2015年7月5日日曜日

セイザーX・第二十一話

第二十一話「勝利へのフリーキック」

[ネオデスカル:ガレイド]

 演出:池田敏春   脚本:宮川洋紀


<ジャッカル出頭>

冒頭。サッカースタジアム前の練習場ではゴールへのシュートを練習中の少年が居た。
何故か右に逸れるシュートに首をかしげる。
チームメイトから勇太と呼ばれていたその少年は、途方にくれていた。


安藤家ではレミーが服を着替えていた。
シャークからは7人全員、1日休暇を取って楽しんでくるように指示が出ていた。
レミーはあくまで命令に従っているだけ、という態度なのだが。
春子は、今日まで色々あったからそういったことは全部忘れてたまにはパーっと遊べって隊長が言ってるのよとレミーに話す。
おにぎりをにぎりながら、レミーはぼんやり考え事をしていたが。

そして拓人他の六人は、レミーとは別行動を取っていた。
別の惑星へ訪れ宇宙ピクニックを堪能しようということらしい。
3つの衛星がその惑星の周りを公転しており、それぞれに大きさも公転スピードも異なっている。
その光景を見た拓人は綺麗だなぁとつぶやいていたが、アドは中々遊ぶ気になれない。
一方遅れて到着したケインは、すっかり着替えた上に卓球台を持ち出しノリノリ。


一方ガレイド艦内。
度々命令に背き、独自に行動していたジャッカルを呼びつけついには隔離するガレイド。
牢屋へ案内されると、既にブレアードが牢屋の中に入っていた。
ブレアードはネオデスカルに対して協力的ではないからだろう。 同じ牢屋に入れられる。
少し時間が経ち、ブレアードをなじるジャッカル。
ブレアードには一切目もくれず、ファングソーを取り出し牢屋を破壊すると出て行こうとする。


レミーは一人で地球に残り、サッカースタジアム近くまで歩いていた。
そこへサッカーボールがレミーへ飛んでくるがオーバーヘッドシュートで蹴り返す。
その先には、冒頭でシュートの練習をしていた少年・勇太がいた。
練習しすぎて空腹だった勇太を見て、拓人たちに持っていくはずの弁当を一緒に食べるレミー。
勇太は、このところ負けっぱなしのチームメイトを元気付けるために元サッカー選手の木村和司に手紙を書いたから、明日の試合にきてくれるかもしれないとうっかり嘘を言ってしまった。
木村とは以前サッカー教室でおしえてもらっただけの縁だったのだが、この言葉にチームメイトが活気付く。

嘘をついたことに酷く落ち込む勇太だが、レミーはその嘘をついた気持ちはよくわかると慰める。
そして、木村と会おうと提案。
家がどこにあるか判らないため、サッカー教室を開いているスタジアムの事務所へ行こうとするレミーたち。
マネージャーも明日予定を空けてこれるわけがないとぼやく。
憤るレミーが、手元のボールを高く蹴り上げて発散するが、それを運転席から見守っていたのが・・・。


<電撃合体!>

脱出に成功したジャッカルとブレアード。
何処かの道を並んで歩いていたのだが、ブレアードに興味のないジャッカル。
コケにされたことに拘るブレアードは装着したジャッカルと戦う。

その一方、ゴルドがうっかり打ち上げた卓球の球を捜していた拓人たち。
草むらを分けて探す最中、アドはブレアードとジャッカルを見つける。
どうやら同じ惑星まで二人は逃げ込んでいたようだ。
お前等に用はない、シャークを呼べと叫ぶジャッカルだが、アドは装着し立ち向かう。
命令を無視して戦うイーグルは、こいつらを倒してシャークに休暇をプレゼントするんだと拓人たちに提案。
それに乗る形で、拓人とケインも装着する。


地球では、勇太が再度木村へ手紙を書いていた。
来てくれるかどうか疑問を持っていたが、レミーは絶対にくるよと元気付ける。
何故なら、願いを聞いてくれない人なんて居ないから。
以前拓人に勧められた、タイムカプセル作成を思い出しながら、レミーは告げた。
しかし、勇太はレミーにもう充分だよと告げる。


一方惑星では、セイザーXの三人がそれぞれ必殺技をジャッカルに浴びせようとする。
ビートル・イーグルまではバリアで防いだものの、先ほどブレアードに傷つけられた脚が痛みだし体勢が崩れる。
ライオファイヤーが直撃する寸前、ブレアードがジャッカルをかばう。
あっけに取られるセイザーXだが、ジャッカルが立ち上がり全身からジャックスティンガーを放ち、怯ませたスキにブレアードごと撤退。

ジャッカルは、俺に傷を負わせたのはシャークとお前だけだとブレアードを讃えた。
そこで、シャークと決着を付けたら次はブレアードと戦うことを決める。
楽しみが一つ増えた、と談笑する二人だった。


地球に戻った拓人たち。 シャークベース内で修理中のシャークと宗二郎。
メシを食う時間くらいあるだろ?と春子と由衣を呼び寄せおにぎりを持ってこさせていた。
白いコメのメシを久しぶりに食べることとなったシャーク。
その様子を見て、じいちゃんと隊長の休日かぁと微笑んでいた。

そしてガレイド艦では、ジャッカルとブレアードが行動を共にすることを通信で知らされた。
コケにされたと感じたガレイドは更に憤慨する。


<勝利を呼ぶひと蹴り>

安藤家。拓人がレミーと落ち合っていた。
一緒に行かなかったことを責めていた拓人だが、事情を説明するレミー。
木村和司のことに触れた途端、拓人が目の色を変えて写真を持ってくる。 拓人の子供時代でもヒーロー扱いだったのだ。
勇太たちを元気付けようとまだ悩んでいたレミーだが、拓人は何か案を思いついたようだ。


翌日、試合当日。
結局木村が来ないことをチームメイトに謝った勇太だが、そこにレミーが現れる。
空を見るようにうながすと、ライオキャリアーなどでSHOOTの文字を空に描いていた。
それを見た全員は、勇太のために試合に勝つことを誓う。

試合が始まる。 レミーと拓人たちもベンチに座って応援。
きっとくる、とレミーが祈るように目をつぶると、近くで車が停まる。
試合はフリーキックの場面。勇太が大役を任されることになる。
車の窓が開き、思い切り回転をかけろと声がかかると勇太のシュートが内側にカーブを描き
相手のゴールへ吸い込まれていった。

ゴールを決めた勇太が、声のした方へ向き直ると・・・車からは木村和司が現れた。
驚く一同。 ゴールを讃える木村。
マネージャーはレミーにつぶやく。 普通は無理なんですが木村が昨日レミーが放ったシュートを見たことと、手紙に動かされて駆けつけたんだと。
それに子供には夢を持ち続けて欲しいですからねと言い残す。
そして、拓人に礼を述べるレミー。
想いは必ず伝わることを教えてくれたのは、拓人なのだから。


【レビュー】

前回までを考えると、内容的には箸休め感の強い回。
セイザーXの休暇と、少年サッカーチームという謎の取り合わせなのだが
それまでのキャラドラマの部分が美味くかみ合わせてくれたといえなくもない。

第七話でレミーに対して拓人が勧めたシャークへのタイムカプセル作成が今回のキーポイントとなっていた。
想いは必ず通じる。 それを拓人に教えてもらったレミーが今回のゲスト・勇太に対しても教える構図は
レミー自身のドラマという意味では無難にまとまっている。

今回、どちらかと言えばジャッカルとブレアードが電撃的合体・第三勢力的にネオデスカルから分離したことがストーリー的には目を引く。
目は引くのだがあまりにサラっと流してしまっている為、「あれ?こんな話でこうなってるのこいつら?」という感想を抱く視聴者は多かったし、
事実見返した自分からしても、あんまり印象に残らないなという感想もあった。

ヒーローものとして盛り上げるべき点が淡白すぎるという部分は、超星神シリーズ(というか東宝作品)に共通する特徴と言っていい。



今回のゲストで一応特記しておく人物が居る。 それが木村和司。
調べてみると80年代の日本サッカー界で活躍していたフリーキックの名手であり、
90年代中頃(つまりJリーグ発足初期)まで現役活動。 引退後は指導者、解説者としても活動している。
本シリーズ的にはかなり毛色の異なるゲストであるが、登場時間は終盤の合計1分程度に過ぎない。
下手するとヒーローもの全体を見通しても不思議な起用といっていい彼だが、勇太たちの世代でも木村のネームバリューは通用するものなのだろうか?
マリノスでプレーしていた現役末期なら、拓人の子供の頃と合致するので拓人がヒーローと呼ぶのはまあ判らなくもないが・・・。
#一応2006年当時は指導者としての活動も行っていた時期ではあった。

なお、実際に木村和司本人が出演していることを念のため付け加えることにする。


そして今回だけ脚本に「宮川洋紀」なる人物が参加している。
調べてみるとどうやらプロデューサー業が本職のようだ。 脚本家としての仕事は本作以外では見つからない。
#情報をお持ちの方がいらっしゃったらお教え下さい。

そんな経歴の人の割には、案外今までの話を受けての物語を書けていることが気にはなる。
ひょっとしたら名義貸しのセンもありそうだが、普通そういうのはネームバリューのある同業の先輩などが名前を貸すことが多いため
プロデューサーである氏の名前を借りて脚本を書くという必然性はないはず。
#本シリーズにはプロデューサーとしては一切関わっていない人物ですので念のため

となると当然当人が書いているという解釈になりそうだが、しかし先ほどの疑問もちょっと引っかかるし
うーん?


【特撮の見どころ】

・バカンス先の惑星を公転する衛星たち

特撮ヒーローものでは珍しく、複数の衛星持ちの惑星が舞台の一つでもあったのだが
ここではその衛星の公転が目を引いた。
一番大きい衛星はゆっくり、一番小さい衛星が速く惑星の周りを公転周期に沿って回っていることが伺える。
惑星に居る間はずっと背景に三つの衛星が異なるスピードで公転しているので、気づいた視聴者も居ることだろう。


東宝作品、特に本シリーズの特技スタッフは地味だが細かい部分を拘る傾向があり、他社作品に見慣れた人からすれば
こういう部分を指摘しても「こんなどうでもいい所が凄いの?」と言う人間も居るかもしれない。
しかし、「特撮」を使っているフィクション作品なんだから世界観にあった映像は見せるべきだし
地味な部分とはいえ、映像で世界の違いを説明している部分はもっと評価されなければおかしい。
少なくとも、自分はそう思っている。