2016年3月30日水曜日

グランセイザーのキモ・国防省

久しぶりに「グランセイザー個人的レビュー」のラベルを貼ってお届けするこの更新。
今回は本シリーズにおいて重要な存在になる「はずだった」、国防省にスポットライトを当ててみたい。



グランセイザーという作品を個人的に評するなら、ヒーローものとしては全く物足りない代わりに
地球防衛のストーリーを持った特撮ドラマとしては逸品たりえる作品、というものだが
その象徴はグランセイザーになく、彼らと時には共闘し、時には意見の相違もあった国防省である。


グランセイザーにおける国防省は、第一話から登場している御園木による堀口博士への資金援助が
実は超星神とグランセイザーの力を日本防衛のために利用するべく行っていたものであると
劇中で明らかにしているように、特に第一部の御園木と国防省はグランセイザーを利用しようという立場において行動していた。
このあたりはヒーローものとしては現実的な思考ではある。
少なくとも、超古代のヒーローという設定で先行しているウルトラマンティガや仮面ライダークウガとの差別化という意味でも成功している。


なによりここでは既に「国防省の人間として、最後まで日本防衛に拘っている」
という彼個人のストーリーラインがしっかり明示されていることを忘れてはいけない。
それが、第三部におけるユウヒ建造へと繋がっていると考えるのは決して間違いではない。
なおユウヒ初登場回ではそんな御園木に対して国防省内では好感していない人間も居ることが
同期の人間によって語られるなど、御園木自身にもまたドラマが存在している。

第一部の国防省(御園木)は先述したように、あくまで超星神およびグランセイザーの能力を
日本防衛のために利用しようと考えていたのだが、
アケロン人との直接戦闘を経て考え方が変化。 グランセイザーとの協調関係へと推移する。
日本防衛に拘るどころの騒ぎではなくなりつつあったのが原因だが・・・。


第二部からはグランセイザーと協調体制を築きつつあったものの
御園木の部下である沖田が前面に出るようになってからは、ただ単なるパートナー関係とは言い切れない状態が現出。
沖田自身、グランセイザーはあくまで民間の協力者という観点を崩していないからだ。
これは第四部まで彼自身が持ち続けていた視点でもある。
その第二部も、ガントラスがらみのストーリーラインの上にしっかり国防省が関わっている。
国防省技術局所属の和久井博士の助手として帯同している星山(ロギア)の暗躍が描かれたのがこの第二部。
もっとも序盤だけで、第二部終盤あたりになると急に影が薄くもなるがこれは仕方ないところもある。
急に降って沸いて来たようなロギアと天馬のライバルストーリーに注力したからだろう。


第三部では「五式支援機士ユウヒ」を造り上げる国防省。
ダイロギアンを分析し、御園木の指揮によって造られたのだが、初登場回でライセンス供与により海外にも売り込む噂が挟み込まれるなど、ミリタリズムと現実感を漂わせる話が出てくる。
ヒーローものの割には妙に細部を表現しようとしている点も目を引くのだが
こういった部分は大体国防省がらみのストーリー展開の中で出てくることが多い。


第四部。
ストーリーも大詰めとなり、いよいよウォフ・マナフ大船団による総攻撃が目前に迫る時になって
なんとかウォフ・マナフに自分たちは戦う意思がないことを伝えようと悩むグランセイザーをよそに
「日本防衛のために」ウォフ・マナフの迎撃を決定する国防省上層部。
グランセイザーに目を向けて見ていると、この国防省の行動は一見不条理に見えるかも知れないが
国防省自体は最初から「日本防衛のための軍隊」として存在していたことを考えれば充分納得のいく流れと言える。
とはいえ、結局はグランセイザー自身が直接ウォフ・マナフへ戦う意思がないことを伝えるのが先になったため、全面衝突は避けられたのだが。


こうして第一部~第四部までの彼ら国防省のストーリーをさらってみると、
他社作品での、公的機関の協力者とは一線を画している。
あくまでグランセイザーとは協調関係を維持しているものの、最後までグランセイザーとは一線を引いて戦っていたのだ。
彼らの存在が、やや散漫な印象を与えるグランセイザーという作品のストーリーラインの一つとして最後まで作用していたことは特記しておく。


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第二部冒頭では天馬に「立ち入ってもいいが命の保証はしない」と言い放つなど
国防省の軍人である立場を崩さない、シビアな態度が目を引く沖田。
第三部でも「ヴェルソー暴走!」で天馬たちと一時的に対立してしまうなど
国防省そのものがグランセイザーとは距離を置いていることがよく判る描写が目立つのだが
その象徴が沖田だろう。
#その第二部、リヴァイアサンを見に来た天馬に対して立入許可証を提示させようとするなど
#国防省としてグランセイザーは協力者として認めつつも特別扱いしていないことが窺える。

第四部のボスキート登場編においても、堀口に対して「一般の方々の力を借りなければいけないのは情けない」などと、自分たちの立場を自覚しつつも
現実にはグランセイザーを頼らなければならない情けなさを吐露するなど、沖田自身が国防省の人間としての立場を崩さない発言を終始行っている点は
こうした公的機関の人間はなし崩し的に全面協力することの多いヒーロー作品においては充分出色であろう。
(レギュラー登場していることが前提ではあるが)


なにより御園木を後ろに引いたことも大きい。
考えてみたら国防省では課長職にある人間が出ずっぱりというのも可笑しな話である。
そこで部下の沖田がグランセイザーと直接的に関わる描写が増えたことで、上記のようなやりとりが多く差し込まれるようになり
結果的には組織としてのリアリズムがある程度は確保出来ているように思える。


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そんな国防省だが、ジャスティライザーでは序盤のやられメカ的扱いで登場。
終盤になってようやく国防省の人物が登場することになる。
九条と白河の二人だが、特に九条はキャラクター的にはもっと早く出すべきだったように思うほどに
惜しいキャラクターであった。
あの飄々とした人物像は、妙に生真面目なムードの漂っていたジャスティライザーのドラマ面にとっては
いいアクセント足りえたはずなのだが・・・。

せめて序盤、正体を明かさずにジャスティライザーと接触する謎の人物としてレギュラー化してても
なんら問題なかったはずなんだけれど。
#もっともバッカス編の神野と被るといえば被ってしまうが
文芸スタッフと東宝側プロデューサーが入れ替わったせいで、グランセイザーにあった美点・・・ 国防省というストーリーラインがオミットされたのは今でも惜しい。


そしてセイザーXに至ってはやられメカな扱いのまま、本編にはとうとう一度も国防省の人物は登場しないまま終わる。
#劇場版に出たとはいうが、あれはパラレルのようなよく判らない扱いだし・・・。


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正直今でも惜しい。
もしかしたらジャスティライザーやセイザーXでも国防省の人間をしっかり出した上で
グランセイザーからの延長線上の要素をしっかり出していたとすれば、本シリーズの注目点はもう一つ増えたのは間違いない。

ジャスティライザーになってから国防省側でも
ユウヒの発展系のような支援機士を開発していたかもしれないし、あわよくばグランセイザーを研究した上で
強化服兵士を開発・登場させていた可能性すらあったと思えるし
そうした妄想を膨らませられるほど、グランセイザー本編の国防省の描写は目を引くものであった。

ジャスティライザーでメーサー戦車が出てきたり
セイザーX劇場版で轟天号を出すなど、川北側のお遊びを入れられる余地も残っていた国防省という存在。
彼らが三作品全てに、ストーリー面でしっかり関わっていればもっと本シリーズの評価も違っていたと今でも信じている。


ただ、自分は国防省という存在をたかく評価しているが
一方で当時の視聴者側の反応は鈍いのが気になるが・・・。(主に年長の)
確かにヒーローものなんだから、脇が目立っても仕方ないという意見や視点もあろうが、
それでも「ヒーローVS敵」という、どうしても狭くなりがちなヒーローものの世界観に奥行きを持たせた
本シリーズにおける彼ら国防省の存在だけは軽視できない。

願わくば彼らを軸にした再評価の機運が生まれてもいいと考えている。