2013年11月21日木曜日

グランセイザー・第三十五話

第三十五話「ダンシング・ドリーム」
●<グランセイザー>弓道天馬、獅堂未加、伝通院洸、雨宮涼子、早乙女蘭、魚住愛
○<関係者・ゲストなど>堀口一郎、(蘭のダンス仲間)ユーコ、シンジ、カナ、トオル、タク
★<敵>ガダル星人


【蘭個人エピソード回】

<夢へのステップ>

OP前~後にかけて蘭とそのダンス仲間であるユーコたちによる
ダンスの練習が行われている。
それを見つめる謎の異星人。
練習後、ユーコと蘭が語らっている。渡米してニューヨークの一流プロデューサーの前でダンスを見てもらおうというユーコは
その旅に蘭も一緒に連れて行こうと誘うのだが、蘭はそれを聞いて少し戸惑う。
ユーコはアメリカでプロのダンサーとして、蘭と一緒にユニットを組んで活躍したいという夢を持っていた。

その一方、先ほど判れたダンス仲間・シンジが異星人によって拉致されてしまう。

いつもの研究室。女性陣が蘭の話を聞き、夢をかなえるために渡米するべきでは?と勧める。
蘭自身はそれどころじゃないと乗り気じゃないのだが、夢を諦めるべきじゃないと諭す愛と
渡米してオーディションを受けに行けばいいじゃないかと勧める涼子。

グランセイザーとしての使命がある以上、夢も恋も諦めなくては・・・と曇る蘭に
「自分の人生なのだから、自分で決めるべきだ」と涼子は言う。
私たちは、グランセイザーの奴隷じゃないのだからとも。
一人、現実と理想のハザマでゆれる蘭。

天馬と未加の会話。 天馬にも夢があったのだと言う。
プロのオートバイレーサーになって、世界で活躍したいという夢。
そんな若者達が、グランセイザーになったことで夢への道から逸れたことに責任を感じるような発言をする堀口博士に
未加は、グランセイザーになったことで得たものもあると返す。
(グランセイザーに)なっちゃった以上はベストを尽くさなきゃなぁと言う天馬とそれに頷く博士を見て
「蘭もこれくらいシンプルならいいのに」とぼやく未加だった。


<アクシデント>

翌日。 蘭に昨日からシンジが見当たらないと話をするユーコ。
シンジのアパート前まで来ると、部屋からシンジが出てくるのだが
何にも注意を向けずに何処かへ去っていく。
そのシンジを追っていると、途中で異星人と遭遇。
装着しようとするが後ろにユーコが居るために躊躇した蘭は、異星人の攻撃を受ける一方。
木材の立てかけてある場所へたたきつけられた蘭。倒れてくる木材の下敷きになるところをユーコがかばい、身代わりになってしまう。
そこへ天馬が駆けつけ異星人と対峙。 名前をガダル星人と名乗った。
遊んでいる暇はない、と飛び道具を使い牽制ののちに逃亡。

洸の勤める病院。
身代わりになったユーコは靭帯を損傷し、歩行に障害が残る恐れがあると蘭たちに伝える。
キズが完治するまでが三週間。 そこから様子を見てリハビリを始めるにしても
ダンスを踊るのはムリかもしれないと洸が告げる。

蘭は苦悩する。ユーコの夢を奪ったと思いつめる彼女へ
皆は励まし、そしてガダル星人の調査からは蘭を外してユーコのもとについてやるように促す。

病院屋上。
思いつめた顔を見せるユーコに、蘭はまだ脚がダメになったわけじゃないのに諦めちゃいけない、
今までのユーコの努力を語り慰める蘭であった。
病院食堂で、愛や洸に自分の苦悩も吐き出す蘭。
洸は言う。 迷っているということは、答えを見失ってしまった時。
どうすればいいかは、自分達がいちばん良く判っているんじゃないか、と。

ダンスの練習場。 ダンス仲間のカナと蘭が落ち合うが
ほかの仲間たちも見かけなくなったとカナの口から聞かされる蘭。
そのカナに家に帰るよう促すと、ほかの仲間たちを助けるために立ち去る。
一方の病室では、蘭の言葉に悩むユーコの姿が。 しかしその時、シンジが現れ・・・。


<さらなる異変>

涼子と落ち合う蘭。ほかの仲間たちもいなくなったことを告げ、捜索に合流しようとした矢先
光のネットに捕縛され身動きが取れなくなる涼子と蘭。
緊急信号により未加と天馬に自分たちの危機を伝えることに成功はするが、涼子と蘭は捕らえられてしまった。

ある施設。 一室に連れて行かれる二人はそこでガダル星人と遭遇。
シンジたちを拉致し、操っていたのはガダル星人だった。
ガダル星人は言う。 ウォフ・マナフからの依頼により地球人の再利用の為に標本を集めていると。
その再利用とは、ギグファイターに変わる生物兵器を作り出し、商品化しようと目論んでいる。
いわば宇宙の武器商人といったところだ。
ウォフ・マナフの企む地球人抹殺と、自身の利益と利害関係が一致したようである。

その標本と呼ばれた人間に、インプラントと言われた物体を埋め込むことでガダル星人の意のままに操らることが可能となる。
既にシンジには埋め込まれており、先ほどのぼんやりした行動にも合点が行く。
続いてユーコへ埋め込もうとしたとき、天馬と未加が乗り込んで食い止める。

ガダル星人が逃げ出すが、敷地外で天馬に足止めを喰らい、戦闘開始。
タリアスへギグファイターをけしかけ一人脱出を試みるガダル星人だがしばらく後にまた捕捉される。
ギグファイターをまたけしかけ再度逃げ出すが、今度はレムルズが合流しその場を引き受ける。
ガダル星人へたちはだかったのはヴィジュエル。
ついに戦いを決心し立ち向かうもタリアスもそこへ合流、二人の必殺技を喰らい死亡する。

戦後。 ユーコにもう一緒にダンスできないと告白する蘭。
ユーコたちがダンスできるように、戦わなくてはならなくなったと告げた蘭にユーコは
蘭はいつどこでも蘭なんだ、私の一番大事な友達なんだからと答える。

後日、病室で歩行練習をしているユーコを見つける蘭。
脚や腕の筋肉が衰えるとダンスに支障をきたすから、一日でも速く踊れるように。
そして、もう一度自分の夢をかなえるために頑張ると蘭に約束する。
いつかまた戦わずにすむときが来る。そしてまた一緒にダンスできる日がくる。
ユーコの言葉を聞いた蘭に笑みがこぼれ、握手を交わしてEND.


【レビュー】

蘭エピソード回。 自分のダンサーになろうという夢と、グランセイザーとして戦わなければならない現実
その間で揺れ動く蘭は、今回のテーマをもそのまま体現している。
既に夢を叶えた愛(看護士)と、かつて自分のやりたいことを途中で放棄してしまった涼子(ボランティア活動)の
二人がそれぞれに蘭を励ます前半は、グランセイザーの使命を前に夢を諦めている蘭にとっては
少しばかりの光明となり、さらに後半のユーコからの「戦いが終わったら、また一緒にダンスしようよ」
という言葉にようやく蘭の悩みも吹っ切れたような表情が浮かぶ。

以前、別の回のレビューでも述べたが本作は既に職業を持った大人が大多数を占めており
その中でも元々やりたいことがあった涼子や天馬を除いては全員なりたいものになったようである。
それゆえ、今回の洸の蘭へのアドバイスなどは説得力を備えており
その説得力の部分は、ややもすると同じようなシチュエーションでは観念的になりがちな従来のヒーロー物の
登場人物のセリフからはややかけ離れたものがあり、新鮮味がある。
ただ頑張ればいいというものではなく、真正面からぶつかればいいわけでもない。
本当に悩みを解消させようと思えば、時間も手間もかかるがその悩みの中心を納得のいく形で解消させなくては意味がない。
今回においては、蘭も後半決意したようにグランセイザーとしての戦いを優先し
ユーコとの渡米を断念したところが、その「悩みの中心の解消」への第一歩だろう。

今回登場したガダル星人は、ウォフ・マナフからの依頼で地球人を生物兵器に造り変えようと目論んでおり
またそうした理由もあってかウォフ・マナフへの忠誠心も薄いようでよく逃亡を図るなど
こちらもドコとなく生々しい描写がなされている。

バトル自体はかなりあっさりしてしまっているのは残念だが、今回のようにある程度は内容のある回であれば
仕方のないところであろうか。
それに前回2話分でたっぷり戦いは見られたわけだし・・・。


【特撮の見どころ】

・光のネットに囚われる涼子と蘭

光のネットなのだが、何かしらのフィールドによって空間が若干歪んでいるらしく
網目の向こう側の涼子や蘭の姿も歪んで見えるなど、細かい描写に注目。
またこのシーンはカメラも寄りで撮影しており、状況をしっかり見せていることも良い点だろう。
似たようなシーンの場合、他社であれば引きのカメラでそれらしい画にすることが多いだけに
細かいながら空間のゆがみなどを見せたこのシーンは注目に値するといっていいだろう。