80年代後半。
幼少のみぎり、コロコロコミックとコミックボンボンのどちらを読むかは、自分と同世代の人間にはちょっとだけ悩ましい。
そしてこの両者の戦いは、当事者たちはどう考えてたか知らないが、観ていた側からすると
「大人たちが全力で子供を食い物にしていた、幸せな頃」
ではなかったか、と思う。
ラジコン、ビデオゲーム、おまけシール、プラモデル、各種玩具、スポーツにバラエティ番組、その他当時の子供にウケていた諸々。
今思い返せばコロコロもボンボンも、全力でこれらをもって殴り合っていたと言える。
それはテレビアニメにおいても同様であった。
ガンダムシリーズやトランスフォーマーシリーズを擁していたボンボンだが、しかし他漫画のアニメ化という部分では実はコロコロの後塵を拝していた所は否めなかった。
コロコロはドラえもん以外にも藤子不二夫作品のアニメ化・リバイバルを積極的に進めていた頃でもあり、
本誌オリジナル作品・ホビー作品のアニメ化も逐一行っていた。
全部が全部コロコロが関わっていたわけでもないが、藤子不二雄作品=コロコロ、という図式が成立していた子供は割と多かったと思う。
一方ボンボンはこの藤子不二雄に対抗するかのように赤塚不二夫・水木しげるの両巨頭を投入。
ここに先述のガンダム・トランスフォーマーが加わっており、80年代末期には徐々にオリジナル作品のアニメ化も進めていくボンボン。
#両誌にも一応関わってたダイナミックプロが、この頃影がいまいち薄いのが面白い。
80年代はアニメ作品のリバイバルが目立つ頃でもあったのだが、両誌のこうした動きがそれを加速させていた節があったのは事実だろう。
若手のみならずベテランまで投入してきている所に、当時のコロコロ・ボンボンの本気でやり合ってる状況がうかがい知れようか。
この80年代末期…88~90年くらいの時期はテレビも巻き込んで両者がバチバチやり合ってた頃だったと思う。
そしてこの頃、実はコロコロはビデオゲームではボンボンに後れを取っていた。
ハドソンとの絡みでPCエンジンを猛プッシュしていた時期があったのだが、この時圧倒的支持を受けていたファミコンの記事が弱くなっていたのである。
ボンボンはロックマンやスーパーマリオを取り上げていた上コミカライズも連載していた事を思い返すと、いかにコロコロがビデオゲームにおいてちょっと弱みを見せたかが判ろうものである。
#SFC登場時に、わんぱっくコミックから移籍させたスーパーマリオのコミカライズは、コロコロなりの補強案だと考えると興味深い。
#気が付けば現在のコロコロにおける長寿連載の一角でもある。
タミヤのラジコンやミニ四駆、ビックリマンで一気に台頭したコロコロだが、ロボット物やビデオゲームに関しては少し弱さを露呈していたとは言える。
ワタルや(メカ物扱いされるとはいえ)ゾイドを擁していたものの、ガンダムシリーズの思いのほかの層の厚さ…SDガンダム絡みの商品展開にはちょっと分が悪かった。
ガンプラはもとよりガシャポンにカードダス、元祖SDガンダム、BB戦士とそれらで展開された武者や騎士といったオリジナル作品は
流石にコロコロ派の自分であっても手を出さない訳に行かなかったんである。
ビデオゲームについては「ゲームセンターあらし」が黎明期のヒット作なんだがなあ…。
何故かコンシューマに関しては、ちょっと巧く行かなかったのが80年代なのだろうか。
#ドラクエは80年代に関してはジャンプが独占的に扱ってたし、ファイナルファンタジーは何処も手を付けてなかったはず。
なおここでいう「コロコロがビデオゲームに弱かった」というのは、あくまでオリジナルタイトルの話であって
コロコロ作品のゲーム化は全くの別であることを断っておく。
もっと言えばハドソンとの蜜月期にイベントまで行っていたキャラバンシューティング3作
(スターフォース・スターソルジャー・ヘクター'87)があったものの
それ以外が著しく弱かった、とも言えた。
ホビー個々の話は、詳述すると異様に長くなるので著名なもののみかいつまむと。
・ガンプラ人気に対抗するかのようにコロコロはマクロス他を取り上げていたり、ゾイドも扱っていた。
・ビックリマンは当初ボンボンが取り上げたが、直後にコロコロで取り上げるようになってから爆発的なブームを巻き起こした。
そのまま両誌で取り上げると思いきや、ガムラツイストへシフトするボンボン。
・ラジコンは、両誌にタミヤが関わっていたものの実際ヒットしたのはコロコロのラジコンボーイ。
・ミニ四駆は、これまた両誌にタミヤが関わっているのだが、ボンボンのみバンダイのパチ四駆(ハイパーレーサー4WD)も併載していた。 これを当時のタミヤはどう思っていたのか?
#当然ながらミニ四駆=コロコロの図式が不動なのは言うまでもない。
更にタレント・スポーツ選手といった別の要素もここに入ってくるのだが
90年代に足突っ込むものもちょいちょいあるので割愛する。
オリジナル漫画では、コロコロの「おぼっちゃまくん」が圧倒的な人気をさらってたのはあるがこの頃ボンボンは対抗馬を出せたのかどうか。
一応Oh!myコンブがそれにあたるのだろうか。
#コロコロ派なもので、横目でボンボン見てるだけだとハッキリした看板が判りにくいんである。 ずっとガンダムが看板だった印象が強くて…。
で、雑誌の看板という部分で言えば常に雑誌のボトムを支え続けていたドラえもんのあるコロコロと、
終始ガンダムが出ずっぱりのボンボンだと、どうにもその誌面自体も大きな差異があるような感じ。
「いいやドラえもん以外でも当てて見せる」という意思が前面に出ているコロコロと
「ガンダムあるから他はマイペースでいい」という姿勢の見えるボンボン。
これはどちらが良い悪い、ではなく単なるスタンスの違いでしかない。
現にボンボン派はそういう誌面を愛していたのも事実だろう。 オリジナル漫画、特にストーリー物の評価が高いのは仄聞している。
ガンダム一強だったからこそそのやり方を通せたとは言える。
#この姿勢自体、実は後述のガンガンも同様だったりする。
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さてこうして見てみると、両者モロに競合する製品や作品をぶつけてきているのがよく判るだろう。
リバイバルアニメのように、パイを食い合うという意味の戦いもある。
これが当時はもんのすごい戦いのように見えたのである。 いや本当に。
ガキの目からすれば、先述したように大人たちが子供に向かってムキになって戦いを挑んでいたと感じられたのだ。
この両誌さえあれば、幼少期の心はなんとなく満たされていた、と言ってもいい。
そして90年にはエニックスのガンガンが登場してくるのである。
世はまさに三国時代! を予感させるのには十分過ぎるものがあった。当時のCMなんかモロに小学生狙ってるのが丸判りだったし。
何せそれまでジャンプが独占的に扱ってたドラクエを前面に押し出した漫画誌をエニックス自らお出ししてきたわけで。
#もっともそのドラクエ以外何もなかったのだが、最初期のガンガンは90年代中盤以降と違い、ボンボン寄りの誌面だった。
#10代後半の少女とついでに少年を狙い撃つような誌面になって以降のガンガンしか知らない読者が多いとは思うが、念のため記す。
#まあ雑に言うならガンガンは少年キャプテンとか少年エースと近しい路線を歩んだ、ということだ。 ドラクエ持ってるのに。
80年代のうちにやり合って疲弊しまくっていたコロコロ・ボンボンに割って入ろうとしていたのは戦略としては悪く無かったのだが、
ドラクエとその関連商品くらいしか目玉が無かったガンガンの場合、早々に方向転換する必要が出ていたのは紛れもない事実で…。
何せ90年代中盤からはほぼコロコロ一強の時代が到来したのだから。
さておき。
コロコロとボンボン以外にも小学生向けの漫画誌というのはあるにはあったのだがどれもパっとしないまま消えている。
それだけこの二誌が強力なホビーや漫画を持っていたという証左ではある。
そもそも出版社としても小学館と講談社という判りやすいライバル関係もある。
ネット上では一時期ボロクソに言われまくっていたコロコロに、それでも肩入れし続けている理由は
「まるで宝箱がそこにあるかのような華やかさ」を持っていたのがコロコロしかなかったからである。
今は知らない。
だが80年代のコロコロは、そんな喩えをしてしまいたくなるほどに煌びやかだったし、幼少期の自分の色々な飢えを満たしてくれたのだ。
それは、ドラえもん以外でも看板を生み出そうとする気風がそうさせたのだろう。
今もその姿勢は変わらないようで、かつての読者としては安心しているのだ。
一時はその宝箱の中の何か一つに惹かれていたこともあった。
だが今は宝箱そのものが愛おしい。
そしてあの騒々しい80年代そのものすら。
当時あれだけ楽しませてくれた人々には感謝以外ない。
そしてあの頃は、まんま本更新タイトルで言い表せるほどに賑やかだった。
やっぱり、対立してるもの同士がムキになって戦う、その状況にはは訳もなく惹かれるのだ。
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今から10年くらい前のコロコロで、突如としてRX-78のほうのガンダムが
コロコロ特有の赤ページラストの予告で出てきたことに度肝を抜かされた往時の読者は多かった。
今でも検索すればその時の画像がすぐ出て来るほどに。
無論自分もそうだ。
#しかも「コロコロ×ガンダム」表記にてガンダムの名前のほうがデカい。
#いかに当時の編集部が「判ってて」やってたかがよくわかろうというもの。 やるな、コロコロ!
ま、当時のコロコロは既にロボットホビーが間に合ってたのでかなり苦しかったが。
これはガンダムがどうこうというより、単にタイミングの問題がでかいっちゃでかい。
00の後のAGEは荷が重すぎたとも言えたし、ちょっと序盤がダルかったというのもあるのだが…。
しかし、このコロコロにガンダムが来たという事実は、ある世代の思い入れを刺激するのに十分すぎる大事件だったし、もうちょっと早くやってくれていれば…という無念ももちろんある。
きっとこれが、あの80年代にコロコロとボンボンがあった少年時代の人間達への、最後のプレゼントだったんじゃないのかな、とか思いつつ。