。





これがどれだけ重要な問題かは、案外に特撮ヒーローを好むようなタイプのオタク連中が認識していない。

まず「特撮魂」にて川北紘一は「(当時の)コナミは何も言って来なかった」と、制作当時の状況を証言していた。
コンプリーションにおいても、各スタッフ側からコナミがシリーズ展開時に「メインスポンサーとして」特に何かしらのサジェスチョンなりを入れてきたという証言がない。
強いて言えば、セイザーX当時の年長向けホビー誌にてコナミ側担当が「まず試作品を幼児達に触らせて、殆ど使ってないギミックは外した」
というインタビューでのコメントがあったくらい。

最後の部分のみやっとコナミがマジメに取り組むようになった、とも言えないでもない。
#玩具者からすると未だにこの件は首を捻られているが…。
だが、コンプリーションのシリーズ終焉に関する釜プロデューサー・船田プロデューサー両氏のコメントがこの状況を象徴している。
「スポンサーが継続を断念した」
が、それだ。
しかもその話は、両氏の話を勘案すればセイザーX放送時の比較的初期に通達があったとか。
#それに対する疑問は過去更新で触れたので繰り返さない。

もし仮に、コナミが最初から企画製作したものを東宝に持ち込み、制作会社はコナミが自らゼネラルエンタテイメントを指名した上で作ったとすれば、
まず最初から3年も枠を抑えるなんてのんきなことは言わなかったろう。
一年どころか結果が出なければ半年で切る、くらいのシビアな態度は取ったはず。
もっと言えばシリーズ化自体も考えなかっただろうし、今残された超星神グランセイザーと同じ形の作品ですらなかっただろう。
そうなれば、先の「特撮魂」内でも川北紘一が述べていたように、一年程度であれば川北自身参加していなかったかもわからない。

上記体制において3年枠を抑えたとしても、企画主体はコナミになっているのだから
「あー特撮ヒーローあきませんか。 じゃ次アニメですなあ」
なんてドライな態度と共に、2年目3年目はオリジナルのアニメ企画に転化した可能性だってある。
実際企画の主体、かつカネ出すのがコナミである以上そうなって当然であろう。


ところが現実は、ゼネラルエンタテイメントが企画の主体であり、東宝からは「スポンサー連れて来ればやるよ」と言われて連れてきたのがコナミ、という程度の関わりでしかない。
この時点でコナミ自身は企画に深く関わっているわけではないことは疑えない。
コンプリーションでは、スタッフによるグランセイザー制作中の「ヒーローの原型が変わる度に担当者がいちいち写真を撮っていった」というコメントが残されているのだが
一作目の時点でこの手綱の引けなさは、ちょっと考えたらだれでも疑問に思う。
もっとも「連れてこられたスポンサー」である以上、現場に引きずりまわされているのも仕方ないのだろうか。

これがバンダイや後のタカラトミーだと、それぞれに自社でちゃんと現場をコントロールしているであろうフシは雑誌インタビュー等々で伝わってくるのだが…。
一応作品企画にもキッチリ関わっているわけだし。

だがコナミはそれらメーカーとは違い、本シリーズが事実上の玩具事業本格参入と相成ったわけで。
ビデオゲーム業界とは勝手の違う世界で翻弄されまくったのは想像に難くない。
当時は旧タカラを傘下に収めていて、それなりにノウハウは吸収していたはずなのだが
玩具設計や製造・流通くらいに留まって番組制作に関する企画からの関与という肝心な部分は何も手に入れていない可能性はある。

何故かガンジス名義で関わっていた大月俊倫が何かしら企画製作で動いていたという痕跡も、コンプリーションを読んだ限りでは見えてこない。
強いて言えば船田プロデューサーと「いつか特撮もの作りたいね」程度の話しかしていないくらいで。
キングレコード時代にコナミと多少かかわりがあったはずの大月ですらこれなのだが、コナミとのパイプ役をやっただけ、の可能性も捨てられない。
#とはいえコンプリーション含めて何かしらの言及がないのが不気味ではあるが。 他作品のムックでは顔を出しているらしいがそっちは見る気がしないし…。

このガンジスも庵野秀明だのあかほりさとるだのが出資していたとかいう噂があり、名前だけ見たら錚々たる何とやら…なのだが、控えめに言っても大した実績を残した感じもないというか。
これについては90年代業界人的カラ騒ぎ、と言えばそれまでなのだろうか。
とはいえ本シリーズに関しては、大月があかほりのセンから脚本家呼べてたらまた違ってたのだろうか?

なんでそんなこと急に書くのか、と言えば…
同時期に制作・放送された魔弾戦記リュウケンドーにはこれまた90年代のビデオゲーム業界を賑わせた一人であるレッド・エンタテイメントの広井王子が関わっていたのだ。しかも原作として。
こちらは企画から旧タカラがガッツリ関わっていた為、本シリーズとは違い一応スポンサーとしては堅実な仕事をしていたのが展開当時でもハッキリ見えていた。
#新規作品という事もあるため、店頭にて無料でデータベース的なDVDを2度ほどに渡って配布等。
#コナミ傘下時代から企画そのものは進めていたと思われる。


本シリーズに話を戻すと、「一応」ガンジスが企画協力として関わっているのだが、コンプリーションを読んでもどの程度関わっていたのかが謎。
また、企画には藤原正道が全作に関わっており、(仮に同じ人物であれば)アニメでは幾つか実績のある同氏がどこまで企画製作に携わっていたのかも全く見えない始末で。
こうした部分でもまさに「船頭多くして船山に登る」を体現してしまっているというか…。

こんな裏側を、ムックやスタッフの著書、雑誌記事等から見えた状況証拠から推察してみせたわけだが、
これを踏まえると、シリーズ終了後に残った評価があまりにもつらい。

「コナミがメインスポンサーとなって作られた特撮ヒーローシリーズ」
というものだが、コンプリーションを読めばそんな評価がしづらいのは一目瞭然なわけで。
正確には
「連れてこられたコナミがメインスポンサーに就任しただけの特撮ヒーローシリーズ」
なのだが。
太赤字の表現から見ても、コナミが企画主導だったとは読めないように書いたつもりである。
その前の太字、つまり一般的に信じられている内容(コナミ企画主導=メインスポンサー)では、内実が伴わないのでこういう表現となった。

コンプリーションのライター陣が手加減というか、内実はコナミ企画なんだけど何かしら不都合があるからその事実を隠してああいう書き方をした、なんてのはまずありえない。
そんなことして誰が得すると言うのか。
劇場版セイザーXにおいて、当時人気絶頂であったセガのムシキングと併映させられてプライドが傷ついたであろうコナミが、
今の今まで本シリーズに関して何らコメントを発しないこの事実。
コンプリーションにおいてすら。
#よく考えてみれば、ほんとに本シリーズがコナミ立案企画であれば、ムシキングとの併映には大いに難色を示したはずだろう。
#単に金出して製品化権持ってるだけの実際の立ち位置でもやっぱコナミ社内では「…」だったんじゃなかろうか。これ。


呼ばれただけのスポンサー故に読みが甘かったのも悪いと言えば悪いのだろうが、
東宝他があまりにノープランで展開させていったが故の、商業上の失敗。
こうした諸々の負債を…イメージの部分も混在していると言え、背負わされ続けているコナミ。
正にオタクが好む「情報としての特異性と希少性」でのみ成り立ってしまった超星神シリーズ。
未だに「コレ知ってる?」程度の触れられ方しかされない時点で、オタクの玩具になってしまった本シリーズとコナミ。
そうして本更新タイトルにあるような、悲惨な扱われ方をされがちなコナミ。


肝心のビデオゲームに代表されるアミューズメント業界においては健在で何よりであるし、そこを否定する人間はそうはいまい。


「コナミの税金対策のために作られた」という発言は、アギト以降の平成ライダー好きな特撮ヒーローオタクから展開当時よく聞かされたものだが、
この悪評も押し付けられただけ押し付けられて、全く否定もせずに黙殺し通すコナミ側の心境たるや。
#今も赤字の印象を持ち続けている東映ヒーローオタクは多い。

もっとも、3年もコナミが枠を抑えたという下りはどういう判断がコナミ側にあったのか。
これも最大の謎の一つとして残っているのがなんとも…。

本シリーズはせめて、企画立ち上げから玩具設計・造形からコントロールし得ていたのならば、実りある失敗であっただろう。
展開中・後のアムドライバーや武装神姫では、本シリーズのような悪評はまず立たないことを思えば
やっぱり単に連れてこられただけのスポンサーとしては、あまりに辛い評価に終わってしまっている。

連れてこられただけで痛い目を見させられるのはまっぴらだ、
そう、コナミも他の大手企業・・・つまり、特撮作品にカネ出してくれるであろう企業達は、
本シリーズを教訓としているのは想像に難くない。
本シリーズの後、大手企業のソフトバンクやブシロードが特撮作品にカネを出しているとはいえ、単発である事実を思い返していただきたい。

あまりにリスキー過ぎる。 
それが特撮ヒーロー物や、特撮を使った映像作品に対する企業の認識ではなかろうか。
コナミはそれを、身をもって示した唯一の企業になってしまった。
本シリーズにおけるコナミの立ち位置は、バラエティ番組のスポンサーのそれに限りなく近いというのに。


企画の責任がないのに、結果の責任を負わされるこのスケープゴート的役回りたるや。