2015年5月10日日曜日

セイザーX・第十八話

第十八話「激震!ドリルアングラー」

[ネオデスカル:ガレイド]
未来恐獣・ネオデスバー登場

演出:舞原賢三    脚本:林 民夫


<ブレアードを巡る策謀>

冒頭。安藤家では由衣が縁側へ出ると、何かを見つけ叫ぶ。
拓人が降りてきて何事か確認するが、なあんだとあしらう。

そこには、ライオキャリアーから安藤家に移送されたブレアードが寝転がっていた。
透明バリアーによって庭から抜け出すことは不可能であるとケインから説明される。


朝食後、そのライオキャリアー内では未来からトビーの通信。
アドのビオード星がネオデスカルにより攻撃を受けているという。
動揺を隠し切れないアドに、沈着に対応。未来の仲間を信頼しろと言うシャーク。
拓人は憤慨して出て行ってしまった。

河原では拓人が怒りを鎮めていたが、レミーが現われシャークのフォローをする。
過去から未来へは戻れない以上、どうすることもできない自分たちには
未来の仲間を信用する以外に手立ては無い。 それがシャークなりの優しさなんだと言う。


安藤家では洗濯物を干すよう頼まれるブレアード。
船長や海賊船を失い、拓人との戦いもつけられないままの自分は孤独であると嘆くが
春子はそんなブレアードに、どこかで繋がっていたから私たちと貴方は出会えた。
だから一人じゃないと諭す。


そしてガレイドの戦艦内では、苛立つガレイドに対してアクアルが何かしらの
ブレアード奪還作戦を思いついたようであった。


<数百年前の地球、その真相>

安藤家ガレージでは、まだシャークに対してわだかまりのある拓人がケインに愚痴っていた。
そこへ宗二郎が現われ、人間態度が冷たいからって中身が冷たいとは限らんと言う。
人の心は複雑だ。状況や立場によっては優しい言葉をかけられないことだってあるんだ。
拓人は判らないとつぶやくが、 そんな時安藤家母屋からブレアードの叫び声が響く。

庭ではイーグルと殴り合っていたブレアード。
寝ていたから起こそうとしただけだと言うイーグルだったのだが、何故ここに来ているのかと尋ねるケイン。


茶の間ではアドが、三将軍に宇宙へ帰ってもらえれば未来の悲劇は無くなるだろうと判断していたことを説明。
独断での行動だった。
コスモカプセルをすぐに集めることが不可能だから、とのことだが・・・。
アドがビオード星の人間であることを知ると、ブレアードが何かを察したようなそぶりを見せる。

拓人が、さっさと宇宙へ帰れとブレアードに命令する。
お前達さえ先に攻撃しなきゃこんなことにならなかったんだろ?と問詰められるが
逆に、ビオード星の連中が先に攻撃を仕掛けてきたからこんなことになったんだとブレアードがアドを指差す。
驚いて振り返るアド。 さらに、地球に戻ってくることもなかったと意味深な発言をする。


かつて船長からは、コスモカプセルを12個集めることが遠い過去から繋がるお前達の使命だと告げられていた。
超古代の話では、ブレアードたちの先祖は元々地球で生活していたのだと言う。
そこにビオード星の人間が進攻・ブレアードたちの先祖が崇めていたコスモカプセルを全て奪い
地球を制圧してしまった。

先祖達はほとんど地下へもぐったものの、一部は宇宙へ永住地を捜し求めた。
だが、結局それは叶わず・・・ いつしか宇宙海賊として生きざるを得なくなった。
その末裔が、ブレアードたち三将軍。
呆然とした表情で、安藤家から飛び出してさまようアド。


つまり、超古代の地球を制圧したビオード星の子孫が、今の地球人か?と拓人が言う。
そういうことになるのだろう。
ブレアードも、何百万年前の先祖の復讐のために地球にくるなんてピンとこねぇとつぶやく。
ケイン自身もまた、未来ではこの話は皆知っていると言っていたが、アドが知らないことに疑問を持つ拓人。
ビオード星の人間は全員自分が正しい、全宇宙のリーダー的存在という自覚が強いため、そのプライドが理解を阻むのだろうと推測するケイン。

アドルイーグル内ではシャークから、更に詳細を聞かされることになるアド。
当時のビオード星人もまた、他の星の侵略を受けていたため仕方なく移住先を探していたという。
それが、地球だったという話。
その発端がどこにあるのかすら判らない以上、自分たちに課せられた使命は
コスモカプセルを集めることで戦いの連鎖を食い止めることにあると力説するシャーク。

あまりのショックで感情を露にするほど動揺してしまうアドだったが、そこへネオデスバーが襲来。


<襲来・ドリルアングラー>

ネオデスバーは前回倒されたデスバーの残骸から作られたものだが、これはネオデスカル側が
デスバー以外の恐獣を持っていなかったための、アクアルによる措置。
コスモカプセルのエネルギー増幅装置を用いての再生・強化であった。

ウインドイーグルで立ち向かうイーグルだが、先ほどの話のショックが大きすぎて戦いに集中できていない。
デスバーと違い、腕を伸ばして戦うなどトリッキーさが増しているネオデスバー。
ツイスターシュートすらはじいてしまう。

シャークからグレートライオへ合神するよう指示がでるが、イーグルは全く聞こえていないのか
分離を行わず、そのままネオデスバーにされるがまま。
何度もよびかけるシャークだったが、そこへ突如ドリルアングラーが襲来。シャークベースへ攻撃を仕掛ける。
グローザの撤退命令に背きシャークとの戦いに赴いたジャッカルが乗り込んでいたのだ。

シャークがドリルアングラーを相手にし、ビートバイザーにはネオデスバーへ向かわせるよう指示。
一方、戦意を喪失してしまったイーグルはウインドイーグルで戦い続けるが
攻撃は体をすり抜けてしまうなどして苦境に立たされる。


見かねたシャークはシャークリーガーへ変形しネオデスバーを再度倒そうと試みるが
二度も同じ技は通用しないことに気づき、ライオキャリアーなどによる集中砲火を浴びせる。
ダメージを負わせたところで、シャークリーガーのクロスバスターでトドメを刺す。

だが。
背後からドリルアングラーがドリルを突きたて、シャークリーガーへ大ダメージを負わせる。
トドメを刺そうとしたが、ライオキャリアーとビートバイザーによるフォローにより難を逃れる。
撤退するドリルアングラー。


戦後。
シャークはアドへ、出撃禁止を命じる。
状況上仕方なかったと拓人は弁護するが、結局命令に従い謹慎することになるアド。
その冷徹さは、レミーにすら冷たいといわせしめる。

精神的な揺らぎが生じたアド。
トビーからの通信では、ビオード星が守りぬかれたことが知らされるのだが・・・。
艦から飛び出し、彷徨うアド。

一方安藤家でも、食事を摂り洗濯物も干していたブレアード。
皆どこかで繋がっている。
春子の言葉が彼の心に深く残っていたようだった。
また、サイクリードも三人で帰りたいとガレイド艦内でネオデスカルの二人に言い放つ。
俺たち三人は心の深いところで繋がっている、とも・・・。


【レビュー】

ドリルアングラー登場回ではあるが、今回は宇宙海賊が発生したキッカケ――――――
古代のビオード星人による地球侵攻と、その結果が現在であることがブレアードにより語られる。
これは未来の世界でも皆が知っていることであるとケインやシャークが発言しているところを見ると、ビオード星人の中では隠蔽された歴史的事実なのだろうと思わされる。
事実アドは今回初めて知ったのだから。
#まあビオード星人以外が知っているというのも妙な話だが・・・。

ストーリー上での、戦いの起点といえそうな事柄がここで提示されている。

地球におけるコスモカプセル争奪戦に至る一連の流れの出発点は、何百万年前の地球を進攻したビオード星人。
そして制圧して以降の、現在の地球人の祖先がその当時のビオード星人。
しかしビオード星もまた、他の星からの侵略を受けていたとも言われており、
本シリーズに流れるSFのエッセンスを強調したストーリーが明らかとなる。

超古代人と言うとグランセイザーを思い出させるが、あちらが一億年前でこちらは数百万年前となり
ジャスティライザーも込みで面白い妄想がはかどりそうな要素がここにきて登場している。


さておいても、ブレアードたちが実は旧地球人であることがサラリと語られており
この部分においてもSF作品では割と散見されるネタでもある。
特撮ヒーロー作品ではウルトラセブンのノンマルトから知られるネタだが、意外と定番化はしていない為かえって新鮮に映る。
#使いにくいネタであることは一目でわかるとはいえ。
そして、アド自身がそのビオード星人でもあるのだが上記の真相により精神的に参ってしまう。
次回ではどのような道を彼が選ぶのか、気になる部分だ。


ところで、今回はトビーが登場しているがこれは河田秀二回で初出のキャラクター。
物語上必要なキャラクターではあるが、林民夫がちゃんと使っているあたり
しっかり構成上で出すキャラクターを決めた上で出していることが察せられる点は興味深い。
そんなとこ気にするの?と思われそうだが、
前作ジャスティライザーでは物語上その能力から言って出しやすそうな超能力青年を、他の脚本家回では全く使われていないなど
河田回が他の回から妙に乖離していたことを考えると、今作のようにシリーズ構成が機能しているだけで随分変わるのだろうか?
と思ってしまった。


【特撮の見どころ】

・ネオデスバーVS流星神
・ドリルアングラーVSシャークベースなどの艦隊戦


前者は、住宅地のセットでの戦闘。
ネオデスバー自身はデスバーから強化された要素として腕が伸びて、さらに腕から光線を放つなど
ガンダムシリーズで言うところのインコムのような攻撃を仕掛ける点が面白い。
大体腕が伸びてヒーローロボにダメージを与えるのみというパターンが多いため、特撮でこういった戦いを見るのはわりと珍しい部類だろう。
ウインドイーグルがネオデスバーに体当たりをした際、体が突き抜けてしまうのだが
その後のカットでウインドイーグルから湯気が立っている点は芸が細かい。


ドリルアングラー初登場。
シャークベースとの艦隊戦が見られるが、ここで用いられるそれぞれのCGモデルは中々見ごたえがあって悪くない。
前二作のそれと比べると質感が向上しているのは見逃せない。
また、シャークリーガーの背後からドリルで奇襲するなど見た目どおりのえぐい戦いもドリルアングラーの見所だ。
この際、シャークリーガーの胸部が貫通されかかってダメージを負っている描写も良い。


見所にないが、最初のブレアードが透明バリアーを突き抜けようとしているカット。
いかにも透明な膜がブレアードを阻んでいるCGが面白い。
また、安藤家側からはバリアーを貫いてエサなどを与えられる点も目を引く。
こうした細かい描写が見受けられるのは、本シリーズの醍醐味だが特に本作は割りと目立つ。