2015年8月26日水曜日

セイザーX・第二十五話

第二十五話「変わり始めた歴史」

[ネオデスカル:ガレイド]

 演出:米田興弘    脚本:林 民夫


<嘘では未来は拓けない>

前回からの続き。
サンダーラと共に暮らすことを約束した拓人。
愕然とするブレアードは、サンダーラを託すと拓人に告げた。 しかし・・・
サンダーラは、好きでもない私とどうして暮らそうと言うのか?と訝しがる。
拓人の本当の気持ちが欲しかった。 そう寂しげにつぶやく。
そして拓人の真意がコスモカプセルにあることを見抜いていた彼女は、それなら力ずくで奪えばいいと
湖の底から雷神ゴードを呼び寄せる。

と同時にセイザーXもネオガレイドもある反応を察知した。
それは、ゴードの中にあるコスモカプセル反応。
ライオキャリアーに転送された拓人は言う。

雷神ゴードは、地下に潜ったサンダーラの先祖たちの守り神。
そしてコスモカプセル自体は、彼らの所有物であった。
カプセルは自分たちの元に戻る習性があったのだが、地下に閉じ込められている以上手元には戻れない。
外からは扉は開かないため、地下へ入り込めないカプセル。
それがゴードの体内に入り込んでいったのだとサンダーラ。


説明をききおえた一同。 とにかくこれで全部発見したことでいよいよカプセルを手に入れる最終段階へ移行。
グレートライオでゴードに対応し、アドルイーグルとビートバイザーは援護するようシャークが指示。
四人一斉に装着し、いよいよ最後のカプセルへ手が伸びかかったセイザーX。

しかし。
そこへガレイド艦が登場しグレートライオとゴードを攻撃。
形勢不利となりかかった時、シャークリーガーがグレートライオに協力。アドルイーグルとビートバイザーはガレイド艦へ向かう。
さらにドリルアングラーが現れシャークリーガーと戦いだす。
ここに巨大な混戦が幕を開ける。


<本当の気持ちでないと未来は拓けない>

地上ではこの戦い模様を悲しげに見つめるサンダーラ。
コスモカプセルがあるから争いが止まらないんだと嘆く。

ハウリングクラッシュを当てたのに全く歯が立たない。ますます抵抗を強めるゴード。
ライオがこんなことしてちゃダメなんだと苛立つ。
別の方法があるはずとレミーに告げると、突如ライオキャリアーと分離し、地上へ戻る拓人。
拓人は改めてサンダーラを説得しようとしていた。


自分の気持ちを偽ってまでカプセルを得ようとしてた拓人。
しかしカプセルが欲しい理由は、自分の時代を捨ててまで現代にやってきて、未来を変えようと戦っている仲間たちを思ったから。
その中には故郷の星を喪った人間も居る。
仲間のことばかりを考えてサンダーラの気持ちを全く無視していたことを詫びる拓人。

守るもののために戦っているゴードには勝てない。そう悟った拓人。
そして、サンダーラを好きになるように努力するよと告げた。
人を好きになることくらい、戦っている仲間のことを思えばどうってことはない。
そこまで聞いたサンダーラは、拓人を正直な人だと言った。


拓人の説得を待つセイザーXだが、もう持たない。
しかしレミーは信じて待てと一同を励ます。 しかし。
ライオキャリアーはガレイド艦によりダメージを負ってしまう。
さらにゴードが攻撃を浴びせようとするが、それは間一髪でかわしたライオキャリアー。
背後にいたガレイド艦が吹き飛ばされた。

だがライオキャリアーは制御不能状態。ゴードの真正面を飛行していた。
次は避けられないだろう。
その時――――――
サンダーラの三味線が響き、ゴードの動きを止めた。
さらにゴードの腹からコスモカプセル・マンティス11を放出させ、手元へ。
ゴードは湖へ引き返す。


地上へ転送されたグローザたち。続いてレミーたちも現れる。
故郷の星を喪ってでも戦うレミー。自分たちの使命は未来を変えることだから戦える。
グローザにはそれが理解できなかった。


<変わっていく未来>

一方湖では、サンダーラが拓人にコスモカプセルを渡す。
そして拓人に別れを告げた。
先ほどの拓人の言葉に対してサンダーラは答える。
仲間達のために、好きでもない自分と一緒になろうという拓人の気持ちに感動しただけである。
地下の扉はもうすぐ閉まるが、次に開くのも百万年後。
その頃には自分たちの子孫が、きっと争いのない世界で再会できたならそれが一番なんだ。

人を好きになる。 それは努力することじゃない。
運命の人を子供の頃から待ちわびていたサンダーラだったが、その別れは切ないものとなった。
そしてブレアードがサンダーラと一緒になろうと言いよるのだが・・・。
ブレアードの気持ちは恋であって、私が好きなのは拓人のように他人を思いやる優しい心なんだと
その求愛を拒むサンダーラ。

しかし、そんなブレアードの恋心を知っているサンダーラは形見として三味線を手渡して湖へと帰っていく。
次に扉が開くのは百万年後。
拓人と逢えて良かったと言い残して、湖の中へ消えていくサンダーラ。


そして戦いの最中。
グローザの背後からはアクアルが遂にグローザを撃つ。
すると・・・    体が徐々に消滅していくグローザ。
セイザーXたちも見つめる中の異変。 一体どういうわけで!?


ガレイド艦へ戻っていたアクアルは、自分がネオデスカルを乗っ取ると言い
背後からガレイドを先ほどの銃で撃つのだが、ガレイドにはまったく通じていなかった。
そんな中未来からガレイドへ通信が入る。

同じタイミングでセイザーXも、トビーからの通信を受ける。
ネオデスカル内部で何かしらの異変が発生しているが、何があったんだ?と切羽詰った表情で語るのだが・・・。
シャークが話し出した。
本来の歴史であれば、サンダーラはブレアードと結ばれた上にコスモカプセルを全て入手。
そしてXデイを迎えるという筋書きになったはず。
しかし、実際は拓人と出会った上に地下へ帰っていったサンダーラ。


これによって歴史が変わり始めた。
グローザが消滅したのは、そのサンダーラが帰っていったから。
どうやら同様の現象が未来のネオデスカルでも発生したようだ。
愕然として通信の声に頭を垂れるガレイド。

セイザーXの面々は、シャークの説明を聞いたあとで消滅したグローザについて考えていた。
恐らくサンダーラの末裔だった彼女は、サンダーラが地下に帰ったこととコスモカプセルが拓人の手に渡ったという二つの要因で消えてしまったのだろう。
しかし未来でサンダーラの存在が知られていないわけが判らない。
シャークが、まだ争いばかりの地上に絶望して、地下へ戻っていったからではないかと推察する。
いずれにしても拓人とサンダーラの恋物語が、未来を変えてしまったことに違いは無い。


サンダーラの現れた湖のほとりでは、音の外れた三味線をブレアードが弾いている。
拓人が、サンダーラが帰ると言い出したときに本気で暮らしてもいいかなと思った、と話す。
ブレアードはそれに、もう遅いよ。仕方ないだ・・・ と、サンダーラの口真似で返した。


ガレイド艦では、未来からの通信により決戦を決意するガレイドが居た。
しかしこの未来の通信、声の主は誰なのか?
そしてセイザーXも、いよいよ決戦が近づいたことを察する。

Xデイ、あと1日。

【コスモカプセル入手状況】
セイザーX:9     ネオデスカル:3    


【レビュー】

サンダーラ退場。
それだけで大体説明出来るが、これがかなり大きな出来事になっていることは終盤の展開を見れば判る。
今回は完全に巨大戦が食われているがそれはしょうがない。
何せサンダーラが本来の歴史どおりにブレアードと結ばれないどころか拓人に惚れてしまった上に
結局悲恋のまま帰っていってしまったのだから。
これによってサンダーラの末裔であるグローザおよび、同じような雷属性の末裔が消滅していくこととなった。

未来のネオデスカルではガレイドの上司と思しき存在が叱責、次回からはいよいよ最終決戦となる。
実に文句の無い盛り上がりを見せ付けてくれるのが今回と前回の二回だ。


ちょっと余計かな?と思った箇所としては拓人が巨大戦の最中にサンダーラに謝ってからの会話。
「君を好きになるように努力するよ」からのくだりに違和感を覚えた。
巨大戦前にサンダーラは「拓人の本当の気持ちが欲しい」と言っていたので、その後の謝罪の中にあった会話で全て説明できているはず。
なので余計なセリフのように感じた。

感じたのだが、実はこの発言自体は拓人自身の持ったもう一つのテーマにも若干関わっているセリフでもあると今にして思う。
それは最終回まで明らかにされない部分でもあるが、こうして見返すとなるほどしっかりキャラクタードラマとしてだけでなく
キャラクターの持ったテーマ自体もしっかり提示していることがわかる。


そしてこの言葉を受けたサンダーラ。
見方によっては「世間知らずのお嬢様」風味のある彼女だが、それゆえか人を想うという気持ちに対しては純粋なくらいに敏感である。
人を好きになるということは努力することではない。
これが拓人に対しての切ないカウンターになっていた。

そしてブレアードに対しても「自分を想ってくれるその気持ちは恋に過ぎない」とばかりに拒絶。
このあたりは流石に恋愛に対して色々経験した人間じゃないと判り難いかもしれない。
ここは一見、サンダーラも拓人に恋をしているのにこの拒絶はおかしいとも思うが
まあ、男と女で恋という概念が違う・・・ ということで説明できるんだろうか。
#さらに終盤、拓人とブレアードが語らっていたシーンでの会話を見るとまだちょっと拓人の変化は見られないようだが
#これも拓人自身の変化へのフリとなろう。

この回の感想は、子供には微妙に判り難い部分が目立つがきっとそれなりにメッセージは伝わっているかもしれない。
それこそ、この番組を最後まで見た子供たちが、そのような人生経験を経て見返すことを祈るしかないが・・・。


ちなみに演出上で一つ、地味に前二作とは違うものが今回から見られる。
それは四人揃っての「セイザーX!」という掛け声。
各々戦艦内に居るため四分割画面での名乗りであった。
実は三作中、戦隊シリーズのようにヒーロー全員で名乗ったのはこの回が初めてである。
当時から(差別化の意味もこめて)これはやらないほうが・・・とは思っていた演出だったのだが、やっぱり今見てもうーん・・・と思った。
なお次回はシャーク抜きで、まさに戦隊シリーズのようにポーズをつけて名乗るカットも出てくる。
#次回は奇しくも戦隊シリーズを演出した経験のある舞原監督回でもある。

とは言うものの、実は今回含む三回分でこの名乗りがエスカレートしていくところは注目していいかもしれない。


【特撮の見どころ】

・雷神ゴード登場
・三つの戦いが入り乱れる巨大戦

巨大戦のトピックとしては、守るために戦うが故に強力な力を持つゴードが目を引く。
大映映画「大魔神」を髣髴とさせるデザインのゴードは、その登場も若干オマージュを感じさせる。
川北なりの遊びの部分もあるのだろうか。
湖を割って登場するカットがそれであるが、この湖のカットはCGによるもの。
直後のグレートライオなどとの戦闘で移る湖は実物の水。
セットの中に小さいプールを組んでの撮影だろう。

.さらにシャークリーガーとドリルアングラーが入り乱れた巨大戦では、ガレイド艦まで混ざっているため
文字通りの混戦が展開されている。
ガレイド艦の攻撃がゴードやグレートライオに飛んでいったり
ドリルアングラーの攻撃をシャークリーガーがかわすと背後にいたゴードに当たり、体勢を整えなおしたシャークリーガーの背中にゴードが切りつけたりと
特撮班のテンションも高いことが伺える。

ゴード自体、グレートライオとの戦いでは右手の剣を受けられたら空いた左腕でグレートライオの腹部にボディブローを叩き込むなど
かなり現実的でいやらしい戦い方を見せていることが特徴的でもある。
あまり他の巨大特撮では見ないような戦い方を見せていることも特筆していいと思う。


後半、ガレイド艦の攻撃でコントロール不能になったライオキャリアーがゴードへ飛んでいくカットは
ライオキャリアー背面主観による映像。
中々緊迫感のあるいい画だ。