2015年5月2日土曜日

セイザーX・第九話

第九話「史上最悪の3日間」

[宇宙海賊デスカル]

演出:市野龍一    脚本:林 民夫


冒頭。ブレアードと拓人の二人が何処で一緒になりながらため息をついていた

<1日目>

バルガレオン内では、三将軍のこれまでの成果をバーダー艦長が調べていた。
アクアルは2、サイクリードは1、そしてブレアードのコスモカプセル入手は0。
失望したとまで言われ大いに落ち込むブレアードだが、何か奇策を思いついたのか
パンダビル屋上にてサイクリードのコスモカプセルを借りて反応を出させていた。

一方ビル近くでバイト中の拓人は、アドからの通信によりパンダビル屋上へ急行。
そこに待ち受けていたブレアードと戦いになるが武器を出させ、さらにコスモカプセルを出させるブレアード。
ライオブレイカーにコスモカプセルを装備させたタイミングでブレアードが剣を振り上げ
ライオブレイカーを奪い去ってしまう。
珍しく頭を使ったブレアードが撤退しようとするが、それを追うライオ。


ブレアードが艦内へ戻ったのだが、その脚にしがみついていたライオ。
艦長が見ているであろう前で戦いが繰り広げられたが、ブレアードの剣がゴミ捨て場のボタンを押しゲートが開く。
ライオブレイカーを取り返そうと必死に掴みかかっていたライオだが、ゲートの中に入ってしまい
一緒にブレアードまでゴミ捨て場へ落下してしまった。


一方パンダビルだが、既にコスモカプセルの反応が消えたと同時にライオまで居なくなっていた。
困ってしまうレミーたち。


ゴミ捨て場内。
ライオブレイカーを取り戻したライオが早速ライオブレイカーを放つのだが
エネルギーを跳ね返してしまう壁であったため、ところどころへ跳ね返ってしまう。
さらに通信すら断絶されているこの場所では何も出来ない。 上でボタンを押さない限り中のゴミを破壊することはないようだが・・・。
戦っている場合じゃないとライオが提案。 ブレアードがライオブレイカーに手を伸ばすが
奪われたことを根に持っていたライオ。 仕方なく投げ渡すブレアードだったが
再度戦いがはじまってしまうものの、そのうち疲れ果ててしまう二人。

艦内ではアクアルとサイクリードがそれぞれに自分のやりたいことをやっているようで
全くブレアードに関心を持っていない様子。
安藤家へ戻ったレミーは、拓人が行方不明になったことを春子たちへ報告。
宇宙の果てまで行かない限りセイザーパッドの反応がないなんてことはありえないというのだが。


ゴミ捨て場では空腹状態の二人。拓人がポケットにあったチョコを取り出す。
ブレアードに薦め、渡そうとしたが不注意で落としてしまう。
わざとやったろうと詰め寄るブレアードだが結局拓人が食べつくしてしまった。


<2日目>

安藤家の人々や、ライオキャリアー内のレミーも拓人の行方を案じていた。

ゴミ捨て場では、拓人とブレアードが雑談している。
それぞれに戦う理由を言い合っていた。
ブレアードは父親であり神でもあるバーダー艦長のために戦っていて
拓人も、宗二郎に認められたくて戦っていたのだが二人ともそれぞれに理由をバカにし合っている。
そんな中ボソっと拓人が気が合いそうだなとこぼす。

相変わらずアクアルとサイクリードは自分のことだけをやっている一方
セイザーXの面々も拓人が居なくなったことであれこれ話をしだす。
戦闘力減少を心配するアドに対し、ケインは友達だからの一言で捜していたのだが。


なおも雑談に明け暮れる二人。
ブレアードも拓人も自分たちなりに頑張っているのに認めてもらえないことをぼやく。
拓人が思いつめていたが、ふとブレアードのほうを向けば剣を振り上げていた。
どうやらお互いがお互いを倒せば、艦長や宗二郎に認めてもらえるんじゃないかと思ったようだが
案の定体力の消耗を気にして、結局二人そろって寝ることに。

宗二郎もずっと気にしていたのだが、拓人にその思いは通じているのか。


<3日目>

拓人のお膳を並べて、帰りを待つ春子。
セイザーXたちも捜索中だった。

そうとも知らず拓人はブレアードと雑談に花を咲かせている。
別にコスモカプセルさえ手に入れば戦う必要もないし、自分は宇宙のほうが性に合ってるとブレアード。
じゃあ止めねぇか?と拓人が言うのだが、その言葉に我に返って立ち上がるブレアード。

その時、三日かけた発明品が失敗に終わったためサイクリードがゴミ捨て場に投げ捨て、
スクラップのボタンを押してしまう。
装置が動き出す。壁がくっつくまでに1分しかない。
装着してどうにかしようとするのだが、やはり攻撃が通じない。
ライオは、ゲートなら攻撃がとおるかもしれないとブレアードに提案。
その時お互いの名前を確認しあい、同時に攻撃をぶつけゲート破壊に成功。

ようやくゴミ捨て場から脱出に成功し、壁が引っ付いたさまを覗き込むライオ。
背後ががら空きのため、切りかかろうとしたブレアードだが直前で名前を呼び振り向かせると
バルガレオン船外へ放り投げてしまう。
正々堂々、正面からぶつかり合って倒すことにするぜと言い残すブレアード。


パンダビル屋上に叩きつけられるライオ。ようやく地上へ帰ってきたわけだ。
安藤家へ戻ると皆に心配の声をかけられるが、皆にお帰りを言ってご飯を食べに行こうとする。
宗二郎だけは無愛想に返すが、全員がはけた後にこっそりお帰り、と拓人に返したのだった。

一方バルガレオン内でもブレアードが艦長に帰ったことを報告、アクアルとサイクリードが近づいてくるが
労いではなく今後の戦いのアイデアを言い合うだけだった上に艦長すら心配していない始末に嘆くブレアード。

拓人はブレアードの事を考えていたようだが、その表情は笑顔に満ちていた。


【レビュー】

本作でもっとも有名な回と言える異色作。
今回は敵戦艦のゴミ捨て場の中に三日間居たというシチュエーションの妙が光る。

ドラマ面としては拓人とブレアードの因縁がここから生まれるのだが、同時に二人そろって
それぞれ宗二郎やバーダー艦長に認めてもらいたいという想いもあり、これからのドラマ展開にも深く関わっていくこととなる。
特にブレアードに関しては次回描かれるが、親を知らないためになおさらバーダー艦長を親として見做していたようであり、精神的支柱としては拓人から見た宗二郎以上のものがある。

またそれぞれの仲間たちの反応の落差も見どころでもある。
形はどうあれ拓人を心配しているセイザーXに、安藤家の人々と
一見自分のやりたいことしか考えて居なさそうなアクアル・サイクリードの二人。
前者は言うまでもないが後者はあれはあれで仲間としてああいう接し方をしていると考えれば割合悪くも無いというか
なんだかんだで仲はいいように見える。

一方、コミカル描写も繰り返しの多様に、エレベーター内での装着に気づかないOL二人、
#ビートルは装着状態でエレベーターに乗ったという話が後で入るのがより笑いを誘う。
同じ姿勢をとるブレアードと拓人に最後の落下まで、徹底してコミカルというかコントテイストすら漂っている。
前作ジャスティライザーや他社作品と違って、一発ネタに頼らずに
積み重ねで笑いを生み出す手法は本作独特といってもいいだろう。
話の筋に合わせてギャグやコミカルなノリが入る部分はコント的、落語的とも言える。
前作で起用された浦沢義雄とは明らかに違うコメディ色である。

元々アニメで下地のある伊藤健太郎はともかく、新人である高橋良輔がこの早い段階から達者な演技を見せている点も見逃せない。
演技と言うと三将軍の吹き替えだが、割と早く演技の軌道修正を行っていることに気づいた人も多いだろう。


ブレアード(伊藤健太郎)は荒っぽさは変えずに当初の気だるさを無くした上でややギャグキャラめいた喋りが目立つが
これはタイショーくん(とっとこハム太郎)やキャプテンファッツ(仰天人間バトシーラー)を彷彿とさせる面がある。

アクアル(淺川悠)もトーンを落とした演技を止め、洋画の吹き替えっぽい軽妙な喋りへシフト。
流石に地味過ぎると判断したのだろう。

そして一番・・・というか今後も目立つのがサイクリード(岸尾大輔)。
前の二人同様、最初の重さをなくしたのだがその後のキャラクターの変化に伴いどことなく気弱、それでいて軽いキャラクター的演技に変化している。


いずれも5話以降には既にこのスタイルになっていると同時に細かい演技の部分でも遊びが増えたり
アドリブも織り交ぜるようになっていたようである。
ようである、というのは過去に河田秀二が書いていた日記で、(特に)サイクリードのアドリブに言及していた点から判断したが
アドリブは今は言及しないがサイクリードは特に極端に幅の広い演技が目立ち、遊びを効かせているように思える。


【特撮の見どころ】

・ゴミ捨て場で跳ね返るライオファイヤー
・パンダビル屋上に叩きつけられるライオ

今回は内容が内容だけに合成もそれほど目立ったものはないが
後者は今見てもシュールで可笑しい。