2021年12月9日木曜日

【7】コナミにおけるセット売りのなぞ

 最近、某匿名掲示板でアムドライバーの玩具について話をしていたのだが

その場で「なんで単品をもう出した状態でセット売りするんだ?」という疑問を投げた所

「そりゃあクリスマス商戦が近いし、既に出てる奴のセット版出す方が合理的だろう」

というお答えが返って来た。

#このセット売りは、今でも語り草になっておる「トイザらス限定・スペシャルバイザーセットネオクロスバイザーVer.」を指す。



で、当然本シリーズにおけるセット売りの疑問も出た、と同時に

本書で触れられていた「セイザーXはコナミやテレ東に無理を言って9ヶ月にしてもらった」

という話を思い出す。

何故か。

まずその前に、前作ジャスティライザー、すなわちアムドライバーと同期であるこの作品におけるセット売りから触れておきたい。


ジャスティライザーでは、幻星合神セットとしてエンオウ・コウキとコアロボでもあるライゼロスをセットで売り出している。

発売タイミングとしては2004年の11月だったとおぼしい。

で、同期の…と同時に半年ほど先行していたアムドライバーについても、先に触れたトイザらス限定版ネオクロスセットが近い時期に出ていた。

この二つにはそれぞれに問題を抱えている。 クリスマス商戦を目前に控えていて何故?と思われるだろうが、割と誰もが納得できる問題でもある。


まずアムドライバー。

トイザらス限定品とはいえ、ネオクロスバイザーと、既発のジェナス・ラグナをリカラーしたネオジャケット、更にリカラーした拡張武器セットまで付けたこの一品。

ここでのウリは「トイザらス限定品であること」と「リカラーしたジャケット二人と装備が付いている」ということになるのだろう。

しかし、実はユーザーからしたらイマイチ食指が動かないシロモノでもあった。

定価で考えると、実は限定セットの方がそれぞれを個別で買うより安いとされているのだが、

しかしネオクロスバイザーの方は特にリカラーもリデザインもされていない上に、

トイザらス限定品から一週間ほど経って単品のネオクロスバイザーが発売されるタイミングでもあり、子供のユーザーはさておき

大人の玩具者にとってはだいぶ悩ましいリリースタイミングだった。

もっと言えば追いかけている大人の場合、既にジェナス・ラグナのネオジャケットも手に入れているわけで…。


要するに、出したタイミングが極度に悪かった。

そしてこの限定セット、ネオクロスバイザー単品と然程離れていない時期に発売されている。

#限定セットが11/16、ネオクロスバイザー単品が11/25。 玩具者であれば当然前情報は各種ホビー誌や匿名掲示板などで抑えている。

2004年夏に出ていて、当時品薄だったとされるジェナス・ラグナ両人のジャケットをセットかつリカラー版で買おう、という需要を見越すとしても、である。

それならジェナスとラグナの増産をすればいいだけの話では?とも普通は思うところだろう。

もっともジェナスに関しては、同年12月上旬にこれまた弾数の少なさで知られるZEAMジャケットが出てしまっているのだが…。

その上このネオクロスバイザー、実はほとんど近い時期…日数が僅かに離れてる程度のタイミングで、ジェナス用ネオボードバイザー「ソードダンサー」が出ており、

更に12月上旬にはラグナ用同「ガンシンガー」まで出ている状況でもある。


せめてネオクロスバイザー単品をアニメ本編初登場から間を置かずに出せてたら、とは思うのだが…。 実際は一か月近く遅れてのリリースとなっている。

限定セットも12月中旬~翌年1月上旬にずらせていれば「まあ手に入れられなかった人にはいいんじゃないの」くらいには見て貰えたはずなのでは。

#1月であればお年玉を見込んで買う可能性も出るわけで。

そもそもアムドライバーの玩具展開自体が、上にあげたようにかなりアンバランスであったことが不幸ではあった。

しかも予定されていたにも関わらず結局リリース見送りになった物も幾つか存在している始末でもある。

これに関してはネット上で、それこそ本シリーズ以上に様々な噂が飛び交っているのが一つのヒントになるのだろうが。


そして同期のジャスティライザー。

先に触れた幻星合神セットは、既に本編で登場したケンライザーと、当時登場直前だったジュウライザーに合神出来るもの。

更にこの後11月下旬にはライト&サウンドケンライザーにジュウライザーまで出ている。

この場合、アムドライバーと違って「何で合神セットと、音と光のギミックくらいしかウリのない幻星神を近い時期に出す?」

という問題が付いて回る。

もっと言えば合神セットの方に、音・光ギミックをなんとか仕込めなかったのか?という疑問すら出る。

#実際当時も匿名掲示板などではライト&サウンドはスルー、という意見が目立った。大した可動しないし。

また、ジャスティライザーは3人いてそれぞれに専用の幻星神が居るのだが

幻星合神セットではグレンとガントの幻星神にしか変形合神出来ない。

ではカゲリの分は?と言うと、2005年1月に単独で星神獣ランガを発売。 これに先の幻星合神セットのライゼロスを組み合わせて、幻星神ニンライザーへ合神可能になる。


本編初登場とほぼギャップのない発売だったのは良いのだが、三大幻星神を玩具でそろえるのにやたらと手間を感じるフシもある。

「あのデカいセットを買わないといかんのか…」というのが最大のネックと言えた。

特撮ヒーロー物では珍しい、というかほぼ初と言える「レギュラーの女性変身ヒーローが操る専用ロボット」というトピックのあるニンライザーなのだが。

#案外これに気づかない特撮ヒーローオタクが多いのがこのシリーズの扱われ方を暗示してはいるのだが…。 

また、ハデス編最後に現れた星神獣リュウトと幻星神ジャスティカイザーに関しても同様の問題を抱えている。 その上リュウトの玩具もまた大きな箱で…。

なお本作終盤にて、「スペアで二体のライゼロスがあった」上で三大幻星神が本編でそろい踏みしている。

これはまあ意外性と言う意味では悪く無いのだが、玩具で再現しようとすると

「あのデカいセットを3つも買わないといかんのか…」という問題がこれまた現れる。

しかも終盤、個人経営の玩具屋でもない限り大幅値引きで幻星合神セットもランガも捌けているような状態なわけで…。

更に、三体再現しようとすればエンオウとコウキが2つずつ余るという致命的な欠陥すらある。

#本編でああなった理由については不明。 川北側でやらかしたのか、脚本段階でああだったのか…。

もっとも、先のライト&サウンド幻星神を買えばある程度は気分だけでも再現出来ないでもないとはいえ、

やっぱり「合神して遊べる=本編通りに遊べる」というアピールポイントが無いのは、いささか心許ない。


そしてアムドライバーと違いなりきりグッズも出るのだが、インローダーが色違いで3人分出ているのはよく知られている通り。

3人別々で売りたい意図は、スーパー戦隊とは違うことを言外に知らせたいのだろうが

#実際全員で放つ必殺技・武器の類は本シリーズを通して存在していない。

しかし平成ライダーほどはっきり個別化出来てない(ライダー側も個別化出来てるか?と言われるとドラマ面でなんとかそうしてるとしか言えないが)

本シリーズの場合、特にジャスティライザーの場合はうまく行けたとは言えない。

なりきり玩具でもグレンソードのように評価の高いものはあるといえばあるのだが…。

そして。

トイザらス限定でライザーグレン・ガント各人の「完全装着セット」が販売されている。

これも2004年11月頃だった記憶があるのだが、インローダーにお面、ソフビ、武器という内容。

これまた何故単体で出ていた物をセット売りしたのか?という疑問が出て来る。


このジャスティライザーの場合、問題点としては「年末商戦近くにも関わらず番組の人気が十分出てない状態でそれに挑まなくてはならない」

というものがある。

同期のアムドライバーに関しては、既に番組終盤に差し掛かっている上にある程度認知もされている状態で挑んだものの、当時から噂されていたが

製造数が絞られているようで、売り切りという意味では問題なかったようではある。

ジャスティライザーに関しては先の幻星合神セット自体が案外高いのが足を引っ張ってはいた。 確か税込8000円くらいなはず。

これが全部バラ売りなら、と思わないでもないのだがそうできない事情は年末商戦を睨んでのことか。

#実際大人の玩具者からは「バラなら良かったのに…」という意見も多かった。


-------------------------------------------------------------------------------


で、セイザーXの玩具展開。

なんとあろうことか、先述のアムドライバーとジャスティライザー同様のポカをやってのけている。


2005年12月に「流星神・完全合神セット」を、更に「トイザらス限定・ライオセイザー完全装着セット」を売り出している。

で、やはり両者ともに既に単品売りされている物をまとめてお出ししている。

#前者は、コアブレイバーのグレー版が一体だけ付くという差異がある。 流星神3体そろい踏みは当時の本編展開から考えて無理ということになる。

#後者はトイザらス限定でベルトを付属させたもの。 

当然セットなのでお値段もかなりのものだった記憶がある。各一万近かったような…。

そして、同年12月にはまだ姿の見えないシャークセイザー用装着セットや武器も出ている。

なんというか、セイザーXも妙なアンバランスさを引きずってしまっていた。


もっともセイザーXの場合、玩具で単品売りの流星神を3体買っていればその色に対応したコアブレイバーも付いていて、

これは本編中盤以降の、コアブレイバーが3体になる展開とマッチする結果ともなりこれは悪く無い。

この事例は、本シリーズでは珍しく玩具に対して本編展開が噛み合った物であろう。


だがジャスティライザー同様、まだ作品が立ち上がって間もない頃にここまで強気に出られるコナミの売り方にはいささか疑問が残る。

そして何よりセット売りの場合、箱がやたらと大きくなる問題もあり、このあたりが

特に当時の東映ヒーローオタクから「売り場を圧迫するコナミの嫌がらせ」などと揶揄られる一因になってはいた。

そのように言われる程、幻星合神セットは当時を知る者にとっては苦笑いするほかない箱サイズであった。

#もっともグランセイザーのダイセイザーも、中々大きい箱だった。


このコナミの、奇妙なセット売りへの信頼を見ていると正直な所

仮に4作目が実現していたとしてもやっぱり売れなかった可能性は高いのでは…と思わされる。

最初に触れたように、「既に単品で出てるものをセットで売られても…」という疑問はまとわりつくし、

幻星合神セットのように最初からセット売りのみ、とすると今度は「こっちこそバラで欲しいんだけど…」と、これまたいかんともしがたい。

つまり、コナミはユーザーの需要を全く読み切れていない。

これは本シリーズのみならず、アムドライバーでも見受けられる悪癖ではある。

#おとぎ銃士赤ずきんはそもそもがイベント用のフィギュアだったものを無理矢理女児向けにしたのがアンバランスさを醸し出していて、また別方向。


こうしたアンバランスさを色々反省して、コアな方向に振り切ったのが武装神姫であることが皮肉といえば皮肉なのだが。

今にして思えば武装神姫もセット売りと言えばセット売り、と言えるか。素体とアーマーセットという体で、素体のバラ売りにアーマーのバラ売り(※バラ売りアーマーは新規デザインの物)もやってるし。


-------------------------------------------------------------------------------


以上を踏まえ、4作目が放送されたという仮定での玩具販売のシミュレートをしてみよう。

本書では、シリーズ立ち上げを夏にずらしたいという意図が語られており、そうなると7月スタートという事になる。

大体、9月までに4作目ヒーロー及びロボの玩具が、1クール分出そろったとしよう。

2クール目に同作新ヒーローや新ロボなどが出てきたとする。 この時当然2クール目は10~12月である。

コナミがやりそうなのは、間違いなく「2クール目の新ヒーローのなりきり玩具セット売り、新ロボの何かしらの形のセット売り(初期ロボとの組み合わせ?)」

というものを、年末に向けて出すであろうという事。 やはり11月下旬だろうか。

で、こうなると正直な所、ジャスティライザーとセイザーXに類似の失敗を繰り返すだけではないのだろうか。

デカいし、高いしでなかなか売れず、致し方なく大幅値引きしてどうにか捌く、という光景が繰り返されるだけではないのか、と。

アムドライバーの時の様に、本編に出たのに玩具が出るタイミングが遅れる、またはキャンセルということは無いのかもしれないが。

#実際の玩具発売においてネオクロスバイザーとソードダンサー・ガンシンガーの間があまり開いてないという問題はある。

#そして本編でもZEAMのイメージが強く、やっぱりアンバランス。


本編しか見ていないor見たことは無い特撮ヒーローオタクが無邪気に「超星神シリーズ復活を」とバカな妄想をしていても

自分は全くシラケている理由の一つが、こうしたコナミの玩具展開の拙さにある。

スポンサーなのに製作の手綱も締めきれず、自分の領域の商品展開も滅茶苦茶っていうのはどうも、

その部分に関しては全く擁護できず、むしろ指弾したいくらいである。

ただ何度も言うが、本シリーズのスポンサーに就いてくれた点に関しては感謝しているのもこれまた事実で、この相反する感情が実に辛い。


どうして本シリーズはかくもアンバランスさにまみれているのだろう。