超星神シリーズでよく知られている噂として
「コナミが本シリーズの為に3年、枠を押さえた」
というものがあり、自分も当時のその噂を本当の話として捉えて、拙blogの各記事にも書いている。
ではその噂自体は本当のものだろうか、軽く考察してみたい。
というのも、コンプリーションを読むと東宝の映像事業部長はグランセイザー製作発表会当時
「最低3年は続けたい」
という発言を残している旨書かれている。
それにコナミの専務曰く「5年でも10年でも続けて欲しい」とハッパをかけているとも。
#これ自体は単なるリップサービスだとは思うし、コンプリーションで唯一と言っていいくらいのコナミ側発言の記録でもある。
これを見ると、元々コナミは3年枠を押さえていたわけでもない、ようにも読める。
しかし川北紘一「特撮魂」では
「(超星神が)1年だったら考えたが、3年やると聞いたから仕事のオファーを受けた」
としており、上の赤太字とやや齟齬が出ている。
#なお「特撮魂」はコンプリーションより10年以上前に初版発売されていることを念のため記す。
#特撮魂→ 2010年発売 / コンプリーション→ 2021年発売
以下はコンプリーションで書かれた、当時の製作状況を本更新タイトルに沿った部分のみ摘記する。
2002年夏 ゼネラルエンタテイメントによるオファーで、コナミがスポンサー就任を快諾
#先に東宝に話を持ち込んだところ「スポンサーが居ればやる」と言われたのを受けて
2002年9月(参考) ゼネラルエンタテイメントによる想定スタッフのメモ
#ただし実際のスタッフ招聘は東宝の裁量に委ねられた。
2002年11月 11月8日付資料(名称はアストライザー)にて
村石本編監督、大川シリーズ構成と共に川北特技監督の名前あり
2003年9月 9月3日に制作発表会
先述の東宝・映像事業部長とコナミ・専務のやり取りがここでなされた
2003年10月 超星神グランセイザー放送開始
参考に挙げた’02年9月と同年11月の間でメインスタッフ招聘が行われたように読めるのだが、
時期こそ触れていなかったものの、川北の「特撮魂」での証言を考えてみるとその間で川北にもオファーが来たであろうことは間違いない。
その上で、青太字で書いた内容を以て特技監督に就任したという流れである。
ここまでの流れから推察すれば、コナミがスポンサーに就任してから川北が特技監督就任を承諾した数か月の間で、
コナミが本シリーズを3年は続ける意思を持っており、そのために3年枠を押さえたと見ても間違いではなかろう。
実際、大人向けホビー誌(フィギュア王かハイパーホビーかは失念)及び匿名掲示板でこの
「コナミが3年枠を押さえた」話はグランセイザー放送終了近く、
つまりジャスティライザー発表あたりで広まっていた。
こうして証言から考察してみると、やっぱり三年計画自体は間違いではないと思われる。
であれば、何故発表会当時に映像事業部長は「最低3年」などと言ったのだろうか。
思いつく話を箇条書きしてみると
1:コナミ側が3年やると言ったから、3年とそのまま言っただけ
2:(1に関連するが)やや弱気ながら東宝側もシリーズ化を狙っていた故の発言
3:そもそも本当にコナミが3年、本シリーズの為に押さえ続けてくれるのか読めなかった
と、こうして挙げてみると、恐らく部長的には2寄りで3の解釈が強かったのではあるまいか。
そして2003年9月の製作発表会での「最低3年」こそが、最古の公式発表と言っても差支えはないように思われる。
がしかし、東宝側からしたら「果たして本当に特撮ヒーローシリーズの為に3年枠を確保し続けてくれるのだろうか?」
という疑問があったとしても謎ではあるまい。
一応川北の証言では「3年やる」とされてはいる。
のだが、1年目で大した結果が残せ無さそうなら2年目からは全く別の作品企画・・・それこそアニメになった可能性だって十分あり得ただろう。
例えば、結果的にはジャスティライザーと並行して製作されたアムドライバーが土曜9時のアニメになっていたとしても不思議じゃない。
このへん、コナミ側の証言が非常に欠乏しているせいで実態がまるで見えなくなっている。
#もっとも後述するように、実際はシリーズ作品の企画がかなり早めに始まっていたので、このへんは杞憂だったとも言えるが…。
#商売である以上、どんでん返しで突如のオクラ入りという危険性だって十分ありえる。
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コナミ側証言が些少なせいで実態が見えないものとしてはもう一つ
「実際の本シリーズの売り上げ」
がある。
例えばこのへん、ジャスティライザー開始前の大人向けホビー誌での情報として
「グランセイザーは売上目標未達だが、手ごたえは感じている」
という、コナミ側スタッフ証言が残っていた。
そもそもこの売り上げ目標がどの程度だったのかが、当時から不明であったし、実際の数字も不明である。
この頃からバンダイはシリーズごとの売上の数値化をしていたことを思うとまことに不思議ではある。
#もっとも旧タカラ・旧トミーもこの頃は数値化していなかったとおぼしい為、今の様にどこもかしこも売上を提示することはなかった時代背景もある。
時が移り、様々なうわさが飛び交う中で今主流とされる説は
「グランセイザーは上々の売上で、なおかつシリーズ化もされた為バンダイと東映がそれに危機感を抱いたのでその対抗としてスーパーヒーロータイムの括りを始めた」
という説がまことしやかに囁かれるが、記憶の限りではグランセイザー放送直後にスーパーヒーロータイムを始めていた。
つまり、爆竜戦隊アバレンジャーと仮面ライダーファイズの途中からということになる。
#このあたり、時間が経過し過ぎたことによって特撮ヒーローオタク側も認識がアヤフヤ、かつ本シリーズの扱いがぞんざいであることがうかがえる。
しかし東映もバンダイも過剰に意識しすぎの感があるのは面白い。
子供向け玩具市場ということと、特撮ヒーロー界隈というのは割とパイが少ないのを思えばまあ仕方ないのか。
そして何より気になるのが「グランセイザーの売上は上々(または好成績)」という部分。
それによって次作へ繋がり、結果的にシリーズ化したということがさも当然のように語られている。
だが先述したようにこのシリーズは「コナミが3年枠を押さえて展開したもの」である。
つまり最初からシリーズ化は既定路線だった。
ちなみにジャスティライザーの最古の企画資料は2003年11月28日付、つまりグランセイザー放送から間もない頃、
そしてセイザーXに至っては2004年10月12日付…ジャスティライザー放送間もない頃と、コンプリーションにはある。
これを考えると、最初から3年枠を取った上でのシリーズ化であったことがハッキリと判る。
#セイザーXで期間を3か月短縮したもののシリーズ継続断念→「おとぎ銃士赤ずきん」へシフト、という流れについては前回更新および前々回更新を参照。
売上が良かったという話も実際は東宝・釜プロデューサーとゼネラルエンタテイメント・船田プロデューサーの
「一作目(グランセイザー)から売り上げは良く無かった為、四作目の企画を通す前にコナミがスポンサーを降りた」※両者の証言を統合した大意
という証言があり、明確に否定されている。
ジャスティライザーで更に落とし、セイザーXはちょっとだけ持ち直したとも言う。
コナミの、ジャスティライザーで落としたにも拘らずセイザーXの製作まで全うしたのを見ると、放送一年前から企画が進んでいたが故のことでもあるだろう。
それこそジャスティライザーの売上の傾向がハッキリ読めたであろう半年分の時点でちゃぶ台返しがあってもおかしく無かったのかもしれない。
だからこそ、コナミ側からの売上情報があれば一番状況が俯瞰しやすかったのだが。
さらに言えばコナミは当時どの程度の売上ラインを設定していたのか、という所も。
番組視聴率は一応売上を予測できる指標の一つには違いないのだが、データとして残されたそれで実際の売上を割り出すのはとても無理がある。
相関が取れないのは素人でもちょっと考えたら判る話である。
つくづくコナミの、本シリーズに関して固く口を閉ざしている現状が惜しい。
その原因を自分は前々回の更新で推察しているのだが、仮にあの推察通りだとすれば
確かに致し方ないところではある。
それでも、やっぱり今でもコナミ側スタッフの証言を望んでいる。
何処かの雑誌か、単行本で語り下ろしてくれればいいのだが…。
このコナミ側証言という物が全て欠落している時点でコンプリーションはちょっと片手落ちと言わざるを得ないのが、一年以上経った今でも自分が抱いている感想の一つだ。
何より最大の謎としては「何故3年も押さえてくれたのか?」というものがある。
これが当時の東映ヒーローオタクから「売り場を圧迫するコナミの嫌がらせ」「コナミの税金対策」などと悪口を叩かれたりと、
それを実際に聞かされたこちらとしては今なお嫌な記憶として残っている。
#まあ、オタクの中でもプロレスオタクと並んで特撮ヒーローオタクは大抵ガラが悪いのだが…。
#マイナーな趣味ジャンルほどオタクは狂暴になる、というジンクスのようである。
残っているのだが、そういうオタク連中は得てして「新規で売る以上どうしても売り場の融通は不可避」であったり、
「税金対策ごときで特撮ヒーロー物なんて特殊なジャンルにカネ出す企業なんかレアだろう」という常識的な視点がすっぽり抜けていたりする。
#特に前者は、当時バンダイがミニ四駆と競合しようとしたバクシードを出していたりするのだが、彼らはそれをどう考えているのだろう。
オタクの間抜けさを指弾するのはこのへんにしておき、
やはり、3年もいきなり枠を押さえたことについてはかなりな謎である。
ゼネラルエンタテイメント側で働きかけた結果なのだろうか?
それとも玩具事業を本格的に定着させるためのコナミの当時の戦略だったのだろうか。
情報が乏し過ぎて、判然としない。