2015年7月5日日曜日

セイザーX・第十九話

第十九話「装着アド!未来に向かって」

[ネオデスカル:ガレイド]
リーボルト登場

演出:舞原賢三    脚本:林 民夫


<知らなかった事実>

冒頭。ガレイドの戦艦内では前回のドリルアングラーによる突然の攻撃について苛立つガレイド。
ジャッカルはガレイドの部下であるはずなのだが、命令を無視してシャークリーガーを攻撃したことが気に入らない様子。
ジャッカルより先にセイザーXを始末しろとグローザに言い放つが逆にジャッカルは敵じゃないと窘められる。
どうにも腹の虫が収まらないガレイドだが・・・。


安藤家ではブレアードがすっかり馴染んでいる。
春子たちと談笑している中拓人が戻ってくる。アドを探しに出ていたのだが見つからなかったようだ。
そのうち安藤家に戻って「一人で海を見ていたんだ」とでも言うんだろと拓人が言うのだが
事実アドはその通りに戻ってきた。
アドを元気付けようとする面々だったのだが、どれも空振り。
レミーは、ビオード星の人間は家族と言う形態を取らず
生まれてから一人で生きられるように教育を施されるのだと説明する。
家族の暖かさというものを知らずに育ったことについて由衣はなんだか寂しいとつぶやいた。

アドルイーグルで寝ながらアドを待つゴルド。 アドが声をかけない限り起きないらしい。
彼も彼なりにアドが立ち直ることを待っているのだろう。


拓人の部屋では、ケインが集めた写真が貼り付けられているアルバムを眺めるアドが居た。
そこへケインが入ってくる。
知らない時代の、知らない星を守るために戦うにはその星のことをよく知らないといけない。
地球人のことをよく知らないと僕は戦えなかったんだよとケイン。
アドは再びアルバムに目を落とす。

縁側では拓人がブレアードにどうやったらアドを元気付けられるか話し合っていた。
しかしブレアードは、そんなことより自分自身のこと・・・ 家族のことを大切にしろとたしなめる。
拓人が戦いに出た時は春子たちが心配しながら無事を祈り、
帰ってくれば心配していたことを隠して普通に振舞う。
そして、家族の暖かさを知るのはアドより拓人だと言い放つ。
ブレアードに諭されてしまい、拓人も少し落ち着きを取り戻す。


アドが二階から降りて外へ飛び出す。
ケインは、多分確かめに出て行ったんだよと拓人に語るが。


<今、改めて知ったもの>

アドは再び街中へ出て行く。
それまで地球人に対しては強い悪感情を抱いていたアド。
しかし、ブレアードから語られた真相によって自分自身の心の頑なさまでもが揺らいでいた。
街中では人々が普段の生活を営んでいた。
子供たちが遊びに出かけ、若い母親が赤ん坊を可愛がり、
命同士のふれあいたちが街中に溢れていることに気づいたアド。
その時、アドの周りの景色がとたんに総天然色へと変わっていく。


ガレイド艦では、グローザによるブレアード奪還作戦が告げられる。
セイザーXの一人を捕まえ、捕虜交換させるというのがその内容。

遊園地ではアドが保育園児たちの笑顔を見つめ、笑顔を漏らしていたのだが
その直後にアクアルとリーボルトが登場する。
しかし前回、戦闘への参加を禁じられていたことを思い出し装着を止めるアド。
ためらったアドの目の前には、物陰に隠れている保育園児たち。
アクアルの手元にはコスモカプセルがあり、これでセイザーXをおびき寄せようというのだが
反応は4つ現れていることがシャークによって告げられる。
そこで、シャークを含めた四人が分散してそれぞれの反応源へ赴くことに。

シャークが向かった先ではデスメードの一人がコスモカプセルを握っていた。
難なく回収に成功するも、シャークの前に突如ジャッカル。
装着して立ち向かうシャーク。

レミーとツインセイザーが向かった地点にはサイクリードが、ケインと宗二郎の来た場所へはグローザがそれぞれ待ち構えていた。
そして拓人はアドとアクアルの居るポイントへ駆けつけ装着・対峙することに。


<新しい決意>

シャークとジャッカルの戦闘。
ジャッカルは歴史を変えようとするシャークへ怒りをぶつけていた。
自分の行いが正しいとは思わないが、この悲しみの連鎖は誰かが断ち切るべきだと言い放ったシャークだが
誰がお前にそれを頼んだんだと吐き捨て、斬りかかるジャッカル。
お前は神かとまで言われるが、この星の、この時代の人々には自分の未来を自分で決める権利があるんだと反駁するシャーク。

レミーたちと対峙していたサイクリードはブレアードの近況をたずねていた。
元気そうであることを確認し、立ち去るサイクリード。
そしてリーボルト・アクアルの二人と戦うライオだが分が悪い。
アドはストレージリングを見つめ、装着するべきか懊悩する。
彼の目の前には逃げ遅れた保育園児がまだ居たのだから。

安藤家ではいつもどおり、拓人の安否を気遣う春子と由衣。
ブレアードはこんなことじゃアイツはくたばりゃしねーよと言い放つ。
元気付けようとしていることに気づいた春子がありがとうと返す。
ブレアードたち宇宙海賊もまた、アド同様親と言うものを知らずに宇宙海賊になった。
だから親の情はわからないが、母親って子供のことを心配する。そういうものなんだなとつぶやくブレアード。
あなた本当はいい人ね、と春子。
舌打ちをして、洗濯物を見つめたブレアード。


しかし、ライオは不利な状況を覆せず倒されそうになる。
仲間の危機に際し、除名覚悟で装着を果たし合流するイーグルセイザー。
形勢逆転する二人。ライオファイヤーで撃破しようとするライオだがリーボルトたちの後ろには保育園児たち。
それに気づいたイーグルが、至近距離で撃破するんだとアドバイスすると同時に
真っ先にリーボルトとアクアルの後ろへ回りこみ、リーボルトへナックルウインドを叩き込む。
ライオの足元へ吹き飛ぶリーボルト。 すかさずライオファイヤーを打ち込み撃破に成功。
アクアルは退散する。

命令を無視したことを気にしたイーグルだったが、そんな二人の足元へ保育園児たちが駆け寄る。
笑顔で風船を手渡され、安堵の微笑がもれる二人だった。


そしてビートルとグローザの戦い。
二人で切り結んでいたところ、グローザはビートルに対して「あなた、こんなことしていていいの?」と言い放つ。
宗二郎が二人を見つめていたが、グローザの発言は・・・?


安藤家へ戻る拓人とアド。手を洗ってらっしゃいと春子が促す。
家族のやりとりを眺めるブレアードは、幸せな奴だなとつぶやいた。
アドは言う。
自分の葛藤は消えることは無いが、今までの自分を少し疑ってみようと思った。
あの子供たちに決まった未来ではなく、ステキな未来を作ってもらうために。

そんな話をしていたところにレミーが戻る。
シャークとケインは戻ってきていない。
シャークはまだジャッカルと戦っていたのだ。 未来は既に決まっていると言い放つジャッカルとの戦いは、まだ終わらない。
そしてケインは・・・。
宗二郎がグローザに捕まってしまったことを、拓人たちに告げた。

【コスモカプセル入手状況】
セイザーX:7     ネオデスカル:3    未発見:2


【レビュー】

アドが自分の星の過去を知らされてから、改めて「地球の未来のために」戦うことを決意する回。
今回、実は4つのドラマ上のラインが提示されており若干複雑さも覗いているが
アドが立ち直るドラマが前面に出ているため、他の3つがジャマをせずにアドのドラマに集中できる点が良い。
特にラストでのアドのセリフは、以前ケインや拓人に言った言葉・・・ 未来を変えることは出来ないとした発言から
少しでも前向きに、せめて今居る地球の未来を変えることで結果的に自分たちの時代も変わるだろうと決意したものと考えると
アドなりに改めて戦う理由が見つかったと言えよう。
自分たちの祖先が過去の地球を制圧した事実は変わらないにせよ。


残りの3つのうちシャークとジャッカルの件は、何故ジャッカルがシャークに拘っているのかがまだ見えないものの、戦いぶりから見ればとにかくシャークを倒すことに拘っていることは判る。
ケインについては次回のヒキとなる。

そして拓人は、ブレアードに諭されていることと戦闘中に春子たちが心配している描写が挿入されていることからも判る様に
拓人自身が改めて家族を意識することへ繋がっていくドラマが生じている。
ブレアード自身もアド同様に家族を知らずに育った身だが、それでも春子たちを間近で見ていた結果思うところもあったのだろう。
ブレアードの心理の揺らぎも、今回は見受けられた。


シリーズ中一番ドラマ面・ストーリー面が充実したといえるのが本作だが
今回は特にそうした一面を垣間見ることができると言えよう。


【特撮の見どころ】

・アドの世界がモノクロから一転・カラーの世界へ変わっていく

アドが街中を彷徨うシーン自体は前回ラスト分から変化はない。
ただし今回では、アド自身の心象風景をあらわすかのようにアド以外がモノクロの景色。
それが、回る風車に目をやるとそれがカラーへ変化し
さらにはアドの足元からだんだんカラーへ変わっていくVFX演出は中々ウェットな、しかしアド自身の心の頑なさが変化していく描写としては悪くないシーンだ。

あとは最初のシャークVSジャッカルのシーンで、巧みにスローと早送りによる演出が行われていたことが目を引いた。
ジャスティライザーでは(主に石井てるよし演出回で)くどいくらいにスローを織り交ぜており
これがテンポを著しく削いでいたのだが
今回このシーンを見ても判るように、緩急のつけ方を意識した使い方になっていたのは、進歩と言えよう。


セイザーXのみ参加の舞原監督自身は先に東映の戦隊シリーズ演出を経験している。
恐らくある程度は本シリーズの演出の傾向やクセを研究した上で自らの演出プランへ落とし込んでいるように見受けられるが
私見では、東映作品の湿っぽくなりがち・ややマジメな演出に、うまく本シリーズのエッセンスが混じりこんでいて良いと感じた。