2015年5月2日土曜日

セイザーX・第十話

第十話「船長の正体」

[宇宙海賊デスカル]
合成恐獣グラプター登場

演出:池田敏春    脚本:古怒田健志


<見守られているということ>

冒頭。車でコスモカプセル反応のある地点まで赴く拓人とレミー、宗二郎。
ある地点で止まり、そこから手探りで草むらを探すことになるのだが
すぐ近くにブレアードが同じようにコスモカプセルを捜していた。
装着し、斬りかかるライオとブレアード。 しかし近くに子供が居り、親は絶叫して子供に逃げるように促す。
それを見た宗二郎がライオに攻撃を待つように叫ぶがライオには聞こえず
ライオファイヤーを放とうとしていた。

すぐさま車から降りて子供を庇う宗二郎。 ブレアードのはじいたライオファイヤーが近くで着弾してしまう。
続いてイーグル、ビートルも合流したところでブレアードは退却。
宗二郎と子供は無事だったようだが、宗二郎は腰を痛めてしまったようだった。


バルガレオンに戻ったブレアードだが、後先考えずに飛び出すブレアードをそれとなく小馬鹿にしつつ
サイクリードがあるアイデアを二人に見せる。
どうやら、鳥の化石から合成恐獣を作ろうということだが強力なエネルギーを要する。
落雷のエネルギーを用いようとするサイクリード。やや慎重になる二人を非科学的だと切り捨てつつ装置にスイッチを入れる。
バルガレオンの耐久力は問題がないらしく、落雷を艦に浴びせエネルギーを得ることに成功。
艦内は火花が散っていたが、化石からは恐獣が生まれつつあった。

安藤家では、宗二郎の診察が終わり安心する一同。 ぎっくり腰のようだったが
宗二郎は拓人に会わないと言い出す。
無理やり宗二郎に会った拓人だったが、一言「出て行け」と言われてしまう。
春子が拓人をその場から連れ出すが・・・。


そしてバルガレオン内ではようやく完成した合成恐獣・グラプターを使った作戦をアクアルと共に考えるサイクリード。
蚊帳の外に放り出された感のブレアードは船長に自分も一生懸命やっていることを語る。
バーダー船長は信頼していると評価していた。
さらにブレアードは続ける。 親を知らず宇宙海賊になった自分にとっては船長は親、いや神同然。
そこまで話したところで再度船へ落雷。 艦内に火花が走ったと同時に艦長にもダメージが及ぶ。
何故死んでしまったのだブレアードと言い残し爆発。

カーテンの向こうに居たのは、ロボット。
駆けつけたアクアルとサイクリードもそれを眺め呆然とする。
今まで船長と思っていたものが実はロボットだったなんて。
同じく唖然としたサイクリード、アクアルを残しブレアードは一人、飛び出していってしまった。


<アイデンティティの喪失より>

安藤家では、自室でストレージリングとセイザーパッドを外して拓人が考え事をしていた。
そんな時街中に恐獣が現われ暴れていた。
レミーとケインが拓人の部屋に入ると、拓人はリングとパッドを置いたまま何処かへ消え去っていた。
アドルイーグルが先行して対応していたが遅れてライオキャリアーとビートバイザーも到着。
仕方なく、レミーがコアブレイバーに乗り込みウインドイーグルへ合神。
ケインは援護に回ることとなった。

攻撃を受けると生身であるレミーはダメージを負ってしまう。
グラプターとの戦いは分が悪く、ウインドイーグルでは歯が立たない。
ケインはビートバイザーを突っ込ませて、艦首を突きたてメガロキャノンを零距離射撃。
一応の撤退まで追い込むことに成功したがビートバイザーは不時着、ダメージを負ってしまう。

安藤家ではレミーが手首や額に傷を負ったようだが特に容態の異常はないようだった。
拓人は宗二郎に捨てられたと思っているんだ、と由衣がアドたちに言う。
拓人から見たら宗二郎は神様のような人なんだと春子も語っていた。
心配ばかりかける拓人のことで、レミーに謝る春子。


ブレアードが地上でこれからの自分について思い悩んでいたが、そんな中
再度グラプターが登場。アドはまたもウインドイーグルで応戦する。
先ほどの戦いで不時着してしまったビートバイザーの修理が済むまで動けないケイン。
しかし、どうしても攻撃力の差を埋めることは難しい。

拓人はゴーカートのレース場に居るかもしれないと春子に教えてもらったレミー。
そこへ向かうとやはり拓人が佇んでいた。
ここは、昔宗二郎に褒めてもらったことがある思い出の場所だった。 小さなころから叱られてばかりだったのが
その時に初めて褒められたのが嬉しくて、 だから今でもセイザーXになったのはまた褒めてもらおうと思っていたからだった。

しかし、そんな精神面の幼さは宗二郎はよく知っていた。
また叱ってもらいたいと思っているのだろうが、そろそろ自分で反省し、立ち直ることを覚えてもらわないと。
そんな話を春子から聞いていたレミーは、拓人にそれを告げるとストレージリングを渡す。

ブレアードはさまよっていたが、道にコスモカプセルが落ちていたことに気づく。
船長のために集めていたコスモカプセルだが、その船長がロボットだった。
もはやむなしささえ感じていたブレアードの頭上をライオキャリアーが飛んでいく。


<自我への目覚め>

ようやくイーグルたちに合流するライオ。グレートライオへ合神し
恐獣へタックル、肉弾戦を仕掛け最後にハウリングスラッシュで撃破に成功する。
戦いの一部始終を見つめていたブレアードは、ライオへの宣言を思い出していた。
正面からぶつかってかならず倒すという、その宣言を。


グラプターとの戦いを終えたセイザーXと対峙する三将軍。
しかしブレアードは手に持っていたコスモカプセルを投げ捨てライオに切りかかっていく。
切り結んでいた二人の剣から炎が爆発し、二人を引き剥がしてしまった。
退却するアクアルとブレアード。  

艦内ではカプセルを渡したことに怒るアクアルだったが
ブレアードは意にも介さず、セイザーX・・・ライオとの決着を付けることを誓う。
サイクリードもまた、最強の恐獣を作り出すことでセイザーX打倒へ執念を燃やそうとする。
セイザーXを倒した上で、宇宙へ帰ろうと叫ぶブレアードに頷くアクアルとサイクリード。

安藤家ではシップを貼りなおされていた宗二郎。
腰の件で結局怒鳴られていた拓人だった。


【レビュー】

前回とセットで見ることで意味のある回。
つまり、拓人とブレアードがそれぞれに褒めてもらおうとしていた宗二郎やバーダー船長からの自立がテーマとなっている。
前回では、それぞれにこだわりのある人物を提示していたが
今回はそれぞれの形でそれからの別離を描いていこうとしている。

拓人は精神的な自立を描いていた一方、ブレアードは精神的だけでなく実際にも別れることとなり
それは今回の一話で、拓人との決着にこだわるという個人的な目標の下
今後も戦っていくことを決意していくラストへ繋がっていく。
#終盤、ライオへコスモカプセルを放り投げたシーンが暗示的でもある。
この点はもともと家族の居る拓人とは対照的でもある。
拓人自身は今後の戦いで徐々に変わっていくことになるため、今回だけではまだ変化らしいものは見えていないところも注目点となろう。


今作は、殺陣に関してさらに若干の変化が加わっている。
アクション監督としてはグランセイザーから関わっている松井氏とジャスティライザーからの川名氏が就任しており
当然ワイヤーアクションやカンフー映画的アクションも散見される。
第九話でもジャッキー・チェン映画で見たようなアクションが一瞬見られるなどしている点が判り易いが
個人的には、今作はプロレス的ムーブが散見されることにも注目したい。
七話でも見られたプランチャ風飛びつきに九話での腕ひしぎ逆十字など
前二作では見られなかったプロレス技が見られるのが面白い。


さらに今回から装着時、合神時や必殺技使用時にナレーションが入っている。
これは前二作にあったED後の情報コーナーが無くなった(今作は「今日の一言」)ための措置と思われる。


【特撮の見どころ】

・グラプターVS流星神
・ビル街をすり抜けるアドルイーグル

グラプターの前半戦は看板にも久々に遊びが見られる。
模型メーカー・フジミのロゴが書かれており恐らくミニチュア用模型の提供もあったのだろう。
前半戦ではアドルイーグルの上に乗りかかってくちばしで攻撃するなど空中戦の展開もあったが
後者のようにビル街をすり抜けたりと意外と見どころは多い前半戦である。
もちろん零距離砲撃を行うビートバイザーなど、戦艦形態での戦いが見られたり
前二作以上に戦闘のバリエーションを持たせているところはポイントが高い。

後半戦はタックルでダメージを負わせるグレートライオを引いたカメラで見せるなどしているが
案外違和感がなく仕上がっている。
今回は空を飛ぶグラプターとアドルイーグル、ビートバイザーの合成はぱっと見悪くない。