2014年1月12日日曜日

グランセイザー・第四十七話

第四十七話「滅亡の序曲」
●<グランセイザー>弓道天馬、獅堂未加、獅堂剣、伝通院洸、雨宮涼子、秤谷仁、松坂直人、早乙女蘭、神谷豪、反町誠、魚住愛、三上辰平
○<関係者・ゲストなど>堀口一郎、御園木篤司、沖田総一郎、アケロン人・ルビー
★<敵>ベルゼウス、ブライトン、アルゴウル


<苦悩の蘭>

国防省・統合参謀本部の一室。
前回の襲撃の傷が癒えていない御園木にブライトンは「(その襲撃は)ウォフ・マナフからの警告だ」と言う。
地球総攻撃の準備は整っており、これを止めるには蘭の身柄を明け渡す以外にない。
もはや総攻撃までの時間も2日程度しかない。

御園木が立ち去ってから、ブライトンの前にベルゼウスが現れる。
「交信者」を殺さねば地球を足がかりに全宇宙を支配するという目的が達成されない。
そのためにもすぐに「交信者」を殺せと命ずるベルゼウス。
ウォフ・マナフは全宇宙を支配するための組織なのだろうか?

御園木の部屋では、沖田に蘭の身柄を確保するよう指示する御園木。
その一方で堀口博士が水晶板の分析を行っていた。
蘭をウォフ・マナフに渡さずに済む方法を探しているのだ。

その蘭は街中をさまよっていた。 もうすぐこの街中の人たちも死んでしまう。
懊悩する蘭だったが、ウォフ・マナフのもとへ自分が行くことを決意。
そうして駆け出していくがルビーが立ちはだかり、「決してブライトンのもとに行ってはならない」と警告。
行けば蘭は殺されるというが…。
そこへ洸が現れ、蘭を逃がした後に問答。
ルビーは、自分もウォフ・マナフの一員だがブライトンやベルゼウスとは違う考えであると言う。
蘭を明け渡しても、ベルゼウスたちの地球総攻撃は止まらないと警告し、何処かへ消え去った。

しばらく蘭が駆けて行くとその前にブライトンが現れ、蘭を連れて何処かへ立ち去る。


<蘭一人か、地球の数十億人か>

ある場所まで二人が行くと、前回襲撃したアルゴウルが蘭へ攻撃を仕掛ける。
どうやらウォフ・マナフの総攻撃をダシに蘭を抹殺しようとしているようだ。
そこへ駆けつけた直人と豪だが、アルゴウルの攻撃に一蹴されてしまう。
蘭が装着しようとすると、ブライトンが「ボスキート、装着するのか?そうすれば地球は滅びるぞ」と脅しをかける。
戦意を喪失し、ついには自分の命を差し出そうとする蘭。

アルゴウルの攻撃があたる直前で天馬が救い出し、アルゴウルとの戦いに移る。
さらにブライトンの足元へロギアが銃撃。
一気に分が悪くなったブライトンたちは引き上げていく。

ロギアは、かつて自分を騙したベルゼウスへの復讐のために現れたのだという。
そして、蘭を明け渡せば地球は滅びる…
ルビーと似たようなことを言いながらいずこかヘ消え去るロギア。

いつもの研究室では、博士と未加が水晶板の調査を続けていた。
宇宙から届いている電波を、微弱ながら水晶板が受信していることを突き止めたが
内容までは不明で、蘭さえ来れば恐らく判るはずだと踏んで蘭を探すことになる。

再び国防省、先ほど戦っていた天馬が、いつの間にか戻っていたブライトンへ殴りかかる。
さっきの件についてはシラを切っているブライトンは
蘭を渡せば地球が滅びるというのはデマで、蘭…ボスキートを渡せば地球を救うことが出来る。
ようは以前と変わらないことを主張するのみであった。
もはや総攻撃までの時間はないと、さらにプレッシャーをかけるブライトンだが
天馬のナックルライザーへ未加からの通信が届く。

蘭をなんとしても研究室まで連れて行って欲しい、そう告げられた天馬は剣と落ち合う。
すでに豪たちの手で「安全な場所」へかくまわれているというのだが…。l

警察署の留置所では、その蘭が直人達を相手に取り乱していた。
私一人が死ねば地球が救われるのなら、可能性が1%であろうとそれに賭けると言い、
ウォフ・マナフと対峙する意思はすっかり焼失してしまっていた。
駆けつけた愛もまた、蘭と同じ気持ちだと言い…豪までも蘭の意見に同調してしまう。
大地のトライブの間で既に足並みが乱れつつあった…。


<実力行使>

御園木の部屋で、ブライトンはつぶやく。
私をだました地球人は、好戦的で野蛮な人種である。であれば実力行使もやむを得ない。
そういった次の瞬間、街中で怪獣・トロイアスが現れ暴れだした。

その報せを受けて、留置所から蘭が飛び出していく。
それを止めようとする直人を制止する豪と、蘭を後押しする愛。
この状況を救えるのなら、可能性が少なくてもそれに賭けたい。
自分の命ひとつで仲間も、この地球も救えるのならそうしたいと言う蘭。
一人残された直人は叫ぶ。 何故死に急ぐ、自分の命だろう?

街中を暴れまわる怪獣に対し、先にドルクルスが立ちはだかる。
次いで他のトライブのグランビークルも応援に駆けつけてくる。

街を駆け抜けていく中、アルゴウルと出くわす蘭はその前に自分の命を差し出そうとするが
攻撃を浴びせられる瞬間にルビーが現れ、アルゴウルの攻撃を身代わりに受けてしまう。
そこへタリアス・リオンも加わり蘭殺害を阻止する。

天馬は蘭たちに向かって叫ぶ。 戦いを終わらせたいのはお前たちだけじゃないんだ。
そう言って重態のルビーを担いで駆けていく天馬達。
街中ではドルクルスとトロイアスの戦いが開始されたところでEND.


【レビュー】

蘭を軸に話が進んだ回。
ここでは自分の命ひとつで地球が救われるのならウォフ・マナフへ自分を差し出そうとする蘭と
あくまで自分たちの努力が及ぶかぎりは地球総攻撃を食い止めたいとする博士たちとの対比が描かれる。
ただし、実際に蘭とやりあったのは博士ではなく直人と天馬だったが。
前者にせよ後者にせよ、どちらにしても蘭がキーパーソンとなっていくことがこの回でよりクローズアップされている。
蘭の苦悩も、三クール目あたりから少しずつ積み重ねていた上での描写と考えるとわりと腑に落ちている。

重要な部分は『地球を守るために自分が何をするべきか』という点であり
その意味では蘭と愛・豪や博士と天馬たちの想いは一致している。
この回で問題視されているのは、その想いを完遂するための手段であり
だから直人と蘭による言い争いにも説得力が生じている。

実際は蘭を抹殺するために送り込まれたブライトンが、御園木たちの前では最初から変わらず
「蘭=ボスキートを明け渡せば地球は救われる」という主張を続けている点も見逃せない。
これによって、ブライトン(と、ベルゼウス)の策謀が続いている描写となっており
こうした点は一貫性があると言っていい。

さらにはアケロン人・ルビーやロギアが「蘭をベルゼウスに明け渡せば地球は滅亡する」と、ウォフ・マナフの人間でありながら
地球滅亡への警告を行っている点など、ドラマ的な複雑さを若干匂わせており
この回だけを見ればストーリー的にもドラマ的にも見応えは充分である。

のだが、いま一歩そうした描写の説得力が薄いように感じられるのは
ベルゼウスそのものがぽっと出の悪党であることが原因ではなかろうか。
ボスキートが登場した話のレビューでも書いたが、盛り上がりだけはともかくボスキートやベルゼウスという存在に
いまいち説得力というか、ストーリー上でのアクセントとしては弱く感じられるのは
そこまでの「積み重ね」が無いからと言ってもいいだろう。


【特撮の見どころ】

・ブライトンたちの周りで展開される空間投射型の映像
・消え去るブライトン、アルゴウル
・トロイアスが暴れるシーン

特撮は万遍無い…と思えるが実際はVFXやCGの比率が多い。
ブライトンやトロイアスが消えるシーンのエフェクト、および1カット内での繋がりは違和感が無い。
もっともカメラが引きなので、違和感が薄く感じられるとも言えるが。
瞬時に消える描写を、複数のカットで見せずに1カットの中で見せきるのはいかにも東宝的な「長回し」のなせる業か。

トロイアスが暴れているシーンだが、ここで踏み潰されている1BOXは
単にCG素材を縦に潰しているだけであり、それまでの仕事振りを考えるとあまりに手抜き感が酷い。

そのトロイアスと対峙するドルクルスのシーンは少し目を引くものがあった。
というのも、それまで本作では街中の巨大戦自体が少ないため、建造物とのスケール対比がやや面白いことになっている。
この回のみ、若干トロイアスやドルクルスが小さく感じられる(というより実寸になるべくあわせようとしている)感じを受けた。
それ以外だと他社作品のように、あまり大きさの比率を考えないセット組みが多く
それはそれで巨大なものというインパクトはあるのだが、現実味が薄いという難点もあった。
今回はカメラワークなどで工夫してる面もあるが、比較的現実的なサイズ差を出そうと試みているように感じた。

ただ、それを急にこの回でやっているためか作品全体の印象でいうとチグハグさも否めないのだが。