2021年3月29日月曜日

【1】主体はゼネラルエンタテイメント

 今まで自分は「超星神シリーズはコナミから依頼があって制作された作品群」だと思っていた。

川北紘一の「特撮魂」でもそのように読み取れる書かれ方もされていた。

そもそも、ビデオゲームメーカーであるコナミという会社のイメージからきた意外性が、知らない内に視点を誘導してしまっていたとは思う。


ところが実際は違っていた。

今の今まで「謎の企業」としてあまり顧みてなかったゼネラルエンタテイメントが企画の主体だった。

※なお、本更新およびラベル「completion」の記事においては敬称略。


「コンプリーション」(以下本書)にて登場するゼネラルエンターテイメントの元スタッフ・船田晃の経歴を検索してみると、

セガへ入社以降、ビデオゲーム業界およびデジタルエンタテイメント方面のキャリアを積んでいるようである。

セガ退社後にゼネラルエンタテイメントへ入社したと思われるが、その間にガンジスこと大月俊倫との付きあいの中で

「いずれ特撮を」という話があったという。

やがてゼネラルエンタテイメント(以下GE)へ入社後、同社と付き合いが深いとされる東宝へ企画を持ち込み

東宝からは「スポンサーが居ればやるよ」という回答を得、GEとも関わっていたとされるコナミへ打診・快諾の結果、ここに特撮ヒーロー物の企画がスタートしていくこととなった…

東宝へ企画を持ち込んだのが2002年夏。 のちに「超星神グランセイザー」と名付けられた作品が放映されるのが2003年秋。

その間約一年、企画が練られてはスタッフを集めていくことになったそうな。


本書において、最古の企画資料から「超星神グランセイザー」へ変わっていき、実際の作品がどう推移したのかについては更新を改めたい。


GEにおいては本シリーズにメインスタッフの一人としてかかわることとなった船田晃は当時の証言者として、本書への証言割合が高いこともさることながら

当時東宝側プロデューサーの石井・釜両氏や脚本家・稲葉一広からも度々GE側スタッフとしても言及されることも多い為

他のGEスタッフと比べても特別に本シリーズへの関与が深いと言えようか。

それはガンジスと共同で制作した、のちのグランセイザーへつながる初期企画の時点でも窺えるが

ジャスティライザーではGEそのものの作品への関与のウェイトが強まると同時に

東宝・釜プロデューサー(当時)曰く「四社の代表が集まっていた」がゆえの迷走をも生み出すことに繋がるというマイナス面も見えてきてしまう。

この四社の内訳が東宝・GE・テレビ東京・読売広告社であることも本書で述べられている。


ここで東映ヒーローや円谷ヒーローに慣れている人々からすると疑問に思うことがあるだろう。

それらでいう所のスポンサー・バンダイに相当するコナミがあまり関わっているように見えないのだ。

実際、本書においてコナミ側スタッフの証言は一切出てきていない。

#しいて言えばグランセイザー記者会見時のコナミ側専務コメントが引用されただけ。


ここに関しては自分自身、疑問が残る上に本書スタッフ側がいくらかコナミに慮ったのでは?と思えなくもない。

せめてコナミについてはもっと突っ込むべきだったのが、自分から見た本書の欠点の一つではあった。



話を戻す。

この欠点を補うべくセイザーXでは、釜プロデューサーの発案により「四社が同じ方向に向かわない限りOKを出さない」方針へ変更。

恐らくジャスティライザーにおいて様々の迷走が生まれた状況を踏まえ、

四社全てが納得の上でない限り企画及び制作の方針を動かさないということになったと思われる。

幹事社である東宝としては、どうにも混迷を極めた本シリーズの舵取りをここで初めてハッキリと一つの方向に定む為に提案したことなのだろう。

結果的に作品のクオリティに直結したとは言える。

とはいえ、GE側も本編制作においては三作全てに彼らなりに努力した跡がうかがえるのも事実。

それがたとえ現場の混乱を招いたところがあったとしても、だが。

例えば・・・


・グランセイザー時、シリーズ構成・大川俊道の脚本作成の遅れをフォローすべく稲葉一広などを逐次投入。 

 →結果大川の登板数が激減。 細かいことはグランセイザーに関する更新にて。

・ジャスティライザーではGEが本編制作に本格関与。 スタッフの選定から関わり、

脚本の提出先がGEになるなどの変化も生じる。

 →GEだけの責任でもないにせよ、結果的に企画の迷走が加速する。 これもジャスティライザーに関する更新にて。



このあたりは、本シリーズが事実上初めてのドラマ制作となったGEの意気込みが空回りした部分もあったであろうことは想像に難くない。

しかもジャンルものの一つである特撮ヒーローものという難しいものへの挑戦であったことを思うと、無謀なチャレンジであったと言いきれてしまえるのも事実。

結局本シリーズ終了後、GEはいくつかドラマの制作に関わった後解散している。

船田晃はしばらく後に他社へ移籍し番組制作に携わっていくことになる。


本書は、各スタッフの証言を踏まえて本シリーズの企画や制作の推移を概観できるのだが

どうにもGE側に戦略や手法に乏しい部分が見え隠れしてしまうのはいかんともしがたい。

ほとんど東宝側でどうにかコントロールした部分が多かったのではなかったろうか。

#それが更なる混乱を招いた可能性もあったのかも知れないが…



このあたりの、一枚岩になれない問題は本シリーズに終始付きまとっていた欠陥であり

別の更新でもう少し突っ込んでおきたい。

GEそのものに関してはただ一つ、経験不足からくるコントロール力の無さというのはあっただろう。

作品を創ろうという思いが強すぎて、適切なスケジュール管理から体制の構築が弱かったのかも知れない。



船頭多くして船山に上り、頂点で櫓を組んではバラバラの向きを眺めた。

さて、船のオーナーの心境や如何。