2015年10月19日月曜日

超星神シリーズと文芸スタッフ その②

その①では、シリーズ構成に的を絞って考察?の真似事というか感想を述べてみた。
その②ではサブライター中心に語ってみたい。


度々レビューや考察?などでも触れているので覚えた方も居るかもしれないが
河田秀二を外して語るわけには行かない。
何故なら彼は脚本家として稲葉一広と並んで三作全てに関わった人間である。
なお略歴に関しては「脚本家・河田秀二への思いだけ」で述べているので繰り返さない。

冷静に見返すと、グランセイザーでのデビュー作とセイザーXでの仕事が大きく評価できるものの
ジャスティライザーに関しては現場判断で色々改変を喰らっていたのか定かではないが
いまいちウケ狙いが過ぎてつまらないというか、スベってる話が目立つ。
せめて脚本家デビューがもっと早く、アニメやドラマなどで仕事をこなせていたならば
もう少し作風というか、ヒーロー物を執筆する上での工夫が出てきた余地があったんじゃないかという気がしなくもない。

何せ脚本家としての商業デビューは2002年、グランセイザー参加時点では既に38歳という大台だったことを思うと
正直商業脚本家としての活動が遅すぎたとしか言いようが無い。
インディーズではもっと早くからやっていたとは言え・・・。
当人には色々な事情があったろうが、大体の脚本家が20代でデビューする例が多いことを思えば
遅すぎるのも考え物なのだろうか・・・?
#ちなみに稲葉一広は1960年産、1991年デビューなので30代デビューということになる。
#これもこれで少々遅きに失した感もある。


作風としては軽妙かつテンポのいい掛け合いが目を引くが、これは特にセイザーXで本領を発揮しているといっていい。
一方、本筋に関わる話となると少々弱い面があり、ややネタっぽいゲストキャラに頼りすぎるきらいもある。
ジャスティライザーだとオリオン座博士と超能力青年、
セイザーXだと第一話で助けられた子供の再登場がこれにあたる。
またグランセイザー四十八話も彼の脚本によるものだが、この回のみ何故か堀口博士が変なテンションになっている。
#赤星昇一郎自身のアドリブの可能性もあるのだが・・・。

ヒーロー物と言う特殊なジャンルで、しかも本筋に関わったことも少ないが故の弱点とも言える。
せめてあと10年早く商業デビューしていたら・・・と思ってしまう。
とはいえ何度も繰り返すが、グランセイザーの「さらば相棒!」だけは本シリーズにおいては未だに印象深い佳作だと10年以上経った今でも言い切れる。



さてここからは本編レビューなどであまり触れていなかったが、目を引いた脚本家達を述べてみたい。



まずグランセイザーから野添梨麻を挙げる。

代表作は「仮面天使ロゼッタ」、アニメ「星のカービィ」「ウルトラマンキッズ 母をたずねて3000万光年」(シリーズ構成※)
(※)シリーズ構成だが、脚本ローテーションには関わっていない様子。

ネット上で軽く調べてみると、円谷プロとのかかわりが深いようである。
小学館から1996年に出ていた学習まんが「円谷英二」においてストーリー原作を担当、
1994年にもミラーマンの小説を手掛けていることからもそれが伺える。

どうも活動自体は脚本家だけでなく小説家・ルポライターとしても活動しているようで
調べるうちに1987年に「阪急線歴史散歩」という本を出していたようだ。
帯には「女性らしい観察眼」と書かれているので、彼女は事実上超星神シリーズ唯一の女性脚本家ということになる。
#まあこんな珍しい名前というかペンネームの同一人物がいるわけがないしなぁ。
#なお女性である件は、ロギアの武器・ホロスナイパーのプロップを作った旭工房・ラビフィーのblogなどでご尊顔を拝見できる。
twitterの発言を見ると関西弁だったりするので、自分は同一人物だと判断しているが。

また、ガンダムをはじめ比較的最近のアニメの話に言及することもあるため割と筋金入りのアニメ好きなのだろうか?
円谷英二とガンダムと囲碁が氏のキーワードなようである。


さておき。
グランセイザーにおいては第三部終盤のオメガがらみの2話と、第四部序盤のボスキート撃破の2話を担当している。
本編レビューでも特に後者は褒めているのだが、終盤突如起用された人にしては
それまで(散発的に)出ていた要素をうまく纏めて話に昇華していたのが印象的であった。
#twitterでの氏の発言によれば、スタッフと打ち合わせを始めたのは第一部放送時。

もし氏がジャスティライザーとセイザーXにも参加していたら、特にジャスティライザーはもっと見れた作品になっていたんじゃないだろうかと思わずにいられない。
場当たり的で色んな要素がとっ散らかっていたジャスティライザーを引締められたのは氏しか居なかったんじゃないか?

とはいえネットで調べる限りだと仕事自体が非常に寡作であり、長く手掛けていたものが「星のカービィ」しかない。
悪い言い方になるが、気ままに仕事を請けるスタイルなのだろうか。
もし東宝が、野添氏をつなぎとめることが出来たのならと思うと惜しい気がする。

そして作風は、本作のみで見る限りではコレといったものが見出せないというのが率直な感想でもある。
様々な要素を美味くまとめて料理したボスキート最終決戦の二話はさておき、第三部終盤に突如出したオメガに関しては
野添氏だけの責任に帰するものではないにしろ、突然出てきたキャラのせいでイマイチ未加との交流と決裂のドラマに重みが出なかったのは残念。
だからこそ、ジャスティライザーやセイザーXでも仕事していればもっと正確な評価ができたはずなのだが・・・。

強いて言えば「他の回で出た小ネタや要素をうまく拾い上げて、ストーリーやドラマ上のアクセントとして昇華できる人」という評価となろうか。



そしてグランセイザーとジャスティライザーに参加していた上代務

代表作はアニメ「NINKU-忍空-」(デビュー作)「カレイドスター(第二期)」「キャシャーンSins」など。
映画「シベリア超特急3」といった変り種も手掛けているが、最近ではアニメ脚本の他に漫画原作の仕事も多い。
アニメ脚本に関してはデビュー作をはじめ比較的最近の遊戯王シリーズや「バクマン。」、「HUNTER×HUNTER(第二期)」など、ジャンプ漫画のアニメの仕事が目立つ。


グランセイザーでは辰平メイン回の「イルカの日」と第四部の「終末の始まり」「滅亡の序曲」を担当。
辰平担当回という以外は特に目に付く仕事はないが、
反面ジャスティライザーにおいてはそこそこ活躍している脚本家だったりする。

ジャスティライザーにおいては第三話から参加。
真也登場→三人と澪たち主要メンバーが集結→ケンライザー初登場 と、序盤のトピックとなる回を担当している。
(ここでは、一度ゾラが倒されて強化復活するというトピックもある)

更にゾラ編ラスト二話を担当、バッカス編でも真也と澪をメインに据えた十九・二十話も執筆している。
真也のキャラクターに揺らぎと成長を与えた話として記憶される回だ。
そしてダルガ&アドロクス編のトップバッター・三十四話担当であり、グランセイザーの松坂直人ゲスト回の四十二・四十三話と
クロガネ登場回となる四十六・四十七話を担当している。

ジャスティライザーに関しては稲葉一広に次ぐ脚本家として重用されていることが、担当回から伺える。(のべ13本担当)

作風としてはソツがない、の一言で済んでしまうくらいにアクがない脚本家と言える。
アニメでの仕事では色々意見の飛び交う氏だが、本シリーズに限って言えば割と普通というか
サブライターとして堅実に仕事をこなしていたという感想である。
と同時に、何故かサブライターなのにストーリー上話が大きく動く回を担当することが多い。
稲葉一広の手に余ったのか、稲葉自身が書きたがらなかったのかは知らないがちょっと不思議だ。

ソツがない、とはいったが一方でステラプレート編ラスト(と同時にゾラ編ラスト)で、何の脈絡もなく
源太郎にステラプレートを持たせたり、
ダルガ最終決戦間近では何の伏線も張らずに麗香にリングが反応している(=神野がクロガネに変化できることを示す)など
おかしい描写や話の流れが入ったりもするため、自分の評価はあくまで
「ジャスティライザーに関わった文芸スタッフの中では一番マシ」という程度であることを強調したい。

前者も大概なポカだが、後者で全く説明もなく麗香をクロガネに変化するためのキーパーソンにしてしまった点は重大な失敗であろう。
本編レビューでも書いたが、せめて麗香がライザー星人の末裔とかの設定があるべきだったのだが・・・。
#本編では神野が「よく判らんがお前にリングが反応している」だけで説明を終えてしまっている。

真也と澪をメインに話を作りきった十九・二十話や
直人ゲスト回にして翔太・ユカの関係を改めて強調した四十二・四十三話など
本作においては内容のあるいい話も書けるだけに、話のクオリティが著しく上下する点は惜しいと言わざるを得ない。



そして一方、ヒーロー物オタクには馴染みのある名前・・・ 古怒田健志が居る。
元々特撮情報誌「宇宙船」のライターの一人であり、脚本家としてヒーローものに関わるようになったのは「ウルトラマンダイナ」から。
更に意外なことに、東映作品に関わっている本数が少ない。
調べてみると特撮ヒーロー物よりはアニメに比重を置いた活動が目立つようだ。
なおアニメの代表作としては、「GetRide!アムドライバー」を特記しておきたい。 同じスポンサーだし。

さて氏の仕事だが、グランセイザーとセイザーXに参加しており
ジャスティライザーだけ何故か抜けているのが不思議ではある。
#このシリーズの脚本家起用の傾向は、前二作のみ関わるか各作品一作のみ起用というケースが多い。
#一応、ジャスティライザーの頃は上記アムドライバーに参加していたからという事情もあるのかもしれないが。


グランセイザーにおいては第三話(炎のトライブがそろう回)に
個人的に特撮面で高い評価を下している第八話(クラウドドラゴン初登場回)、そして第一部ラストの第十二話。
第二部ではダイセイザー初登場の二十一・二十二話、第三部でもユウヒ初登場の二十八・二十九話など
前半において話が大きく動く回を担当していることが目に付く。

大川俊道が全く機能していないことが伺える一面ではあるが、ヒーロー物としては定番の
ヒーロー集結回や最終ロボ登場回を、ヒーロー物に慣れている(書きなれてるわけじゃないが)氏に任せたのは無難というか他に適任者が居なかったというべきか・・・?
また、当時のヒーロー物で見られた「強大・特殊な力を持った者の懊悩」というものを、ダイセイザー登場回とユウヒ登場回にそれぞれ投入するなど
当時はその部分が叩かれこそしたが、今思い返すとあの当時の流れにそれとなく乗りかかっていた唯一の脚本家だったとも言える。
一応ダイセイザー初登場回での天馬の発言が、本作の結末に若干関わっていると見るのは穿ち過ぎか?
「殴られたら殴り返すが殴ってこなければ闘いは終わりだ」がその発言だが。


セイザーXではコミカル回「由衣の休日」とブレアードのドラマが動く「船長の正体」を担当。
これらに関しては特筆する部分はない。
それだけ林民夫と河田秀二によって作られた世界に完全に溶け込めてたとも言えるのだが。
ただ、こうしてみてみると器用な脚本家という印象も持った。
良くも悪くも作品にあわせた話を書ける人というべきか。


さて、本シリーズに関わったサブライターで特に注目できる脚本家をピックアップしてみた。
他の脚本家についてはあまり特記できる部分がないというか・・・。
機会があれば、演出家についても述べてみたい。