2013年9月18日水曜日

<振り返りレビュー グランセイザー第一部・アケロン人編>


ここからは、第三部となるウォフ・マナフ進攻編を前に
<アケロン人編>と<インパクター編>を各個に纏めて振り返りたい。
まずは表題どおり「アケロン人編」からである。


【グランセイザー同士の戦いが主軸となった第一部】

佐伯カリンに騙され、彼女の指示のまま炎のトライブと戦い
さらには大地のトライブをも仲間に引き込もうと企んでいた風のトライブ達。
カリンが彼等に語った表向きの理由は
「地球平和を乱す、炎のトライブを排除しなくてはならない」というものだったのだがその実
彼女自身が地球侵略を目論んでいたアケロン人であったというのが、第一部のメインの縦軸である。

ある時点まではその主義に疑いも持たずに従っていた風のトライブ達だが
一般人を巻き添えにしてでも炎のトライブを排除しようとするカリンの行動に疑念を持ち出す涼子。
そこから、元々軽いノリで賛同していたような仁も涼子に付いていってしまい
最終的には「地球の平和の為に戦う」と当初からカリンに諭されていた言葉どおりの行動理念を貫く決意をした
洸がカリンからの決別を決意し、こうして9人のグランセイザーが団結したのである。

上記のように、そもそもグランセイザー同士で戦わざるを得なかったのはカリンによる同士討ちの策略に嵌ったからであり
基本的に風のトライブの行動理念として「地球平和のため」という軸はぶれてはいなかった。
しかし一方では・・・


【なし崩し的に地球の平和の為に戦うようになる炎と大地】

この作品のメインチームと言って過言でもない炎のトライブについては、終盤で天馬がリーダーシップのようなものを
取り出すようになったものの、天馬については状況に巻き込まれているだけであり
そもそも「地球の平和の為に戦う」という自覚自体はさほど強く芽生えていない。
未加は早くから覚醒していたため、何処かで風のトライブと戦っていた可能性はあったにせよ
剣はその姉を守る一心により、覚醒に成功したわけで
案外炎のトライブとしての行動理念は、大局的(ここでは地球および人類平和のため)な部分には無いようだ。

これに輪をかけたのが大地のトライブ。
直人は当初「誰が強いかを決めるためにこの力はある」と言い切っていたほどにグランセイザーとしての使命には無頓着。
もっとも、物語を経ても協調性に乏しいあたりは個人主義に陥りやすい格闘家たるゆえんなのだろうか?
豪はグランセイザーとしての使命よりも、いち警官としての使命を優先するような生真面目な性格。
蘭にいたってはグランセイザーである自分については天馬同様あまり深く考えていないように感じられる。


【ヒーローと正義?何それおいしいの?】

「ヒーローというものは、世界平和や人類平和、ひいては地球の平和の為に戦うものである」
という概念で測ってみると、実は一番ヒーローらしい思想で動いていたのが風のトライブということになるのが
なんとも皮肉なところなのだが・・・。 しかも「騙されている」し。

さておいて、この当時の他社番組であれば正義について、人間について、悪についてどうこう長々やりあったり若干くどく描写もしようものだろうが
本作についてはいたって単純で、旧きよき少年漫画的世界で人々の思考が成り立っているような気すらする。
「タイマン張ったらダチじゃい!」
というのは極端だが、あまりクドクド考えずにあっさり打ち解けてしまっているわけである。
このへんが当時は軽すぎて受け付けなかった視聴者も居たのかもしれないが、
あまり正義がどうの、人間はどうのとテーマに縛られなかった分、かえって陽性の物語世界になっているのはもう少し評価されてもいいだろう。

そしてグランセイザーの特徴としては「ほぼ全員が何かしらの職業についている」ことであり
それゆえ彼等の発言にはところどころ年相応の大人らしい態度が散見される。
洸があくまで自分の職能に忠実であろうとする第七話や
済んだことはもういいだろう?とばかりに、それまでのことを水に流して風のトライブを仲間として受け入れる天馬には
大人の余裕のような爽やかさすら感じるのはいささか言いすぎだろうか。


【シリーズのファクター・国防省】

また、日本を軍事力で守る公的機関である国防省の存在は見逃してはいけない。
第一部では御園木が堀口博士に資金援助を行っていたり、
グランセイザーが引き起こした災害を「自然災害」とマスコミへ改変させたり、
世間への話題拡散を未然に防ぎ、影ながら堀口博士をサポートしていたのだが
その真意はグランセイザーの力を日本の防衛に役立てるため、という彼等なりの行動理念があった。

しかし激化するアケロン人との戦いと、実際対峙してもはや国防省だけの問題でなく
地球そのものの問題となっていることを察した御園木は、グランセイザーの力を利用する方向から
むしろグランセイザーと協調して、未知の外敵から日本を守る方向へ考えを変えていったのだ。

本作はオーソドックスなヒーローものと言うにはやや異質な感を受けるのもこの国防省の存在あってのものである。
大きく物語に関わるわけではないが、ややもすると単調になる可能性の強い
「グランセイザーVS外敵異星人」という構図に、若干のスパイスたりえていることは
次のインパクター編以降の物語のかかわり方を見てみるとよく判るのではないだろうか。
そうでなくてもこの第一部においては、第三話の超星神同士の戦いによる山火事を自然現象として処理した点など
国防省の力をそれとなく発揮していることは面白い部分だ。


【ストーリー総評】

この第一部は、カッコイイ言い方をすればまさに「各々の思惑が交錯するまま、戦いの泥沼にはまっていく」のだが
ともすると深刻になりそうな状況を、そうと感じさせずにサラっと描いている点はやや変わった点だろうか。
炎のトライブVS風のトライブなんかももう少しドロドロとなりそうなものだろうし
大地のトライブの扱いも、誰それをどちらの陣営に引き込んだり・・・なんて描写をすれば
さらに混迷の一途となっていけるはずなのだが、実際はそういうドロドロは一切なく
むしろあっけらかんと9人全員がグランセイザーとしての使命・・・「地球の平和を守るために戦う」ところで団結していく点は、
1クールをかけてじっくり描いた団結のドラマと言い切ってもいいのだろう。

その団結の要となった男・天馬はともすると勢いよく喋り、また勢いで行動する故にバカキャラ扱いされることも多いのだが
実際は揉め事の中心になるどころかその仲裁や意見のまとめ役にもなっていく、
まさにリーダー格と見るに相応しい人物としてもう少しまっとうな評価を下してもいいんじゃないかと思う。
そもそもこの作品、キャラクターの部分で語ると天馬以上にアクの強い面々が揃ってるしね・・・。


【特撮評】

巨大戦はその大半が超星神同士の戦いとなったが、中でもはじめて超星神同士の戦いとなった第三話
ガルーダが一方的にやられて中破する第八話、そして最終決戦となった第十二話は
未見の方には充分勧められる出来である。
よく超星神シリーズは他社作品と比して特撮、中でも巨大戦のクオリティは総じて高い、という評価がなされるが
その一端を上述の3話でうかがい知ることが出来るだろう。

しかしVFXやCGモデルもけしてヒケをとるものではなく、ガルーダやドルクルス、クラウドドラゴンのCGモデルが
小気味よく動き、変形を行い、それでいて合成した背景との差も可能な限り違和感を覚えさせない程度に仕上げた点も見逃してはいけない。

合成というと第四話にて、直人が陸橋の上でガルーダとドルクルスの戦いを見つめていたカット。
ここの陸橋の鉄骨と、奥で繰り広げられるガルーダたちの戦いとの合成が実に自然で
当時のテレビ特撮ヒーローものとして考えるとかなりクオリティの高い合成ではないかと思う。
(おそらく今でも通用するんじゃないかと思う程度には違和感が無い合成である)
また、これから先何度も出てくる「超古代文明の戦争をバックに、天馬などメインキャラが思いを馳せる」シーンでも
合成はかなり綺麗であるため、そうした部分も注目してみていただきたい。

ただし、全部が全部良い部分ばかりではない点があり、それらを抜き出すと・・・
第五話の、蘭がパトカーから放り出されるシーンや
第八話にて未加が涼子に放った棒を軸に回転キックを浴びせるカット
そして等身大戦の際に空中でジャンプして戦っている合成シーンなど
いかんせんどうしようもなくクオリティがイマイチなものもあるのは残念ではある。

ただし、そういう無理のあるカットやシーンは徐々に減っていき
なるべく自然な合成が増えていくのは、現場でのノウハウが徐々に蓄積された結果かもしれない。