2020年5月1日金曜日

レインボーマン・第二十二話

第二十二話「一億人を救え!!」
<善悪の彼岸>


前回の続き。
エルバンダが倒されたさまを水晶玉で眺めるイグアナ。
とうとう全員の殺人プロフェッショナルを倒されてしまった彼女は、仇をきっと取ると誓う。

一方のミスターKも、レインボーマンに煮え湯を飲まされ続けてはいるものの
なお戦況は自分たちの側にあると認識。
ゲリラ部隊に日本各地の飢えた人間を集団化させ店でも何でも襲撃させろと命じる。


いくらレインボーマンが超人であっても、日本人一億人の飢えを満たすことなどできるわけがない、ざまあみろ!
そう哄笑するミスターK。
その結果・・・


街中には商店を襲い、食品であればなんでも奪い合い即座に食うという状態が現出。
食べ物を求める飢えた民衆たちが、虚ろな足取りで街中にあった。
その中を、生まれたばかりの赤ん坊を背負い歩く母親。
泣き叫ぶ赤ん坊を見て、米屋のおじさんが見かねて母親を呼び寄せる。
彼女に、自分が残しておいた食品を与えたのだが・・・


母親を外に出した米屋が、その状況を遠くでながめていた男に肩を掴まれる。
やがて集団化し、家探しされてしまう。
先ほどの母親も他の民衆によって、先ほど貰った食品を集団で奪われつつあった。
それを見て駆け付けたタケシが力づくで制止させる。


こんなことになったのも死ね死ね団という組織のせいなんだ、日本人同士争うことはやめてくれと懇願するも
食べ物のない状況では、誰もが食うことにしか目がいかない。
今ここで食い物を出してくれればあんたの言うことは信じてやると、民衆の一人。
タケシの裏に居た、食品を奪った男が逃げていくのを見て民衆たちが追いかけ奪おうとする。


そこへ警察が駆け付け暴れていた人間を取り押さえるのだが、
どうせ捕まえるなら女房も子供も一緒に連れてきてくれと男が叫ぶ。
刑務所のメシでも食えるだけマシ。
そこまで人々の心は荒廃しきっていた。
タケシはますます苦心する。  こうなれば・・・




<人間性への信頼>


大臣の部屋では、贋札回収に関する打ち合わせが行われている。
まずは貨幣の信頼性を回復させねばならない。
続いて暴徒化した民衆の対処をどうするか、委員から話が出たその時レインボーマンが現れる。


レインボーマンは言う。
子供から老人まで食べ物がない為に、すさんだ毎日を過ごしている。
この状況を打開するためには、国が無償で食料を配給するべきだと。


ますます暴徒をはびこらせるだけじゃないのかと反問する委員に対し、
みんなは暴徒じゃない、人間である。
食べるものがないから非常手段に訴えているだけであり、本当はだれもが一刻も早く人間らしい心を取り戻したいと考えているのだ、と。
一家心中のような悲劇まで起こっている現状がこれ以上続かぬよう、お願いする。


そう告げて立ち去るレインボーマンであった。
大臣は瞼を瞑り、深慮する。




中道工務店では、辰雄が社員を説教していた。
ハラが減ってて自分でも何してんだかわかんねえんです、と言い訳するのだが
困ってるならなんで俺に一言相談してくれねえんだと呆れる辰雄。
その裏では、おかみさんが米びつから残りの米を全て出し、辰雄に渡す。


辰雄は社員に持たせるのだが、困惑する彼に対しておかみさんは奥さんと生まれてきた子供の為に、と言って持っていかせる。
涙ながらに米をもってかえる彼を見送り、 今夜もお茶で我慢するさと辰雄はおかみさんに言ったのだった。




<イグアナの戦い>


夜中。
イグアナは木彫りの人形に自分の魂を乗り移らせた。
そうして、タケシの元へ姿を現し戦いに移る。 
魂がないイグアナに対して、レインボーマンに変化し遠当ての術を浴びせようとするのだが全く通じない。
杖を投げつけ催眠暗示をかけたイグアナ。


レインボーマンを寝かせ付け心臓をひきずりだそうとしたところで
イグアナの部屋にミスターKが現れる。 怒気を隠さずテーブルをたたいて怒鳴るのだが、
そのテーブルには先ほどの人形があったのだ。   衝撃で落ちる人形。


額が割れると、イグアナの額も割れてしまいダメージを負ってしまった。
瞬時に部屋に戻ったイグアナは、Kに対して恨みごとをつぶやく。
全く状況が判っていなかったKだが、こちらにも作戦があると言う。
その作戦とは、アフリカ支部で捕えていたヤマト一郎を日本に輸送するもの。


すなわちヤマトタケシに対する切り札を切ろうというのだ。
その護衛として二人の女殺人プロフェッショナルをつけるようにも指示。
いよいよ死ね死ね団のレインボーマン対策も大詰めを迎えつつあった。




間一髪助かったタケシが、家に戻ろうとしたのだがうっかり戻ればまた母と妹がトラブルに巻き込まれる。
そう思い、外から家の様子を眺めるだけで立ち去った。
ダッシュ5へ変化し、彼もまた死ね死ね団の秘密基地の探索を続行した。


そうして、幾日過ぎたのだろうか。
地上では暴動すら起こせないほど衰弱した人々が倒れ、死んでいってしまう。
中道工務店でも、辰雄たちがひな祭りの準備を終えつつも、全く動けない。
こんなつらい思いをするくらいならいっそ死んでしまおうか、そうおかみさんがつぶやく。
そこへテレビニュース。


そのニュースは辰雄たちを、否日本国中を喜ばせるものであった。
政府はしばらくの間食料の無償配給を実施する旨を伝えたニュース。
この決断をするに至ったレインボーマンに感謝すると同時に、日本国民全員が
この苦しみに耐え、手を取り合って困難を乗り越えるよう協力を願いたい、と大臣。


人々が歓喜の声を上げ街中にあふれる。
タケシはその様を見て思った。 あくまで人間を信じた結果を、相互信頼の回復を見た。
その結果を重く受け止めたタケシ。
しかしこの悲劇を繰り返してはならない。 その為にも死ね死ね団を倒さねばならない。
彼らの醜い欲望を叩き潰さねばならない、と。




<信頼の回復>


ニュースを見終えたミスターK。
恨み骨髄に達したKはタケシの顔写真にナイフを突きつける。
人々の信じあいなどとたわけたことを! わしはあくまで自身の信念と、その勝利とを信じると言い放つ。


そこへアフリカ支部から、女プロフェッショナルのマリンダとノーマが現れる。
続いて輸送されてきた一人の男、ヤマト一郎。
日本はもうすぐ私の手の内に入るぞと言うミスターKに、ミスター狂人とまで言い放つ一郎。
しかし厄介な敵がいま現れているともKが言えば、それはそうだろう。私が死んでも第二第三の私が現れるさと言う一郎に対し
今死ね死ね団の敵がいる、それはレインボーマンことヤマトタケシ、お前の息子だと吐き捨てるK.


自分の思い通り、立派に成長した息子を思い大笑する一郎なのだが、
ミスターKはそのタケシを待ち伏せ殺害しようともくろんでいた。
モニターを見るよう一郎に促すK.


タケシが路地を歩いていると、その前に一郎そっくりの男が現れる。
一瞬足が止まり近づこうとすると死ね死ね団員が現れサーベルで突きかかる。
そして変装を解いた団員に対し怒りを爆発・レインボーマンに変化し団員を倒していく。
一人の団員を捕まえ秘密基地の場所を問い詰めるも彼は答えず。
しかし代わりに一郎の居場所を教えた。


剣岳の別荘。
即座に飛んでいったレインボーマンは変化を解き、別荘の前に降り立つ。
きっとワナであろう、しかし父との再会を願うタケシは既に父を乞うる一人の青年となっていた。


やがて一郎の姿を見止めたタケシ。
駆け寄るタケシ。




【レビュー】


M作戦はこの回をもって実質終了、つまりは本編の通りで
飢えに喘ぐ国民救済のための食糧無償配給の実施がこの回で明示されたからだ。
ようするに死ね死ね団は、日本壊滅にリーチをかけながらも結局逆転された格好となった。


自分の以前の更新でも何度も書いているようにこの回は本作を語るうえで外せないものである。
本作、ひいてはヒーローもの全体を考えてもかなり特殊な作品と言える。
M作戦によるハイパーインフレの対策は、贋札回収という地道な作業で行われているのだが
当然これはインフレーションの解消には即座に役に立たない。
それどころか物価自体が下がらず、流通も当然ながらコストがかかるためストップしてしまう。


やがて飢えた民衆は、略奪に走りさながら餓鬼道が現出したかのようである。
Aパート序盤の、赤ん坊を抱えた母親が苦しめられる一方、略奪に加担している老婆がいるという対比が非常なリアリティを醸し出す。
日を追うにつれ暴動すら起こせなくなり、野垂れ死にすらする人々まで現れる。


人々の相互信頼は消滅し、日本自体が滅亡の瀬戸際に立たされたその時
国が無償配給を実施することで状況が好転していこうとする描写は、やや単純でもあるのだが
それまでの陰鬱な展開を考えたらこれでも十分効果は高い。


根源である敵およびその作戦さえ倒せば全て丸く収まる形を取り勝ちな他社作品と違い、その作戦の後遺症に苦しめられる人々と
ヒーローがそこまでは全く手が出せないという状態、であれば
政治の方でなんとかしてもらう他ないという展開は、少なくとも日本の創作物(というかヒーローもの)ではその類例を探す方が難しい。


これは、川内康範自身の思想もあるのだろう。
個人的には「ヒーローが出来る事はヒーローが、人々がやれることは人々が行う」という
割と当たり前な発想に下支えされているとみている。








その結果、ポリティカルな作風として結実したのであろう。


しかし当然ながらこの回だけを見てもしようがない。
ぜひともM作戦の発端である第十四話から今回までを見ていただきたい。




そして、とうとう登場する父・ヤマト一郎。
タケシに対する切り札としてミスターKの切ってきた最終手段でもある彼の存在が、
このM作戦編ラスト4話分に大きくかかわっていくこととなる。
ストーリーの大半が終わり、あとはドラマのうねりを残すのみとなるM作戦編。
殺人プロフェッショナルを全て失ったイグアナと、
M作戦をひっくり返されてしまったミスターKと、
父・一郎との再会を果たさんとするタケシ。


果たして結末やいかに。








【特撮の見どころ】


・なし


今回は話が詰まりすぎているあまり、戦闘を含めあまり印象に残らない。
唯一難点があるとすれば、特撮方面を期待できないというくらいか。