2015年5月2日土曜日

セイザーX・第七話

第七話「追憶・1960」

[宇宙海賊デスカル]

演出:市野龍一    脚本:林 民夫


<未来の危機>

冒頭。安藤家では約束の時間に遅れた拓人を宗二郎が叱っていた。
それを春子が止めようとしたのだが、由衣がそこに入って家族総出の口げんかとなる。
ケインは約束を守らない拓人が悪いよと言うのだが、レミーは意にも介さず
「家族っていいね」と一人つぶやいていた。

ライオキャリアー内に戻り、物思いに耽っていたレミーだがそこにシャークからの通信が入る。
戦況は目下悪化の一途を辿っているが、必ず2005年へ行くと言っていたが
その直後にシャークの艦内が爆発し通信が途絶えた。
一同絶句。
悲しみにくれる間もなくコスモカプセル反応が検知される。
レミーは力強く、その地点へ向かうように促す


その反応があった山中だが、遅れてアクアルも到着する。
戦闘に対していまいち気が乗らないイーグルがアクアルと対峙するが、油断を衝かれて倒されてしまう。
そこへレミーが銃を構えアクアルを牽制、イーグルを叱咤する。
ライオ・ビートルもギグファイターとの戦いを終えて合流し、アクアルは形勢不利に。


一方、宗二郎も現地へ到着していた。
既に戦闘は終えていた一同は、二度とここには寄らないと約束したアクアルの去った後
山中を再度捜索していたのだが、やはりアドはシャークがやられたことを気にしていた。
しかし実はレミーのほうが気にしているはずとケインが拓人に話していた。

レミーはアンドロメダのルーエ星出身だったようだが、もとは幼いレミーを
シャークがルーエ星の施設に預けていたからで、幼いレミーにとってはシャークは父親代わりのような人だった。
後ろで聞いていた宗二郎が合流、先ほどの話についてなにやら意味ありげな表情を浮かべて頷いていたようだった。

拓人はレミーを慰めようと自分の幼い頃の話をするが、言葉に詰まる。
レミーもそんな拓人の気遣いに笑顔を見せたが、次第に表情が曇り泣き出す。
そこに宗二郎が現われ、シャークは生きていると言い切る。
宗二郎との約束があるから、必ずシャークはやって来ると。


<1960年の物語>

宗二郎はレミーたちに、昔シャークと出会ったときの話を聞かせる。

1960年のこと。
18歳だった宗二郎はエンジニアになるために上京中、空が光りつつ歪んでいたのを発見。
山中へ入り込んでみると、巨大な戦艦が墜落。 それを見た宗二郎がシャークと初めて出会う。
そして一年の間、シャークと生活を共にしながら修理を行い動かせるようになった。
修理が終われば戦艦を宗二郎が操縦することを約束していたのだった。

山へ降りて、久々に白いご飯を食べるために農家の人を手伝っていた宗二郎。
農家の人たちはその当時のニュースで、人類初の宇宙飛行士・ガガーリンの話をしていた。
人里へ初めて下りてうろたえるシャークを見て談笑する宗二郎たち。
初めて食べた米に、感慨深げな声を漏らすシャーク。


いつの間にか合流していたアド。さらに宗二郎は話を続ける。

シャークは、「未来の地球を支配する者」の部下にしてワームホールの開発者。
未来の地球は闇に包まれてしまい、コスモカプセルの力は喪われていた。
そこで、コスモカプセルの調査・研究のためにワームホールを使って過去へ送り込まれたのだが
マシントラブルにより1960年の日本へ不時着してしまった。
そのとき同乗者も居たのだが、怪我を負ってコールドスリープ中。
そんなことを、食事の後にシャークは宗二郎に打ち明けた。

未来から過去に来たものは未来へ戻ることは不可能。 
しかし一つだけ方法があった。   それは、コスモカプセルを12個集め、その力で未来へ戻る願いをかなえさせること。

約束どおり戦艦の操縦を果たした宗二郎。 シャークと共に12個のコスモカプセルを探す旅をさらに1年続けることになった。
ようやく集まった頃に、シャークは宗二郎にある話をする。

コスモカプセルを、宇宙海賊から地球を守るために使う。
宗二郎と出会ってから2年の間、地球の人々とのふれあいの中で地球を宇宙海賊の支配下に置くわけにはいかないと考えるようになったシャーク。
そうすれば2500年の地球は、宇宙海賊によって闇に包まれることもないだろう。
しかしそれを宗二郎が否定する。

拓人が宗二郎の発言に異を唱えるが、その時点でまだ何かしらの事情があったとだけ返す宗次郎。

結局、宗二郎の意見を汲みシャークは未来に戻ることを決意。
未来で仲間を募り、人類のために戦う組織を作り上げ未来のために戦うこと、そして再び宗二郎と会うことを約束する。
宗二郎もまた、自分が動けなくなったときには息子、または孫がシャークの仲間と共に戦うことを約束するのだった。
互いの約束の証として、シャークからストレージリングを手渡された宗二郎。


そして、コスモカプセルの力で未来へ帰ったシャーク。

2005年、果たしてシャークの部下であるレミーたちが到着し、宗二郎と拓人と出会った。
だから、シャークも必ず来るだろう。 約束を破ったりはしないと宗二郎は力強く言った。


<約束>

レミーのことを思いやってか、拓人はレミーへノートを渡す。
そのノートにシャークへの思いを書き綴らせ、タイムカプセルを作って中に保管・山中へ埋めようということだった。
宗二郎とシャークが出会ったこの山だから、500年後にもまたシャークは訪れてそのタイムカプセルを見つけるだろう。
アドは絶対にありえないと反論するが、絶対はないんだとケインが返す。
レミーも元気を取り戻したのか、シャークは生きているだろうと前向きな言葉をつぶやいた。


その時、山中の巨石からコスモカプセル・ピジョン10が現われる。
それに手を伸ばすレミーだったが、宙に浮いたコスモカプセルを再び現われたアクアルが奪い去ってしまう。
約束は破るためにあるものよ?と悪びれず言い放つアクアルへ装着して立ち向かうセイザーX。
フォーメーションを組むギグファイターへ向けてライオファイヤーを浴びせ撃破するが、アクアルは既に撤退していた。


戦後。
飯盒でご飯を炊いている宗二郎たちから離れて、レミーはノートへ自分の思いを書き綴る。
この時代で戦い抜くことを約束する旨を書き、さらにいくつかの質問を記す。
その最後には、「貴方は私のお父さんなのですか?」という問いかけが書かれていた。


【レビュー】

今回はストーリーもドラマもそれぞれ進んでいるが、目を引くのは「約束」をキーワードに話を作りきっていた点。
ストーリーは、シャークが過去に来て宗二郎と出会った話と、コスモカプセルの能力にまつわる部分が
ドラマはその宗二郎とシャーク、そしてレミーの出自にまつわる謎の提示が行われており
これだけでも内容は充分詰まっている。

また、ストーリーにもドラマにも密接に関わる部分として
「シャークが元々敵側の研究者だった」ことが今回提示されていることも、今後のストーリー・ドラマ展開の上でアクセント足りうる。

その上で「約束」を軸に話を作っていた今回は中々見ごたえがある。
それはセイザーXたちが戦い続けるための精神的な理由付けとしても充分に作用していくことになる。
サラっとアクアルが約束を破りつつまんまとコスモカプセルを奪っていくなど
敵側をうまく使ったことで今回のテーマを際立たせていることも面白い部分だ。


また、演出面や演技面でも地味ながら目を引くものもあり
シャークの通信が途絶えたときに目を覆い顔を伏せるゴルドは、第四話でも見られた演技であるが
これが深刻になっていく状況への説得力を増しているし
アクアルとの第一戦~途中で宗二郎が山に到着~戦闘終了、アドが山中へ入る
という一連の流れでは、アドが山中に入っていったカットの後に
アクアルが命乞いをして二度とここには寄らないと約束するカットを差し込むなど
時間経過とその際の展開をテンポよく見せているところが、前二作と比べ進歩したところと言っていいだろう。
#今作から合流し、今回演出を手がけた市野監督が、前二作を研究していたかどうかは定かではないけども・・・。
#恐らく市野監督の作家性の部分もあるだろうか。

蛇足ながら、今回の回想シーンでガガーリンのニュースに触れている点も芸が細かい。
ガガーリンによる有人宇宙飛行は1961年4月。宗二郎が戦艦を修理し終えて人里に下りた年と同じだがその時点で既に夏だったため
さりげなく時間経過によるニュースの浸透が描写されている。
林民夫の巧さが光るシーンと言っていいだろう。


【特撮の見どころ】

・不時着する戦艦
・回想のシャークと若い宗二郎を合成したカット

戦艦不時着のシーンはミニチュア特撮。
生前川北紘一が言っていた「ミニチュアのくそリアリズム」という言葉の一端が見受けられる
迫力あるシーンだ。

回想の宗二郎とシャークが手前に居る合成も中々綺麗で、実景(拓人達の居る山中)との違和感も全く無い。
超星神シリーズに限らず、実はサイバーコップやガイファードでも見られた
「さりげない合成の巧さ」というのが、東映や円谷では見られない東宝テレビ特撮の特色と言えるのだが
あまりにさりげなさ過ぎてかえって注目されにくいのは皮肉ではある。
#もっとも円谷もティガの途中くらいから徐々に合成面のクオリティアップはなされていっていたが。
#また、東宝の合成もカットによっては酷く適当なものも存在しており、安定しない点は強調したい。