2020年4月30日木曜日

レインボーマン・第二十話

第二十話「M作戦をぶっとばせ!!」


<第六の刺客>


前回からの続き。
御多福会本部・参覚寺の壊滅に成功し、死ね死ね団の陰謀を食い止めたかと安堵し一路東京へ飛び立つレインボーマン。
一方のミスターKは切歯扼腕、部下たちを叱咤すると同時にイグアナに対しても何かを言いたげであったのだが・・・


そのイグアナは、すでに五人の殺人プロフェッショナルを倒され、弔いの最中である。
最後の刺客・実子であるエルバンダを呼び寄せレインボーマンへ差し向ける。




東京へ向かうレインボーマンに、空中で激突するエルバンダ。
海岸に落下する二人の戦いは、エルバンダの高圧電流攻撃を一度は浴びるものの
スキを衝いてエルバンダを海に蹴落とす。
背中の電池から漏電しダメージを負うエルバンダを、イグアナがワープで帰還させる。
危うく倒されかかるところだったレインボーマンだった。




タケシの家では、みゆきに対してロウをたらし拷問にかけるキャシーたち。
その光景に堪えかねたたみは、とうとう自分の持っていたメモを渡してしまう。
去り際に時限爆弾をセットしていくキャシーたち死ね死ね団員。
入れ違いに帰ってきたタケシが気付き、外へ放り投げたが爆発の衝撃で家が揺れる。


たみとみゆきを縛る縄が解かれ、たみはメモの件を伝えるがタケシは既に頭に入っているから大丈夫だと労う。




<休業・高騰・・・>


メモ奪取の一報はミスターKを喜ばせた。 しかし。
参覚寺の倉庫にあった贋札の在庫はなくなってしまった為、御多福会全体の贋札の在庫はかなり限られたものとなった。
そのため、Kはキャシーに「効果的に限られた在庫を使う為」ゲリラ的にばらまく作戦を遂行するよう指示。


タケシの家。 夕食中に件のゲリラバラマキ作戦と思われる事件がテレビニュースとして流れる。
それを眺めているタケシが食事の箸を止める。
たみは、おかずが気に入らないんだろう?と心配。 そんなことはないと返すタケシなのだが、
物価がこのところ上がりすぎてどうしようもないんだよ、と困るたみ。
既に死ね死ね団の作戦は、目に見える形で効果を上げてきているのだ。
中座し、堀田のもとへ行くと告げるタケシ。


その最中、町中では休業のビラを貼り付けた店が居並ぶ。
参覚寺を潰そうが、経済の混乱に歯止めがかからない現状にいら立つタケシ。




<真実を伝えるには>


堀田の職場にて、久々に堀田と会話を交わす。
それまでの経緯を軽く話すタケシだが、このままでは市民の暴動が起こりかねないと
不安を口にする堀田。
警察も動いているらしいのだが、何も手がかりが掴めずどうにもならない。
政府の対策委員会もサジを投げている現状では、市民が暴徒化すればますます混迷が深まるに違いない。


死ね死ね団の陰謀がそもそもの原因なのに、どうにもならない。
悔しがるタケシなのだが、そこで堀田が対策委員会に乗り込んで死ね死ね団の陰謀であることを話すほかないのでは、と提案する。
証拠がないんだから信じてもらえないだろう、とあきらめるタケシなのだが、
人間同士信じあえるのは証拠ではない、信じあおうとする誠の心なのではないのか、そう諭す堀田。


その言葉に力を得て、話す決心がついたタケシはいよいよ政府の対策委員会へ乗り込むことになる。
しかしそこに、張り込んでいた死ね死ね団員の襲撃。
変化し排除するレインボーマンだったのだが。


襲撃失敗の一報を受けたミッチーがKに報告するが、Kはかまわん、とにかくレインボーマンを東京にくぎ付けにしておけと指示。
秘密基地さえ無事であればM作戦は遂行可能である。その為にはレインボーマンにあまり動かれては困るということであった。
むろんレインボーマンを倒すのはそれからでも遅くはない。




<政府との接触>


翌日。 朝刊の一面では造幣局の印刷ミスか?という見出しが躍るが
贋札の件を知っているタケシは違うと一喝。
一般市民も判らぬまま進行していこうとしているM作戦を食い止めるべく、政府の対策委員会へ向かったタケシ。




対策委員会では、調査の途中経過報告がなされていた。
紙質以外は全く同じ一万円札であると伝えられる。 スペクトル分析器を使うことで、贋札であれば青く光ることが判明。
分析装置を急ぎ配備することが大臣の一存で決まると同時に
混乱していく国民生活に秩序を回復させるにはどうすればいいのか、議題が進もうとしていた。


その矢先現れるレインボーマン。
贋札をばら撒いているのは死ね死ね団という陰謀組織であり、彼らの目的は日本人の抹殺。
その末端組織に御多福会があり、それが贋札をばら撒いているのだと告発。


しかし議会は騒然、突如現れたレインボーマンの話をあまり信用していない一同。
御多福会は警察も調査したものの、何も無かったというのだが・・・。
しかもこの平和な日本で、日本人滅亡などと突拍子もない話をされては信じようがない。


レインボーマンは続ける。
死ね死ね団という組織があるということを信じてほしい。これを叩き潰さない限り経済混乱からの回復は不可能である、と。
そう言い残して立ち去るレインボーマン。




テレビニュースは、その一報を伝えていた。
とうとう頭に来たか!と哄笑するミスターKだったが、その後レインボーマンの発言を鑑み、
御多福会を再度調査する旨が伝えられる。
直後、ミスターKによる全御多福会への指示が伝わる。


全ての証拠を隠滅し速やかに引き上げろ。
御多福会幹部たちは急ぎ建物に火をつけ、証拠隠滅を図る。
その一つである城東支部では、捕まったままのヤッパの鉄がなんとか逃げ出すことに成功。
町中を歩くタケシに、ほうぼうの体で落ち合った鉄。


鉄は、御多福会幹部の話を盗み聞きしていた。
本部は潰れたがその隣の山の工場は無事だった、と。
それを聞いてタケシは今度こそ決着をつけるべく秘密工場へ急ぐ。


レインボーマンの動きはただちに死ね死ね団にも知れるところとなった。
ボルトへ緊急指令を伝えるとともに、イグアナへもエルバンダを出場させるよう促すミスターK。




やがて秘密工場のある山へ降り立つレインボーマンだが、同時にエルバンダも合流し行く手を遮る。
遠当ての術は高圧電流バリヤーによって封じられ、打つ手がない。
やがてエルバンダの高圧電流を浴び体が痺れ動けなくなる。
絶体絶命、どうなるレインボーマン。




【レビュー】


本作を特撮ヒーローものとしては特異な作品ならしめる一連の話がここから第二十二話「一億人を救え!!」まで続く。


まず今回は、M作戦の進行が実際に判る形で描かれている。
タケシの家の夕食が、鮭の塩焼き一枚くらいしかおかずがないという描写もそうだが
夕食後の町並みの、休業する店の立ち並ぶ情景。
前回でも叔江と正造の会話の中で、値札が書き換わって値段が上がっていく様自体は描かれていた。
今回はもう少し踏み込んだ形の描写になっている。
一方、タケシが対策委員会に乗り込む直前の新聞報道が、たんなる造幣局の印刷ミスだと断じている下りなど
地道に経済混乱を描いているさまがうかがえる。


やがて対策委員会へ乗り込むレインボーマンは、ここまでの経緯と、死ね死ね団という組織の存在および目的を訴える。
全く信じてもらえていない状況下でも、せめてそういう組織が居て、彼らを潰さない限り経済混乱は収まらないことを訴える。


確かに、タケシが堀田との会話で話したように証拠である贋札さえ持っていれば違ったのかもしれないが、
対策委員会側でもどういうわけか、御多福会自体が怪しいことを掴んでいたようであった。
今見るとこのへんはちょっと強引なきらいはあるが、当時の作劇の限界であろうと推察する。
なぜなら、結果としては再度御多福会の調査に乗り出すことになったからだ。




とはいえ、政府とヒーローが対話する情景というのは中々類例を見ない。
と同時に、当時の川内康範が持っていた問題意識がほのかに感じられるところでもある。
ある委員の「この平和な日本で~」というセリフなどでもそれは伝わる。


しかし平和とはいえども身近に日本壊滅の危険が迫っている状況である。
ヒーローたるレインボーマンは対処療法としての御多福会本部壊滅程度しか出来ない今、
贋札流通によるハイパーインフレへの対策は、政府、つまり国に任せざるを得ない。
ここに、川内康範なりのリアリズムが見える。
なぜなら、M作戦は既に遂行されており実際に効果を上げてしまっている以上
参覚寺を叩き潰したところでハイパーインフレが即座に解消されるわけではないからだ。
♯即座に解消される、という流れはむしろ東映ヒーローの本領であろう。


ある意味ではアンチ・ヒーローものと言えるレインボーマンなる作品。
その本領はここから数話で発揮される。




【特撮の見どころ】


・なし


エルバンダの腕や、海に落ちたとき彼の周囲に描かれる電気エフェクトくらいか。