2019年9月28日土曜日

レインボーマン・第一話

第一話 「奇蹟の聖者」


<下町の黒豹と戦火>

第三次印パ戦争。
東パキスタンの独立運動を切欠としたインドの介入により勃発した戦争の最中
日本から訪れた少年・ヤマトタケシ。
戦闘後・斃れたパキスタン兵を眺めていると機関銃の掃射を足元に受け逃げ出す。

彼には目的がある。
ヒマラヤに棲むと言われる仙人・ダイバダッタに修行をつけてもらうため
自らの命の危険を承知で単身インドまで赴いたわけだが。


城東高校レスリング部にかつて所属していたタケシは、必殺の回転落としを使いエースとして君臨していたものの
あまりに負傷者を出したことで除名処分を受ける。
ならばプロレスへ転向しようと道場の門を叩くも、プロレスラーには全く歯が立たない。

自分の能力が通用しないことに焦りを覚えるタケシは、先輩である堀田を訪ね相談。
会話の中で、プロレスで通用するには特殊な鍛錬が必要であると説かれる。
ダイバダッタ。
世界中の格闘家が弟子入りを申し出るもことごとく断られたという逸話も持つ彼に
タケシは弟子入りをしようと目論む。


国境近くまで来たところで尋問に来たインド兵を回転落としで気絶させ、
兵士の服装を剥ぎ取り国境を越えヒマラヤまで行こうとするが、検問に引っかかり山中へ逃げ込む。


<ダイバダッタ>

山中では、戦闘に巻き込まれ負傷した母娘と出会うタケシ。
警戒する彼女らを安心させるために兵士の服を脱ぎ、娘の手当をする最中
かつてタケシの不注意で脚に大怪我を負わせてしまった妹・みゆきのことを思い出す。
片脚が動かないみゆきの治療費捻出のためには資金が要る。
そのためにはプロレスラーになる必要があったタケシ。

旅立ちの前夜、眠るタケシを心の中で気遣う母・たみ。
母をラクにさせたいという願いも、タケシにはあった。


治療が終わったところで、インド軍の兵士に見つかってしまうタケシだが、
弁解をしている最中、空から虹色の光球が。
その中にはダイバダッタが居た。
タケシはついに見つけたダイバダッタに近づこうとしたが、兵士に撃たれ絶命してしまう。

タケシの死体の傍らでダイバダッタは言う。
「東方の国・日本から自分を尋ねてくるというお告げがあった。 自分が150年間待ち続けた男かもしれぬ」
撃たれた箇所に手を掲げ、呪文を唱えると銃弾が飛び出し
さらに傷口まで一気に消える。
「この男がわしに遣わされた者ならば必ず生き返る」
その言葉通り、タケシは蘇った。

目覚めたタケシは死んだはずの自分が生きていることに驚きを隠さない。
ついて来い、とダイバダッタは空高く飛び去る。
山中を駆け、とうとう崖の上にダイバダッタを認めたタケシ。
この崖を上ってくれば弟子にしてやる。
怖気づくタケシであったが、修行はもっと過酷である。この程度できずにどうするのだと叱責され
負けん気を発揮し上りだすタケシ。


岩肌の脆そうな崖を、どうにか5合目を越えたあたりまで行き着く。
ダイバダッタは、もう寿命がないことを意識していた。
彼は、タケシを聖者・レインボーマンに育て上げんと願っていた。
長らくの念願。
タケシを見守るまなざしにも熱が篭るのだが・・・。


【レビュー】

東宝初のテレビヒーローもの・レインボーマンの記念すべき第一話。
その導入に第三次インド・パキスタン戦争が織り込まれており、それまでの、そしてこれからのヒーローものを考えるとかなりな異質さを持っている。
本作は、川内康範自身の思想というか観点がかなり反映されているともいわれがちだが
後々やってくる敵組織の目的のリアリティをさらに引き立てるのが、
第三次印パ戦争という現実の世界情勢をを持ってきた点であり、70年代の川内自身の世界観などがこうした部分からも窺える。


このレインボーマン、そもそも第一話からして上記のような特徴を持っているが
なによりすぐに主人公・ヤマトタケシが変化していない。
第二話終盤にやっと変化できたくらいなので、ヒーローものとしては遅い。
それまでは修行に次ぐ修行の日々が説明されていく。 それが第二話なのだが
ここではさらに、レインボーマン自体の使命や特徴を説明する話となっており
正味の話、二話もかけてじっくり丁寧にヒーロー自体を提示するという作りも独特ではある。


師匠・ダイバダッタは流石の超能力者。
死んだ人間を蘇らせる能力まで持ち合わせており、後のレインボーマンですらここまでの能力は持ち合わせていない。
それに弟子入りする下町の黒豹・ヤマトタケシ。
妹の治療費のためという目的こそある彼なのだが、これからじっくり描かれていくところでも窺えるが
非常に世俗的な凡人というスケッチもなされている。
このあたり、他社ヒーローものの主人公とも一線を画している。
悩みっぽい部分も既にここで提示されてもいる。


奇蹟の聖者から、愛の戦士への道筋を付けられることになる第一話。
これより多くの苦難に満ちた戦いが始まろうとはタケシも思いも寄らなかったろう。


ちなみに冒頭・戦闘後の斃れている兵士たちの情景なのだが
ボロボロになってはためいている旗が、パキスタン軍のものであることに注目されたい。
この戦争の結果、バングラデシュが新たな国として生まれる(独立?)ことになるわけだが
パキスタンの人々の苦難がこのカットからも偲ばれる。
#もっともパキスタンはある時期から東西に分離していたし、歴史的経緯も中々外から単純にいえないくらい複雑ではある。


【特撮の見どころ】

・ダイバダッタ登場
・崖の風景

空から現われる虹の光球。これは単なるアニメーションであろうか。
その後のカット、炎の中に現われるダイバダッタという画についてはちょっと合成を頑張っているように感じられる。
どうもレインボーマンの時点で、東宝のヒーロー作品というのは合成に重きを置く傾向が見えるようだ。

後者の崖の風景、タケシが崖を上っている画と、はるか下方に森林を横切る川が見える。
良くある合成カットであるが、中々違和感がなくて良い。