2018年1月21日日曜日

制作側としての東宝への疑問

最近は個人的エピソードからの考察?が続いていたのだがそろそろ普通の考察?も進めたい。
「考察?」なのだからまあ基本的には主観によるものでしかないので
お堅い考察とはちょっと質が違うのは相変わらずだが。


今回は超星神シリーズの制作統括という立場と言っても差し支えないであろう「東宝」である。
このシリーズは制作委員会形式によって作られてはいるが、実際本シリーズに携わった会社の名前を出す際に必ず先に出るのは
どうしても東宝になるし、OPテロップでも制作に名を連ねている以上この認識は間違いではない。
そもそも制作発表の時点で「東宝」の名前が先に出る以上どうしようもない。


この東宝に対しては、特撮映像というものに対して興味を抱かせてくれた会社であることにおいては
個人的には強く意識する会社でもある。

なにせ東映ヒーローで幼少期育ち、大人になって出戻った頃、その東映テレビヒーローの特撮面については徐々に疑問を持つようになっていったわけで
これはテレビなのだから仕方ない部分もあるが、今でも東映のヒーローものは「無理して毎週特撮映像を見せている」としか思えないところがある。
特に毎週3、4本制作していた時代などはかなり適当なセットとバンクが悪い印象を抱かせることとなった。
平成ライダーではバンクと言えるバンクはなくなっているものの、あまりピンと来ないCGモデル群が
特撮面の興味を削ぐこととなった。 これはライダー自身の必殺技シーンも混みだが。


これはこれで自分自身が厳しく見すぎの感もある。
とはいえライダーはライダーでカッコつけはともかくいまいち内容や戦闘、特撮への興味は持てなかった。
平成ライダーでしっかり全話、ソフトとはいえ見返したのはクウガとアギトのみ。
龍騎以降は早送りで戦闘シーンのみ見るという始末だったので、よほどライダーシリーズとは縁がないのだろう。
昭和のライダーですらBLACKだけ全話見て後は同じく早送りというくらいなのだから。
そして一つ断っておくが、自分自身は単に仮面ライダーという作品そのものにあまり興味が持てないというだけである。

一方メタルヒーローシリーズはわりあい好みではあったが、特に好きなのがWSPとSRSである。
もっとも今はよき思い出として生き続けているが。


「同じ着ぐるみの戦いなら、巨大な特撮のほうがいい」
という価値観が、自分の中にあることは間違いないし実際ウルトラシリーズだけは早送りすることもなくしっかり見返していた。
戦隊がそれに次ぐものの、やや物足りなさを感じていたのは事実。
戦隊で育った自覚があるので、ロボット戦のほうが好みであるのだが・・・。


そんな「ロボットによる巨大戦への新たなる展開」を渇望していた自分の目の前に現れたのが
超星神グランセイザーだったのだ。



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既に特撮ヒーローものへの興味は引き気味だった自分を、その映像において再度引き戻した主犯はなんといっても東宝と、その出身であり当時フリーだった川北紘一だったことは
今尚、憎い気持ちもあるもののしかし不快感はなく、感謝の気持ちすらある。
やはり巨大ロボットによるド迫力の戦いがスキなんだなと再認識させられたのだから。

本シリーズ登場後、東映側も自身が本家であるプライドを刺激されたのか
「特捜戦隊デカレンジャー」からは巨大戦のクオリティアップおよび、話によっては挿入パターンを変化させるなど(川北曰く「テコ入れ」)、
明らかに本シリーズへの意識が窺える展開を覗かせていた。
少なくとも「轟轟戦隊ボウケンジャー」までは特撮面で張り合おうという部分はヒシヒシと伝わっていた。
そしてこの頃内容面においては特に本シリーズを意識したようなフシは見受けられない。
というか、それはそれで東映のほうが長くやっている分文芸や演出、それらを統括するプロデューサーも手馴れているため
意識するまでもなく自ら作り出した設定や要素のみで勝負出来ていたのも大きい。


要するに本編のことだが、一方の本シリーズはどうかといえば・・・。
まるっきり勝負になっていなかったというのが本当のところじゃなかろうか。
特撮面については川北紘一が最初から東映を仮想敵と見做した上で様々自分たちで工夫していた結果、東映もつられて土俵に上がったと言い切れるが。
一方の本編は最初っから同じ土俵にすら上がれて居なかったといえる。  超星神シリーズのほうが。
未だに当時の年長視聴者からネタ部分だけを拾って語られる事実を見ると、やはり本編がまるで注目されない物語になってしまったというのが、
誠に遺憾ながら、今でもファンである自分から見た客観的事実と言える。


ファンびいきの視点としては、違う山を目指していただけのように感じるしそうも言いたい。
事実グランセイザーだけはそういった意識を多少は感じる部分もあった。
放送開始当時競合していた東映の二作品にはまるで乗れなかったのを思うと、あの陽性だが割と奥行きもあった世界観は出色だと今でも思う。

ところが、記者会見で東宝側プロデューサーが露骨に東映を意識した発言を行ったジャスティライザー、そしてコナミ側が露骨に幼児向けを狙ったかのようなセイザーXでは
悪い言い方をすれば「東映のデッドコピーのようなものを目指した」感じも受けた。
特にジャスティライザーについてはあまりに話の起伏に乏しいのに、そのくせ流れを一度ぶった切っているため印象が悪い。

セイザーXでは文芸・演出スタッフの数を減らした上で話のクオリティアップを図ったのが功を奏したものの
そのストーリー・ドラマにおいてはさておいても本編の画作りにおいて前二作より地味というか
終始微妙なチープさがあったのは否めなかった。


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「どこかに手を入れたら、どこかが酷く犠牲になる」
というのが、本シリーズの迷走感の一端ではある。

グランセイザーは最初の作品ゆえ、全体が荒削りの結果歪んでいた一方ストーリー面のおかげで作品として成立していたといえるが
ジャスティライザーはキャラドラマを強化した代償としてストーリーが犠牲に、さらに特撮面も単調になってしまうし
セイザーXはキャラドラマもストーリーも強化し、特撮面も持ち直したにも関わらず
本編演出やその映像面では最後までチープさが漂っていた。
(安藤家や戦艦内部などがセットだったことが原因とは言えるが、野外でのシーンや戦闘シーンでもどうも地味というか、目を引く映像や演出は無かった。)


恐らく川北紘一を初めとした特技スタッフや、直接制作に携わったゼネラルエンタテイメントに
現場で動いていた各スタッフは最大限作品を良くする為に努力を傾けていただろう。
しかし、こうもアンバランスになってしまうのは、最終的にジャッジを下す立場である東宝側に問題があるんじゃないかと考えている。

普通三年も実写ヒーローもののために枠を抑え、予算を出してくれるなんて大盤振舞は無いのだから
1年毎に趣向を変えるにしろ計画的に、ひょっとしたら4年目以降もいけるかも知れない程度には
様々討議を重ねた上で展開するべきだったように感じる。
だが・・・。
東宝側プロデューサー自体がグランセイザーとジャスティライザー、セイザーXで切り替わってしまったせいで
いまいちシリーズとしての骨子が出来上がらなかったのは残念だと思う。
恐らくシリーズの戦略を検討するようなことも一切なかったのではなかろうか。


そこだけ見れば東映でも同じ状況は現出しているが、あれはあれで長い歴史のある作品群を手掛けている中で起こっているものであるし、世代交代という側面のほうが強い。
この「長い歴史のある」と「世代交代」がキーポイントである。

せめて3年間はグランセイザーかジャスティライザーと同じプロデューサーで、作品世界やコンセプトを固めていたらと思うと残念な気もする。
川北紘一だけが頑張ってたって仕方ないのだから。
#川北個人が本シリーズについてどうおもっていたのか、ゆくゆく聞ける機会もあるのかな?と思いつつ拙blogを続けていたのだが・・・。


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グランセイザーのみの石井信彦
ジャスティライザー、セイザーXの釜秀樹
この二名が東宝側プロデューサーなのだが、素人が検索で調べた範囲だとテレビドラマの経験は浅い。
辛うじて釜氏のほうが手掛けた本数は多いようだが、両者に共通して言えるのは
テレビドラマよりは映画のほうが仕事としては多いということだろう。
#本シリーズ以前の仕事を調べた結論です。 一応同姓同名なんてことは無いだろうとは思いますが・・・。

そこらへんを東映との比較で考えれば、東宝側でテレビドラマを手掛けられる人材が不足していると思えるし事実そのようである。
それゆえに不思議な、今でもネタにされるような作品群が出来上がったとも言えるが・・・。
#もっとも、ヒーローものをやりたがる人が東宝側に居なかっただけか?とも感じるところが悲しいところだが。

企画協力にガンジスこと大月俊倫も居るのだが、彼はどこにどう関与していたのか不明である以上
どうしても他社作品のようにプロデューサーに注目することにもなるのだが
石井信彦は良くも悪くも過去の東宝作品からネタを拾ったり、主要人物12人分の名づけにも関与したりと
一応力を入れようとしていたであろうことは窺えるのだが。
ただ本編に関しては石井当人もあまり舵を切ろうとしていないようにも見えた。
ネタは振った!あとは任せた! みたいな雑さも感じなくはない。

ジャスティライザーとセイザーXの釜秀樹だが、この人が関わるようになってからは
「ヒーローの家族」という要素が混入するようになる。
コレ自体は実は東宝ヒーローの歴史上、全10作のうち5作に渡ってレギュラーとして出てくるのだから
よほどの割合であるし、釜本人がそこを意識したのかどうかは定かでないにせよ
個人的には「東宝ヒーロー作品は家族が強調される」という認識が植えつけられている。

さておき。

ジャスティライザーは総評で書いたように、家族の要素が唯一の軸にしかなってなかったせいか
結果的にはヒーローものとしてはなんともユルい内容の作品となってしまった。
セイザーXにおいてはそのユルい部分を若干ヒネりつつ継承し、ストーリー・ドラマ両面で
その要素が活きるところまで昇華できた。
林民夫がどう感じたのかは定かではないが、結果的には東宝ヒーローのひとつの完成形かもしれない所まで完成度が高まったといえよう。
#もっとも現在に至るまで、10年以上東宝はヒーローものから離れているが。


せめてどちらかが三作全部に関わっていれば多少は違ってたんじゃないか?
と思わざるを得ない。
一作目が犠牲になるにしても、二作目以降でクオリティアップできた可能性はあるし
それは現に釜氏による二作目・セイザーXで実証できている。


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あとは重箱つつき感溢れる話になるが、三作揃って映像ソフト化を受け持った会社が違うという件も大いに疑問ではある。
正確にはグランセイザー・ジャスティライザーとセイザーXで違う。

何故セイザーXだけマーベラス・エンターテイメントだったのか?
リリース当時からずっと理解しがたい会社変更ではある。
前二作分のセールスが影響でもしていたのか? というオタク的邪推すらしたくなる程度には未だに首をかしげたくなる。
現にTOHO A-PARKにアクセスして、本シリーズのDVDを検索してみれば判るが
セイザーXは劇場版のみ東宝からのリリースとなっている。
本シリーズで一番評価が高いとされる本編ソフトだけマーベラスに委託?したのはどうした判断が働いていたのだろうか。

前二作のDVD自体もその内容についてはすこし文句もある。
特にジャスティライザー。
何故最初からDVDBOXで出したのか?
レンタルこそバラだったが、これはこれでグランセイザーのセルとレンタル両方にあった特典映像がない。
特典映像のほうは、BOX1、2両方に一枚ずつ特別インタビューや当時の放送前記者会見が収められているが
今見返しても某メイン監督の「今まで見たことないような映像を見せる(記者会見時)」と
「今まで観たこと無いとか言いながらどっかで見たようなのばっかで・・・(特別インタビュー)」
といった話のトーンダウンには思わず失笑せざるを得ない。
#記者会見のテンションにアガってたとは思いたいものの。

この特別インタビューなども一因として、ジャスティライザーへの評価に関しては
レビューのまとめでこそ「評価がグっと上がった」などと言ったものの、前後作と並べれば間違いなく谷底の作品、としか言えない程度には個人的評価は悪い。


ジャスティライザーへの文句はこのへんにしておくが
この二作目だけセルをBOXにしてしまったのは悪手だったとしか思えない。
グランセイザーこそ一枚ごとに特典てんこ盛りで好感したのだが。
#キャスト・スタッフインタビューのほかに当時のテレビ東京系列での特集も収録。
ちなみにセイザーXのDVDはどうもレンタル版は特典映像がほぼない。
ノンテロップ版のEDとかそんな程度だったような。
セル版は一度売ってしまったせいで記憶があやふやだが、特典映像はレンタル同様にほぼなかったとおぼしい。


細かいことを突っ込んだ自覚はある。
その上でどうも東宝自体の方針として納得しかねる部分がこの件だ。
レインボーマンやダイヤモンド・アイ、さらにバンキッドまで再・または初ソフト化している今の東宝を思うと
セイザーXはどうにか東宝で再ソフト化しないのか?と思わんでもないからだ。
マーベラス側は再販の意思がなさそうだし。


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今となっては制作に関わったゼネラル・エンタテイメントも無くなり、
アピールポイントとして機能していた川北紘一も既にこの世の人ではない。
そして関わった主要スタッフの幾人かは引退し、または故人となった。
そんな中でプロデューサーの両氏は健在のようで、内心ややほっとしてはいる。

いつか本シリーズに対しての回想なり感想を、ロングインタビューで読みたいものである。