2013年10月13日日曜日

グランセイザー・第二十八話

第二十八話「美しき逃亡者」

●<グランセイザー>弓道天馬、獅堂未加
○<関係者・ゲストなど>堀口一郎、御園木篤司、沖田総一郎、椿征二、久我栞
★<敵> クローンアケロン人


【国防省メイン回】

<謎のアケロン人>

冒頭、真夜中の街を女性が何者かに追われている。
その追跡者の姿は アケロン人のように見える。 それを偶然通りかかった天馬が追い払い、女性を救出する。

いつもの研究室。彼女の名前は久我栞。
そして彼女を襲ったのもアケロン人ではあるが、何故アケロン人が彼女を襲ったのか
彼女は何処から来たのかについては口を固く閉ざしたまま。

一方、国防省のドック。
ここでは巨大ロボ・五式支援機士ユウヒが製造、完成しようとしている。
それを見守る御園木に、椿が話しかける。
彼は、インパクター・ロギアが残したロボ ダイロギアンのデータを御園木に渡しており
それを参考にして作られたのがこのユウヒ。
御園木はこのユウヒをあくまで異星人との戦い限定で使うように上層部に提案しているのだが

その椿が言うには
「ユウヒを御園木が私物化しようとしているという噂がある。さらに(ユウヒの)ライセンス供与の話が国外から来ているらしい」
という噂が国防省内で流れているというのだ。
さらに、国防省としてはこの国の利益こそが最優先事項であるとも。
既に異星人の脅威を身をもって知っている御園木は、それよりも異星人との戦いが最優先であると言うのだが。
自分のことに気をつけておけと言い残し立ち去る椿。

その直後に沖田が、その椿に関する噂を御園木に伝える。
椿の所属は科学分析部、その本部長をしているのだが 宇宙生物細胞研究チームへ予算を追加計上
その上で施設の移設も行っているという。
さらに研究内容も省内の情報本部にすら秘匿しているとか。
「椿とは国防大学からの同期、間違いを犯すような人間ではない」とその噂に取り合おうとしない御園木だったが・・・。


<栞の謎>

翌日。研究室では栞の件について話し合う博士たち。
国防省の名前が出た途端に栞は研究室から飛び出した。 
彼女は国防省から脱走したらしい。 

死亡したアケロン人の細胞を研究していた彼女は、その研究の趣旨がやがて変化していき
「クローン培養し、生体兵器として利用しようと国防省が目論んでいる」という事実を聞き出す天馬。
昨日戦ったアケロン人はクローンで、しかも生体兵器として遺伝子操作もされていると言う。
当初は生体を純粋に解析するためだけに仕事をしていた彼女はすっかり恐ろしくなり、逃げ出したと。

天馬と栞話している最中、そのクローンアケロン人が突如襲い掛かってくる。
タリアスへ装着してこれに対応するが、戦闘用に改良されているのかタリアスだけでは歯が立たない。
そうしてミトラスも合流し、クローンを撃破したのだが

戦闘の最中、栞は謎の黒尽くめの男に捕われてしまった。


<国防省のプライドと現実と・・・>

捕まった栞は、国防省の科学分析センターへ連れ戻される。 そこで椿と出会い口論する。
国益のためにクローンアケロン人を作り出す意味があると言う椿は
逃亡の際に栞が盗んだ水晶体を取り戻し、いずこかへ去っていく。

一方研究室、沖田が御園木に今回の事件を電話で伝えている。
科学分析センターへ栞を奪還するべく出ようとする天馬を制止した沖田は
「これは国防省内での不祥事だ。ここまで君達の手を借りるわけにはいかない」

その一方で彼は、自分が国防省に入ったのはこの国の人々を守るためで、どんな危険も覚悟しているが
天馬たちはなりたくてグランセイザーになったわけではないだろう?と話す。
事実天馬たちは全て、何かしらの偶然でグランセイザーになったわけだ。
それを突かれて答えに窮する天馬。
「本来なら我々プロが異星人に対応せねばならないが、情けないことに君達の力を借りなくてはいけない」
「俺も、御園木さんも申し訳ないと思っているんだ」
そう吐露した彼の顔には、軍人としてのプライドと それだけではどうしようもない現実への歯がゆさが滲み出ている。

それを一通り聞いた堀口博士もまた
「だが、平和を守りたいと願う想いは君たちと何ら変わらないんだ」と断言する。
もはや、国防省だけの問題ではないのだから。


<クローンアケロン人という危険な存在>

御園木は科学分析センターへ椿を尋ねに来る。
そこで椿は「この国の未来の為にやっていることだ」と切り出す。
さらに彼は、栞が持ち出した水晶体を用いることでアケロン人は不死身となると発言。
その水晶体は撃墜したアケロン人の宇宙船から取り出したもので、そこから発せられるエネルギーを浴びせることで
強化、不死身と言っていい能力を持ち得る。
その結果グランセイザー以上の力を持てるとも。

グランセイザーをフォローするべく作ったユウヒと、あくまで日本防衛の為に作ったというクローンアケロン人
両者の主張は平行線を辿っている最中、研究所からクローンアケロン人2号が脱走した。
彼は前述の水晶体のエネルギーを浴び、暴走してしまった。
その水晶体を持ち出し、施設内を逃げ回るアケロン火・・・

国防省内で暴れまわるクローンアケロン人。隊員もなすすべなく倒されてしまう。
その騒動のさなか、栞は脱出してクローンアケロン人が落とした水晶体を取り戻す。
当然ソレを取り返そうとするところに、タリアスが駆けつけ守る。
ついでミトラスも加わり、双方の戦いが始まる。
クローンアケロン人へタリアスの回し蹴りが炸裂したところでEND.


【レビュー】

ほぼ唯一の国防省が舞台となった回。
ここでは「軍隊がオーバーテクノロジーを研究、その上で開発された結果物をどう扱うのか」という問題が提示されており
御園木はあくまで異星人と戦うための防衛兵器(ユウヒ)であると主張するが
椿は「国益の為に敵の力すら流用して、最強の兵士(クローンアケロン人)を作る」とやり返す。
この際、地味にダイロギアンとアケロン人という存在が国防省によってコピーまたはクローン化されて扱われている点も面白い。
とは言えまず普通のヒーロー物では出てこないような展開が突如繰り広げられるため
当時観ていた視聴者は戸惑っていたかもしれない。

だがこうしてソフトで通しで見られるようになって改めて見返すと
ヒーローものにしては現実的な部分にもメスを入れた話となっていることが判る。

そして本編でも出てきた沖田の、グランセイザーにやむなく頼らなくてはいけない自分の立場など
子供が見るにはややもすると爽快感にかける話にはなっているものの
こうして国の軍事組織が直接かかわりを見せているという描写は新鮮味がある。
ユウヒへのライセンス供与への話が出る所といい、やや子供には難しい話も出てきているが
グランセイザーという作品の中での国防省の立場を描いているという意味では外せない回だろう。


【特撮の見どころ】

・二度目のクローンアケロン人(初代)との戦いにて、ミトラスのガードの裏から飛び出してバーニングファルコンを撃つタリアス
・ユウヒが格納庫に居るシーン

前者は中々いいコンビネーションの描写。
後者はミニチュアユウヒと格納庫を使用。
ユウヒの活躍は次回以降少しずつ見られるようになるので、まずはこの回で箸休めといったところか。
また見どころに挙げなかったものの、タリアスがクローンアケロン人2号に走りこみながらのパンチを
浴びせるシーンの、拳に纏った炎のエフェクトも中々綺麗。