2015年8月28日金曜日

セイザーX中間総評:ネオデスカル・ガレイド編

ここでは、「超星艦隊セイザーX」第十四話~第二十七話までをおさらいしつつ
中間総評を行う。


【未来からの介入】

今シリーズにおいては2500年の未来で暴れていたネオデスカルが初めて介入してきている。
似たようなネタの作品だと、大体未来側のヒーローと敵はほぼ同時くらいに現代に来るものだが
今作を改めて見ると、デスカルが現代でコスモカプセルを12個集めて地球を制圧しているのが規定路線であったためにあえて今まで介入していなかったとも取れる。

尖兵となったガレイドとグローザだが、グローザは策略家的な一面がある一方で
ガレイドは割合単細胞というか、我侭な面が目立つ。
そんな彼らだが、アクアルたち三将軍に関しては「彼らがもしやられたりしたら我々の未来が変わる可能性がある」ということで、あまり積極的に前に出したがらなかったようだ。
#実際はアクアルがグローザを無視して出て行ったりするのだが。

ここでのアクアルは、デスカルが無くなったこともあってか自らが宇宙海賊のボスであろうと
主導権をにぎるべく躍起になりつつ空回りしている所が目立つ。
野心家的な側面が出てきていたが故にグローザとガレイドの二人とは衝突が絶えなかったアクアル。
一方のサイクリードは、やっぱり宇宙に帰りたがったりますます戦いに消極的になっていったのだが
このあたりの落差も面白い点だ。
ただし、次シリーズで彼は・・・。


そしてブレアード。
当初からネオデスカルの面々とソリの合わない彼は、安藤家の居候を経てネオデスカル尖兵だったはずのジャッカルと手を組むことに。

新しい(というよりセイザーXが本来対処するべき)敵・ネオデスカルとの戦いが始まっていくが
その様相は「先祖を侮る未来人」による不協和音に彩られていたものであった。

またカプセル争奪戦も人質を二度にわたって取るなど、デスカル三将軍がやらなかったシビアな手段を躊躇無く採るなどしており
ネオデスカル側も自分たちの時代を「守る」ために必死に戦っていることがうかがい知れる。


【地球制圧の真相】

ブレアードによって語られた、未来に至るまでの災禍の発端が語られたのが今シリーズ。
アドの星であるビオード星が、現代から百万年前の過去に地球を襲撃。
その結果、当時の地球人は滅亡したと思われたが宇宙へ逃げた一団と
地下へ逃れた一団に二分していくこととなる。
#地下のくだりはサンダーラ登場時に語られる。

ブレアードたち三将軍はその宇宙へ逃れた側の末裔である。
そんなブレアードたちが地球に拘っていたのは、かつて自分たちの祖先が暮らしていた地球への憧憬という部分もあった。
もっともその拘りは回を重ねるごとに薄らいでいくが。

この話が出てきたのが十八話。アドはショックで戦意喪失するが
ケインとは少し変わった形で地球人の生活に触れ、再度戦う決意を取り戻すのが十九話だ。

この地球制圧の真相、という部分はどことなくグランセイザーの
「ウォフ・マナフによる地球滅亡の真相」を思い起こさせるものがある。
超星神シリーズはストーリーの発端の真相を描くという展開が多いのも特色と言えよう。
ストーリーの前提条件に対して途中で転回してしまうということなのだが、
これの難点は「しっかり全話見てないといまいち付いて行けない」というところか。

個人的には「超星神シリーズはドラマを捨ててでもストーリーで見せようとする」という印象が少しあるが
その判断理由がこういう部分にある。
#そして個人的に惹かれたり、今思うとこれこそ差別化だと言える美点がこれでもある。
#もっともジャスティライザーだけはストーリーを捨ててしまっていたが・・・。


【ジャッカルとシャーク、そしてブレアード】

今シリーズから合流したシャーク隊長。
彼は前シリーズを見ていたら推察できるが、もとはネオデスカルの技術者だった。
当然地球をはじめ宇宙全域制圧を使命としているのだが
1960年に宗二郎と出会って地球人とふれあう中で心境が変化。
コスモカプセルの力で自分の時代に戻ってからは対ネオデスカル連合組織を結成。
ビオード星や同盟星のラディ星などと連携してネオデスカルと対峙する道を選んだ。

しかし一方、1960年の地球へはシャークと共に同じ宇宙船で現れていた男がいた。
それがジャッカル。
その当時は不時着のショックで重傷を負ったためにコールドスリープによって眠らされていたジャッカル。
これは第八話でも言及された通り。
しかし、未来に戻ってからはジャッカルに無断でネオデスカルを離脱。
これが二人の関係が決定的にこじれる原因となった。

第二十六話でブレアードを挟んでの対話。
ここでシャークは「ジャッカルも連れて行けば同じ裏切り者として追われることになる」と
ようやくジャッカルに真意を直接伝えることとなった。
しかし、それでジャッカルが納得できたのかと言えばそうでもなかったようで
「俺にはこれしか道が無いんだ」と絶叫してシャークと渡り合う道を選んだ。

そして、ジャッカルは親友シャークの手にかかって死んだ。
これはこれで本望だったのかも知れない。
シャーク自身もまた、ジャッカルへ思うところはあったのだが・・・
シャークしか見ていなかったジャッカルと、宇宙の未来を見据えていたシャークの、その意識の差を思うと
どのみち決定的な決裂は避けられなかったんじゃないだろうかと思う。
#本編レビューでも書いたが、こういう二人の間柄ならこのネタは他社作品などなら途中で味方になりそうだと思えるし
#現に当時もそういう予測はあったのだが、結果は悲しい結末となる。
#グランセイザー風の装着、自前の戦艦とヒーロー的要素はあっただけに。

ただ、ジャッカル当人のドラマというか人となりの提示は薄いのがネックかなとも思った。


一方ブレアード。
デスカル消滅後、ネオデスカルへ組する気にもなれず、かといってセイザーXへ合流もなんだか違うという彼は
今シリーズではジャッカルとのタッグで動くことになる。
彼もまた、後で述べる拓人同様にその人間性が揺れ動き、変化が生じていく。
安藤家では春子たちと接する中で家族のありがたみと、暖かさに触れた。
サンダーラとの出会いは彼にとっては悲運であったが、人を好きになる気持ちを覚えたことで
今までのガサツな暴れん坊かつ寂しがりな性格が変わっていった。

それは前述のジャッカルの最終決戦前、ジャッカルからの問い・・・「何のために戦っている?」に対して
「わからなくなった」と答えたところが象徴的だ。
単純な理由・・・ 戦いたいから戦う というような性質もあったブレアード。
父であり神であったバーダー艦長亡き後は個人的に拓人を付けねらうことにしたはずだったのだが、今シリーズでこのような発言が出てくるところまで
ブレアード自身にも様々なドラマが生まれては過ぎていったのである。

実はブレアード、拓人に対して様々な忠告を行ったり、仲のいい友達のように落ち込んだ時に話に付き合ってあげるなどするようになったのも今シリーズから。
サンダーラが帰っていってからの二人の会話が、しみじみ切ないが暖かい気持ちにさせてくれる。


【戦い続けることへの疑問・セイザーX編】

※総評のほうが適切か?と思ったが、この項でのテーマは改めて別更新で考察を述べたい。

第二十四、二十五話に現れた雷将軍サンダーラ。
彼女との出会いと別れによって拓人の心情や性質が更に変化していく。
第二十六話でG2に突っ込まれていた、戦わずに済む方法を考えるようになっていたのがそれだが
実は今作だけで見ると、デスカル編ラスト近辺でアドが「宇宙海賊さえ地球から出て行ってくれればいい」と話していたように
「戦わなくても未来を変えられる可能性」という点は割と最初から提示されていた。

・三将軍が地球に干渉しないこと
・コスモカプセルを先に12個集めて願いをかなえること

この二点のいずれかを実現させれば未来が変わる。 これは視聴者から見ても判るポイントである。

途中でサイクリードもブレアードも宇宙へ帰ろうと言い出したりするあたり、アクアル以外は
既に地球制圧に大して関心がないことも伺えるのが今シリーズでもある。
もっともアクアル自身はたんなる出世欲以上のものが見えないため、やりようによっては
地球に干渉させずに彼女の思うようにさせられることすら可能でもあるが。


そして拓人自身もサンダーラの出会いで心情が変化した、というふうに冒頭で書いたが
実は拓人もそれ以前からブレアードたちが出て行けばいいじゃん!と言及するなど
やはりセイザーX側(特に拓人)でも戦わずに済む方向で考えているらしいことが伺える。


こういった点を見ると、実は前二作でも終盤ないし中盤から出ていた要素・・・
「戦いを速やかに終わらせる道」という考えが、比較的序盤から出てきていることに気づく。
グランセイザーでは終盤、ジャスティライザーでは中盤のみに出てきたこの考え。

現にグランセイザーは「ウォフ・マナフの大船団との直接対決を避けるために、戦う意思を自ら放棄した」という決着がなされた。
#実際は地球侵攻を企図したベルゼウスの一味だけはグランセイザー自らが排除。
#残されたベルゼウスだけはロギアが裁判にかけるべくウォフ・マナフへ連行した。
そしてジャスティライザーに関しては「ハデスとダルガが戦いをとめないのなら、シロガネに頼ってでも全力で速やかに排除する」という考えにシフト。

ジャスティライザーは論外として、グランセイザーがこうした特異なラストを飾ってみせた
超星神シリーズ特有の「戦いを続けずに、戦いを終わらせる」という考えがセイザーXでも見られるが
特にガレイド編では平和主義者のサンダーラによって、拓人の意識がもっと変化していくこととなっていく。

戦わないで状況を穏やかに解決する道。
この思考によって次シリーズから拓人が更に変化していくのだが、その大きな節目はサンダーラにあると言ってもいい。


【キャラドラマが深まる】

拓人やブレアードの変化ばかり挙げたが、ほかの面々にも変化や新たな一面の発見はある。

アドに関しては前シリーズでは地球人のことを侮蔑までしていたにもかかわらず
十八、十九話を経て「地球人とは距離を置くが、今は地球の未来のために戦う」という心境にまで変化。
それに至った事件があってのことでもある。 

ケインについてはそれほど大きく変わっていないが、上記のアドが落ち込んで居た時
自分が地球人を助けようと思った理屈として「自分の中で地球人をよく理解しないと僕は戦えなかった」として、ケインの人物描写に深みが加わっている。
ケインの人の良さが伺えるセリフだが、それゆえ二十話ではグローザにつけこまれる一幕もあった。

レミーも拓人との関わりには苦心しており、毎回口げんかが絶えない。
艦長としての自覚が薄いことを嘆いた第二十三話だが、結局は未熟な拓人をサポートしていくという立場をそのまま続けていくことがうかがえた。
これは同じく副官であるゴルドやツインセイザーとの対比という一面もある。
ツインセイザーといえば実はガス状の生命体であることがわかるのも二十三話である。

こうしてみると今シリーズに限ってはゴルドの影が薄く見えるが、彼に関しては次シリーズからある人物によって
様々な面が語られることになっていく。


【さらなる特撮のテンションアップ】

デスバー戦、ドリルアングラー戦、ゴード戦、そしてガレオキング戦と
巨大戦に関してはオススメできる回が出揃った。
デスバー戦では故障したグレートライオにもぐりこむグローザとブレアードという展開が、
ドリルアングラーの白兵戦主体のバトル、
ゴード戦での大混戦、そしてガレオキング戦での三大流星神揃い踏みと
巨大戦だけでもトピックに事欠かない。

ここまで巨大戦で見る点が増えたのは、グランセイザーの第一部・第二部以来といっていい。
実は巨大戦の頻度自体は一度ジャスティライザーで増え、それはセイザーXでも頻度の多さは継続していたものだったが
そのジャスティライザーと比べるとシチュエーションは更に広がった上に
前二作と違って「混戦」を描くようになったのが今作の今シリーズ。
ゴード戦である二十五話と、ガレオキング戦の二十七話はオススメできる。
あとはドリルアングラー初変形回である第二十二話も良い。
ジャスティライザーでは淡白な戦闘が目立っていたものの、本作ではグランセイザーを更に進歩させたかのような迫力に満ちた戦闘が多いのも特色だ。


合成も、やはり前二作のノウハウは着実に積み重なっているようで
無茶な合成はほとんど見られなくなったといって良い。
端末モニタへの映像合成などは相変わらず違和感が無いし、VFXも文句を言いたくなるようなものはほぼない。
まあ、CGモデルがちょっと質感不足か?と思う回はいくつか散見されたが・・・。


【殺陣も試行錯誤が実ってくる】

プロレスの技が入り込んだり、ガイファードを彷彿とさせるようなフェイントの多用に
多方面の戦いに対してのスマートな受け流し、そして二十四話でちらっと見られた混戦など
ヒーローの殺陣に関しても更に変化・洗練がなされていった。
ワイヤーアクションも実はナリを潜めているのだが、これも演出上の必要によっての結果だろう。
インパクトはあるが明らかにスピード感に欠けることが多いワイヤーアクションを減らしたのは英断といっていい。


【中間総評として】

第二部であるガレイド編もまた、ストーリー面・ドラマ面両方において注目点が増えたと同時に
複雑さを伴ってきたというのが今回の感想。
とはいえドラマ面の複雑さを担ったブレアードとジャッカルはここでジャッカルが退場することで
ブレアード自身が再度フラフラしていくと見せかけ、次シリーズでは・・・。
そういうわけで、次シリーズではこの複雑さは少し緩和されていくことになる。
ただし、本当に少しなのだが。