2015年3月22日日曜日

ジャスティライザー中間総評:ゼネラルバッカス編&カイザーハデス決着

ここでは、「幻星神ジャスティライザー」第十七話~第三十三話までをおさらいしつつ
中間総評を行う。


【新たな幹部・ゼネラルバッカスと謎めいたデモンナイト】

本作第二部と言うべきゼネラルバッカス編だが、本シリーズの中でももっとも多様な敵を取り揃えていた。
女性型、双子、バッカスの友人、そしてデモンナイト。
とりわけデモンナイトに関しては、最初はスパイ活動に、中盤からはグレンとのライバル関係が生じ
そして終盤からはデモンナイト当人の謎が提示されるなど、本シリーズとしては珍しいくらいにキャラクター性ドラマ性を多く盛り込まれた人物でもあった。

しかし一方、ゼネラルバッカス自身については印象がイマイチ。
これは終盤の卑怯な戦い方にも起因しているが、なにより地球破壊作戦を直接指揮していたわけではなく
(バッカスの担当はあくまでジャスティライザー抹殺)
ドクターゾラと比較しても、どうにも敵幹部としてはインパクトに欠ける点が足を引っ張る。
ゾラ自体は途中でパワーアップしたのもあるが、あちらはカイザーハデス復活という明確な目的があったために
まだ敵としては説得力があったが、バッカスに関してはその戦い方などでマイナスが付いてしまったのは否めないだろう。

途中、バッカスが何故かガントに拘ろうとしていた点についてはもうちょっとタメがあったほうが良かったし、もう少しそのへんのドラマは残しておくべきだったとも思う。
一応ジャスティライザーの頭脳的存在であるガントを自分たちの陣営に引き込もうとするのは悪くはない。
具体的には20話がそれだが、前の19話も込みで見るとここで真也が戦いの意思を新たに固める流れとなっており
バッカスの存在意義がそのためのフリにしかなっていない点は残念ではある。

あと数話くらい真也=ガントに拘って、味方に引き込まないにしてもガントを陥れる作戦などがあればとは思ってしまった。


そしてカイザーハデス。
16話かけて復活し、17話かけて撃破されるところまで描かれた彼は、その目的が宇宙の支配。
そのためにはライザー星と地球にある力(地球ではジャスティパワー)を手中に収めること。
というのは三十三話でやっと語られたものである。

それはともかく、何故地球を破壊する必要があったのかは説明されておらず
このあたりの目的に対する手段のチグハグさが、ボスとしては違和感の強い点だ。
ここはグランセイザーでも同様の、構成およびキャラクター造形の甘さが見て取れる。
本作は前作よりはまだ積み重ねという点ではマシなのだから、つくづく惜しいとしか言えない。
#もっとも、終盤になってやっと敵の目的が明らかになるという点については本シリーズに限らずどのヒーロー物でも散見されるのだが・・・。

三十二話でジャスティパワーを手に入れようとしていたのもやや唐突感が強く、
せめてデモンナイトをジャスティパワーの調査員として送り込む設定でも良かったんじゃないかという気もする。
(序盤のデモンナイトは、ジャスティライザーそのもののスパイに過ぎず、ジャスティパワーに関しては無関係)

ダルガ云々については本作の総合総評で述べるつもりなので今はノーコメント。


【ジャスティライザー側のドラマの加速】

敵側が今一歩弱いかわりに、ヒーロー側たるジャスティライザーのほうのドラマはかなり充実した。
翔太とユカ、真也と澪、澪と麗香、そして皆を後ろで見守る源太郎。
さらに翔太、ユカ、真也の三人個人においても周囲の友人、仲間や家族との関わりの描写もあり
ヒーローの友人家族という要素は、他社作品では割合サラっと流す物ではあるものの、本作ではじっくりと個々人のキャラクターを
掘り下げていくように挿入されているため、印象に残りやすい。

とりわけ真也のキャラクター性の変化が、このバッカス編ではじっくり描かれている点が目立つ。
ゾラ編では年長ということもあってか、やや冷静すぎてとっつきにくい人物だったが
澪との関わりと、両親との再会を機に徐々に柔和な方向へ変化していく。
澪と真也の関係の部分だけ見ると、何処となく昭和の香りも漂うのだが
似たような境遇(ただし澪は飛行機事故で両親を喪っている)、歳が近いこともあってか距離は急速に縮まっており
それに呼応してかキャラクターに余裕のようなものが出てきているのが目を引く。

翔太とユカについてはゾラ編であらかた描かれたせいもあってか、その延長線上のキャラクター描写という感じが強いが
三十話にも見られるように、翔太とユカがジャスティライザーとしての使命を受け入れるに至った決意に立ち返る回など
二人で支えあってジャスティライザーとしての戦いを乗り切ろうとする部分も見受けられる。
年齢相応の人物像と、その関係についてはこの二人はよく描けているのだが
ただ、ヒーロー物と恋愛ドラマというのは食い合わせが悪い。
その上、爽やかな青春ドラマ的空気もまとっている翔太とユカであるためか、どうしてもドロドロにもならないわけで
このあたり、放送当時にそれまでのヒーロー物に慣れ親しんでいた年長の視聴者からすると
地味目に映ったり、逆に「こんなの全然面白くない!もっと緊張感とドロドロ、ギスギスがなきゃ!」
と嫌っていた向きも居ただろうことは想像に難くない。

でもこの二人の関係、等身大の高校生って感じでいいと思うんだけどね。
ユカなんかはこの年頃の女子高生って考えたら小生意気な所があっても当たり前だし
翔太の意地っ張りな部分も納得のいくところだが

やっぱりヒーロー物で青春ドラマをやるというのは、配分を考えないと訴求しづらいのか・・・?
他作品はなんとなく雰囲気とちょっとしたエピソード、話の中でほんの少し匂わせ続けるだけで乗り切っちゃうんだけど。


麗香については、ゾラ編では描かれなかった「澪の護衛」という側面が強く打ち出されていく。
これは三十一~三十三話で特に目立つが、ジャスティライザーと同等の能力があるわけでもない麗香なので
やや他のキャラクターに埋もれてしまった感も否めない。

澪はこのバッカス編でようやく自分自身の役割の自覚と、自分自身の別の役割を目指す描写がなされている。
守られるヒロイン的役割を感じさせたゾラ編と比べると、自立的な側面が現れだしており
ここは真也との関わりが、澪のキャラクターにも影響を及ぼしていると言える。

しかし。
自分自身の役割・・・ シロガネへ変化するための力を媒介する存在であることが提示されてからは
それまでの「守られるお姫様」の役割から「敵にとっては一番ジャマな存在」へ変化しているにも関わらず
ここのあたりが今一歩視聴者に訴求できていなかったのは惜しい。
自分に課したもう一つの役割・・・ 真也とともに苦難を乗り越えていきたいという部分も
アッサリ目に描いたせいもあってか、どうにも澪個人のキャラの印象が
「守られるお姫様」からあまり変わってない当時の視聴者も多かっただろう。
#このあたりは印象付けるための演出が出来ていないという側面を感じさせる。他社作品では戦いの最中などにそういったシーンをはさむことで印象付けたりするのだけど。


そしてジャスティライザーたちを後ろから支える存在とも言える源太郎。
特にバッカス編では、翔太とユカ、真也に対しての良きアドバイザーや理解者という部分が強く描かれている。
両親に壁を作る真也に鉄拳を叩き込み
シロガネの力に悩むユカにさりげなく考えるヒントを与え
息子のピンチには身を挺して庇う
これが、あまり上から押し付けるような雰囲気を感じさせない点は演者の中村有志によるところもあるだろうが
源太郎自身が、ヘタに前面に出過ぎない人物像でもあることが大きい。

バックヤードで色々話し合っているジャスティライザーたちを、ドアごしに見守っているのは他でもない源太郎なのだが、
自分の立場というものをよく判っている「大人」なんだろう。
ストーリーやドラマの進行の合間に描かれる伊達電器店社長という側面が一層それを感じさせてくれる。


【ジャスティライザーシロガネ】

本作においては、色々な意味で語られてしまうことの多い「最強のヒーロー」・シロガネ。
本編レビューでも触れているように、時期的には前年の東映作品「爆竜戦隊アバレンジャー」のアバレマックスが直近に居たせいか
その発表当初からなにかと比較され続けてきたのがシロガネだ。
実際、両者ともに同じようなキャラ付けと要素(トーンを落とした口調、ダイノガッツとジャスティパワー)のせいで同一視されがちでもあった。

しかし、二作を見比べたことがあれば判るのだがアバレマックスは変化用の装備を持たないと変化できないのに対して
シロガネは澪(ジャスティクリスタル有)が居ないと変化できない点が異なる。
判り易い部分であるため取り上げるまでもないが、見た目もアバレマックスがアバレッドのリデコに対してシロガネは完全に姿が変わることもあり、要素が似ているだけと言っていい。

そしてなにより、澪自身の体力を著しく消耗するという点が大きな違いだ。
この縛りの為に、アバレマックスはもとよりその他他社作品の最強形態と比べてもシロガネはそれほど頻繁に登場しているわけではない。
後々の話でも判るように、案外グレン・カゲリ・ガントともう一人で対処出来ていることが多いのだ。
#ただし、ジャスティライザー自体がさほど怪人が多くないために登場が少ない印象があるとも言えるが。


そしてジャスティパワーについても、ダイノガッツみたいな「何が起こるか判らない」力と違って
その発現にしろ効果にしろ限定的であることが大きな差異だ。
度々描かれた、澪のピンチにシールドを張る効果とシロガネへの変化くらいしかないのだから。
あとは精々ノルンとの交信くらいだろうか?
もっとも次シリーズからは様々な能力が描かれていったりもするが・・・。


そして最強の幻星神・ジャスティカイザーだが三十三話を見る限りではアッサリとしすぎていてイマイチな感じは否めない。
シロガネの印象に持っていかれがちなのだろうか。


【ウケを狙いすぎる】

本作は、大雑把に分けて第二クールまでの前半と第三クール以降の後半でノリが変わりすぎといわれることがある。
その狭間に、第二十五・二十六話を手がけた脚本家・浦沢義雄の存在が影響しているという論調すらあるが
本作を全部見ていると、実は第九話(オリオン座博士の回)あたりからコミカル色は徐々に出て行きだしている。
#第九話は、超星神シリーズで数少ない全作を手がけた脚本家の河田秀二によるもの。
#河田脚本回はオリオン座博士以外にも超能力青年・武田広之も登場させている点に留意されたい。

とある回での、迷いネコの看板を持ちながら隠れて尾行しようとしているユカや
伊達電器店社員の松平健一など、よくよく考えればギャグ要素は割合ちりばめられているが
どうしても浦沢回の印象に、当時実況しつつ見ていた視聴者などが引きずられ過ぎている感が否めない。

この浦沢脚本については当のスタッフも頭を痛めたことが当時の雑誌「宇宙船」に掲載されたスタッフ日記に書かれているが、
スタッフ日記はこれまた当時はジャスティライザーの助監督である近藤孔明によって書かれている。
その結果としての映像の感想は、本編レビューに譲る。

恐らくは、演出面でコミカルめいた要素が出始めたことに対して「浦沢回の影響」を指摘する当時の年長の視聴者が多いのだろう。
実際、二十七話以降は不必要なまでにウケ狙いの描写が見られるようになっていく。
浦沢脚本との関連性については疑問があるため言及しないが、このウケ狙いの画作りが殺陣にまで波及していっており、正直失敗だったんじゃないのかと思う。


具体的には、二十九話以降ちょくちょく見られる「金的」が、この印象を強くさせる。
確かに下ネタは小さい子供のウケはいいのだが、時と場合という言葉があるように戦闘シーンでこれを導入するのは正直悪手だ。
#別に普通のドラマパートでやればいいというわけじゃないけどね。 ヒーローものだし・・・

当時見ていた年長の視聴者ですら失笑したことを思えば、あまりに安直で酷いネタである。
三十四話以降も、言葉通りに「頭を使う」戦い方をするグレンなど
ウケを優先し過ぎてグダグダになってしまう回も多くなっていくのが、この「金的」導入からだ。

キャラ付けにしても、澪の珍妙な味覚を投入したり
徐々にバカっぽくなっていく翔太など、いまいち突飛な感じも受ける。
後者なんかは特に健一がになっていた部分なのだから、増やす必要は無かったのだが。


【殺陣や特撮はさらに安定】

殺陣に関しては、ゾラ編と比べてもさらに安定感が出始めるものの
本編演出の方向に左右されるのか、場合によってはモタつく回もまだ散見される。
何故かスローモーションになる場面なども、まだバッカス編では見受けられる。

一方でアクロバティックな戦いも取り入れられたりと、殺陣の工夫を入れる余地が出てきだすのもこのバッカス編から。
グランセイザーの時とは違った、言葉通りの組体操的殺陣も見られるようになっていく。
もちろんワイヤーアクションも健在である。

本作は三人のアクション監督による殺陣演出がなされているが
前作では松井哲也氏一人だけだったのに対し今回は川名求己氏と谷垣健治氏が加わっている。
川名氏については経歴不明だが、アクションコーディネイターで活躍しているようだ。
谷垣氏は松井氏同様に香港映画と縁のある人物で、ここ数年で見ても実写映画「るろうに剣心」にも参加していたようである。
というか松井氏と谷垣氏、同じ倉田プロモーションで縁があったのか・・・。


特撮面では、市街地戦や山中、海沿いの3つにシチューエションが絞られていくが
市街地とは言いつつもそのミニチュアの建物を全く別のものにいれかえて差別化を図っていたり
巨大戦も退屈させない工夫は相変わらずだ。
二面作戦を多用することも、より効果を上げている。
瓦礫の下に埋もれている真也と澪を気にして戦いにくいライゼロスなど
ドラマと密接に繋がっている巨大戦が見られるようにもなっている。
こうした構成面の多様性も、グランセイザーから進歩した点であろう。


【中間総評】

ストーリーが単純な分、ドラマで見せる回というのがバッカス編に対する個人的な感想だ。
なにせストーリーと言ってもジャスティライザー抹殺を目的とするバッカスとの戦い以外に大したトピックはない。
後は終盤の、ハデスによる地球破壊計画くらいだがこれはちょっと唐突というか・・・。

その代わり、キャラクターを掘り下げていくというキャラクタードラマに関わる点では進展が見られた。
もっとも他社作品とは違って地味な描かれ方をしているせいもあってか、注目度という点では弱いのが厳しいが・・・。
ドラマを引っ掻き回すキャラや、キャラドラマの点でもインパクトのある展開やネタを使うことのない作品であるが故の欠点ではある。


いずれにせよここでバッカスおよびカイザーハデスは退場。
次回からはいよいよ終盤・魔神ダルガとその幹部との戦いが繰り広げられていくこととなる。