2015年8月26日水曜日

セイザーX・第二十四話

第二十四話「第四の将軍」

[ネオデスカル:ガレイド]

 演出:米田興弘    脚本:林 民夫


<Xデイ間近>

戦艦内では、由衣がレミーたちにコーヒーを淹れていた。
Xデイが近いとレミー。 そのXデイとは、宇宙海賊がコスモカプセルの力によって地球制圧の願いを叶えた日である。
それが三日後に迫っている。
その日、大艦隊が宇宙から襲来して地球の文明を破壊したと言うが、これが未来で知られている出来事であった。

由衣は、レミーたちが来たのだからその心配はないでしょ?と言うのだが
アドは自分たちが来たことで何かしらの歴史が変わっているなら未来も変わっているはずなのだが、まるで変化が無い。
その変化とは?と由衣が質問するのだが・・・ 存在が消滅するものが現れるだろうとやや奥歯に物の挟まったような言い方をするアド。
何せ歴史を変えた人間は居ないからね、とケインがフォローするとシャークが現れる。
Xデイまであと3日。出撃準備を整えておくようにと伝えた。

しかしこの場に拓人は居なかった。 その拓人は何をしていたのかというと・・・


<過去との出会い>

雷将軍・サンダーラ。
彼女は永い眠りから目覚めたばかり。  そんな彼女が初めて出会ったのは・・・ 拓人。
「地上に出て初めて出会った人が私の運命の人」とする彼女との拓人が出会うまでの流れは――――――


ブレアードは、ドリルアングラーの修理休憩の合間を見計らって黙って安藤家へ侵入。
春子の納豆ご飯のために来たのだがガレージには拓人がいた。
装着してブレアードと戦おうとするのだが、そこへ突如ブレアードにしか聞こえない三味線の音が響く。
音につられて安藤家を後にするブレアード。

一方、ガレイド艦では「未来では既に知られている歴史的事実」に対しての現状を見て
アクアルとサイクリードをなじるグローザ。
今頃12個のコスモカプセルが集まっているはずだというのに・・・。
そんな話の最中、二人の耳には例の三味線の音が響き渡る。グローザを無視して飛び出す二人。


そして。
三将軍たちが合流した先には、サンダーラと先に出会っていた拓人がいた。
サンダーラは語る。 自分は100万年前に地球に居た種族の末裔である。
地下世界から現れたという彼女だが、それについてサイクリードはバーダー艦長から言われていた話を思い出す。

ビオード星と地球の戦いになった際、宇宙海賊の先祖は宇宙へ飛び出した者と、地下へもぐったものに二分された。
その地下世界に潜った側の末裔がサンダーラ。
そして地下と地上を隔てる門。 これは100万年後に開くことになっており今日がまさにその日。
地上に出てきて、初めて出会った人間が運命の人であるという伝説を教えられて育った彼女。
その相手が、偶然出会ってしまった拓人だった。

困り果てて我関せずの態度を取ろうとする拓人だったのだが、サンダーラが腕を掴んで制止。
そこへ、拓人さえ倒せばグローザ達にバカにされずにすむだろうとアクアルが斬りかかる。
続いてサイクリードも混ざる。
不利になるライオを助けるかのようにサンダーラが三味線による音波攻撃で二人を倒してしまう。

そしてそんな戦いをよそに、サンダーラに恋してしまうブレアードだったのだが・・・。


<歴史の再訪>

ガレイド艦へ戻った二人だが、サンダーラのことは全く知らないと言う。
未来においてはサンダーラの存在は何も影響が無かったのだろう。
そして負けて帰ったアクアルへ、グローザはガレイドの炊事係を命じる。 怒り心頭のアクアル。

地上では、拓人を追いかけるサンダーラ。
拓人はコスモカプセルを集めているから忙しいとサンダーラをつっぱねようとする。
そこでサンダーラは、コスモカプセルのありかを知っていると言い拓人の腕を引っ張って連れて行く。
片想いのブレアードも付いていく。


たどり着いた先は、過去にシャークと宗二郎が出会った場所。
と同時にここにサンダーラたちの先祖がかつて住んでいた土地でもあった。
そこへ先ほど拓人の通信を受けたレミーたちも駆けつける。
だが、サンダーラはここに今もカプセルがあると言っていたわけではなかった。過去には存在していたのだが・・・。
彼女は、かつて自分たちの文明や文化がここにあったことを拓人に見せたかったのだと言う。
運命の人へ、自分たちのルーツを教えようという誠実さなのだろう。

カプセル入手に焦るアドたちに、サンダーラへ横恋慕しているブレアードと、自分を運命の人と目しているサンダーラの間に挟まれてうろたえる拓人。
後ろではシャークが、三将軍以外にも居たとは知らなかったとつぶやいていたがそこにジャッカルが現れた。

ガレイド艦では怒りに燃えるアクアルがサイクリードから貰った銃でグローザを撃とうとするが
タイミング悪く地上へ降りられてしまう。
それと同時に最後のコスモカプセルを巡る戦いが始まろうとしていた。


<歴史のひずみ>

ジャッカルと対峙するシャーク。 そこへグローザが現れるが
更に背後からは追ってきたアクアルが銃口をグローザへ向けようとするのだが更にアドとケインが登場、装着して立ち向かう。
恋の怒りをぶつけるブレアードとライオ。
戦いは四面化の様相を呈していた。


激化する戦い。 しかしサンダーラの三味線が戦いの空気を引き裂いた。
彼女は語る。  百万年前の戦争によって地下に潜った自分たちは元々争いを好まないグループだった。
地下で暮らす間、数百万年後には宇宙に散った末裔たちと再会して仲良く暮らせることを願っていた。
それなのに何故未だに争っているのかと、サンダーラは嘆いた。

ライオへ歩み寄ったサンダーラは、ある願いを告げた。それは・・・。


ライオキャリアー内。
拓人がサンダーラと共に暮らすというのならば、最後のコスモカプセルの在処を教えるという。
しかし拓人は、この交換条件に対して難しい顔を浮かべるばかり。
決心がついたなら翌日、二人が出会った湖へ来るようにとサンダーラに言われていたのだが・・・。
煮え切らない拓人に対してシャークは、決断はおまえ次第だと告げる。

とは言うものの、歴史上には残されていない雷将軍が現れたということは、未来は変化しつつあるのではないか。
そうシャークは付け加えた。 神妙な顔をする拓人。

サンダーラの登場は三将軍たちにも思うところがあったようで
サイクリードは誰かを消そうと思うなよ、とアクアルに話す。
そしてサンダーラに恋したブレアードだったが、ジャッカルはサンダーラの三味線を聴いても特になにも感じなかったようだった。


そして翌日。
約束の湖に先に現れたブレアードだったが、後から来た拓人に気づいたサンダーラ。
拓人の答えは
「君と一緒に暮らす」 だった――――――


【レビュー】

第四の将軍・雷将軍サンダーラ登場。 
さらには最後のコスモカプセルの在処がわかろうとしていた回、というのがストーリー上でのポイントであり、かなり大きな動きが見られる。
ここでどちらかがカプセルを全部集めれば、この戦いは終わるのだが
歴史上では地球が制圧されるXデイまであと3日しかない。
そのような逼迫した状況下で現れたサンダーラと初めて出会った拓人との恋?物語が展開される。

サンダーラは地球に残った古代人類の末裔。
彼らは争いを好まない存在だったとはサンダーラが劇中で語っていたが、そんな気質をサンダーラ自身も受け継いでいる。


ここでの「コスモカプセル12個集めるという目的と拓人一人の人生」という図式は、
ヒーローものにありがちな「ヒーロー一人の命を犠牲にしてでも人類世界を救う」というテーマ性をかなり捻って提示したものだろう。
サンダーラと結ばれることを選ぶというだけで地球が救われる。
こう見ると非常にユルい気もするのだが、レミーやケインが言うように拓人の気持ち次第でもあるし
コスモカプセルのために結婚というのも拓人そのものの人生としては物々交換感覚になっているかのようで、当然当人は承服しがたいものだろう。

にもかかわらず終盤、サンダーラと暮らすことを決意する拓人。果たして彼の心中やいかに?


今回序盤でケインが語っていた「歴史を変えたことなんてないから、どうなるかわからないんだ」という言葉はこの後の展開を暗示しているようでもある。


シャークと宗二郎が出会った場所が、過去にサンダーラたちの先祖が生活していた場所というのも、この作品に漂う「過去と現在と未来のリンク」というテーマ性を
しっかり提示しているかのようで、見ていてなるほどと唸る部分だ。
#これはこれでヘタするとこじんまりとしがちな難点こそあるのだが。

サンダーラと一緒に暮らすかどうかという話での、ブレアードやレミーたちを交えた会話もコミカルだが
やっぱり林脚本回では拓人が突っ込み側に回るようで、特に今回はそうした役割が充分生きているのが面白い。
そして戦闘も各人入り乱れての殺陣が展開されているが、判る限りで5組分がそれぞれ戦っている。
実は本シリーズを通してみてもこれほどの規模の混戦は、今回が唯一でもある。

やや短絡感のあるブレアードやアクアルがこの混戦を招く一因となっているのは、ちょっとコミカルではあるがやはり見ごたえはある。


【特撮の見どころ】

・なし

一瞬現れる古代文明の神殿のような石組みのCGくらいしか見る点がない。
本当に一瞬なので、見どころというには・・・。