2015年5月5日火曜日

セイザーX・第十一話

第十一話「父、帰る」

[宇宙海賊デスカル]
宇宙海賊バンケーン
グローザ登場

演出:米田興弘    脚本:林 民夫


<再会・父>

冒頭。安藤家ではレミーが拓人にコスモカプセルのレクチャーをしていたのだが
拓人はそれよりもんじゃ焼きの店に行かないかと誘う。
だがレミーは、シャークの一件などで落ち込んでいると思われていることを察し立腹。
互いに険悪になりレクチャーは途中で終わる。
拓人は家から出て行くと、その直後に春子がある人物を出迎えていた。

それは拓人の父・俊作。
少し離れた所でその姿を認めた拓人だったが直後にアドから通信が入る。
三将軍がバンケーンを引きつれ、セイザーXを誘い出していた。
変なタイミングでの呼び出しに困る拓人だが結局アドの元へ合流することを決める。
すぐ帰るから待っててと父に言い残して去る拓人。


その三将軍とイーグルセイザー、ゴルド。
決着を付けるぞとばかりにギグファイターも繰り出す。
レミーに続いて拓人も合流、最後にビートルも加わり拓人は装着、各勢力総出の戦いが始まった。


安藤家では父が由衣や拓人へのプレゼントを出したり、春子の料理を褒めちぎったりしており
拓人が帰ってきてから遊園地へ行こうと誘うのだが、セイザーXとしての戦いに出ていることを知ると
表情が急変、ガレージの宗二郎に対し親父の言っていたことは本当だったのかと問いかける。

拓人の父・俊作は宗二郎に厳しく育てられた反発からか拓人を目一杯可愛がって育てることにしていたのだが
そのせいか酷く我侭に育ってしまう。
だがある日、家に立ち寄った宗二郎がそんな拓人を見かねて怒鳴り出す。
傷ついたらどうするんだと俊作は怒り出すが、傷ついて成長していくんだと反論する宗二郎。
もうオヤジの時代じゃない、出て行ってくれと俊作は返したのだが
それ以来、どういうわけか拓人は宗二郎に懐くようになった。

きっと宗二郎に父性を感じたのだろう。
俊作は、自分は拓人の友達にしかなれなかったと宗二郎につぶやく。
父親失格かもしれないと言ったところで、厳しく叱るだけが父親の役目ではないだろうと宗二郎が返す。
その上で、単身イギリスに渡りF1マシンのエンジニアという夢を叶えた俊作を労う。
父から逃げるように春子と共に小さな修理工場を営み、やがて一人エンジニアとしての夢をイギリスで叶えた俊作。

さらに、拓人を戦いに巻き込んで申し訳ないと俊作に謝る宗二郎。


<いつか分かり合える時が来る>

戦いが続くセイザーXとデスカル。
バンケーンは炎属性のため、水属性なら倒せるのだが今セイザーXが使えるのはホエール12のみ。
誰が使えば効果があるんだ?とレミーに尋ねるライオ。
そして、三将軍もこの戦いを終えて宇宙へ帰る決心のもと、セイザーXへその牙を向ける。


安藤家では引き続き春子が由衣に、今の安藤家になるまでの経緯を話していた。
俊作が渡英する際、宗二郎に頼んで同居するよう頼んだのだが、それは拓人のためを思ってのこと。
子供を褒めて可愛がることを別に悪いと思わない、要は世代が変われば考え方も変わると春子は言う。
そんな春子の若い時分の写真を見てそれとなく毒づく由衣。 そこへ俊作が戻ってきていた。
涙を流していた俊作は春子へ、人はいつか分かり合えるんだねとつぶやく。


セイザーXはそれぞれの必殺技を三将軍へ放つが、三将軍もまた各々の技をぶつけ相殺させる。
激しいエネルギーの反応が起こる。
その直後にビートルがホエール12を用い、ホエールスコールを撃ち出し敵に大雨の攻撃を浴びせる。
さらにライオファイヤーを雨で弱っているバンケーンに浴びせ、撃破に成功する。

そのバンケーンが最後の力を振り絞って攻撃したが暴投。セイザーXの背後にある塔を破砕。
セイザーX側へ落ちてきそうになるのをイーグルがオックス9の技・オックスシールドを展開し逆方向へ弾き飛ばす。

切り札としていたバンケーンすら撃破された三将軍は撤退。
ライオも父のことを思い出し急いで撤収する。 
ここまでの戦いを、一人の女が眺めていた。

逃げ切った三将軍は、もう宇宙へ戻ろうとサイクリードが言い出しアクアルも同意する。
納得しないブレアードだったが、そんな三人の前に先ほどの女―――――― グローザが現われる。
貴方達に勝つ方法を教えないといけないようね、とグローザが切り出す。


<暗躍・ネオデスカルの女>

一方安藤家に戻った拓人だったが、既に父は帰っていった後。
これから出る成田発の電車に乗ればまだ間に合うかもしれないと宗二郎が言う。
急いで駅まで駆けていく拓人だった。

近くの川ではケインが家族水入らずにしようと気を利かせて佇んでいた。 
続いてレミーが合流、拓人に謝らなきゃとケインに話す。 最初に比べたら成長してきた拓人を褒めていたところ、ケインがレミーの背中についている発信機に気づいた。
そこへ、グローザが登場。
こんなことをしているヒマはないはず。 元の時代ではルーエ星が闇の侵食を受けようとしているのに。
そう言ってデータパッドを投げ渡すグローザ。
ネオデスカルか!? とケインがグローザへ問詰めるのだが・・・。

データパッドでは、徐々に闇に呑まれるルーエ星がパネルに映し出される。
ケインがやはりお前はネオデスカル?と向きなおしたが、グローザは既に居ない。

ようやく駅のホームへたどり着き、成田行き電車が来るタイミングでケインが拓人へ通信。
ライオキャリアー内では全員が、ルーエ星が徐々に侵食されていく様子を眺めていた。
あまりのショックで、精神的に参るレミー。
拓人もまた信じられない様子で通信を聞いていた。


成田空港では春子と由衣に送られていく俊作。
拓人に、地球の未来を守るのが使命だ。それが終わったらイギリスに来い。僕が一人前にしてやると伝えるよう春子に言うが
春子と由衣が呆然としてしまう。 噴出す俊作に、釣られて笑う二人。


ライオキャリアーへ戻って来ていた拓人。 レミーへこれは同情なんかじゃない、仲間がこんなときそばにいてやれなくてどうするんだよと言う。
ルーエ星の敵討ちを俺たちでやるんだとアドが続く。
拓人へ、今度おいしいもんじゃ焼きのお店に連れて行ってねとレミーがつぶやいた。

空港から俊作が乗ったイギリス行きの便が飛び立つ。
春子は、本当は俊作も戦いたかったがもともとの性格・・・ 人と争ったり運動するのが苦手で、
宗二郎の期待に応えられなかった自分を責めていたと由衣に話す。


グローザから何かの策を教わる三将軍。
絶対に許さないと息巻く拓人。
宇宙海賊デスカルとの戦いは、最終局面を迎えようとしていた。

●コスモカプセル →  セイザーX:7  デスカル:3


【レビュー】

拓人の父・俊作がらみのドラマと、デスカルとの最終決戦へのストーリーが同時進行する回だが
さらに終盤、ケインがネオデスカルか?と問質した女・グローザの登場もあり
新しいストーリーラインの発生も匂わせるなど、内容の詰まっている回だが
俊作と宗二郎の話の合間に、タイミングよくセイザーXの戦いが差し込まれるなどしており
今見返すと思ったよりゴチャゴチャした感じを受けなかったのは米田監督の手腕もあるのだろう。

特にドラマ面の展開に重きが置かれた回ではあるため、戦闘はだいぶあっさりしてしまったが
それでもコスモカプセルを用いての応用戦法や危険の緊急回避など
戦闘シーンでもそれなりに見せ場を作っているなど、ヒーロー物としての体面もしっかり保っている。
どうしても他社作品と比べると、本シリーズ・・・特にセイザーXはヒーローの戦闘シーンがあっさり気味になることが多いのだが
これはこれでゆくゆく訪れる巨大戦へのいいタメになっていることは改めて強調したい。


今回俊作がつぶやいた「人はいつか分かり合える」は、その後のドラマ上でもキーワードとなっていくことを留意してもいいだろう。
また、春子の若いころの写真を見て「あたしたちの世代が苦労してるんだからね」と毒づく由衣は
それとなくバブル時代に青春を謳歌した人々への毒ともなっているが
このあたりは林民夫を初めとした、バブル時代に20代だったクリエイターにそれとなく根付いている皮肉の部分なのかもしれない。
その当時10代になったかならないかの世代からすれば、なんだかくどい部分もあるのだが・・・。
#自分たちが10代~20代の時点でバブル時代を腐す発言はそこかしこに溢れていた。
#セイザーXのころは、ネット上でもやはりそのような言動が目立っていた時代でもあった。


一方ストーリー面。 ついにデスカルとの戦いが終わろうとしているが
さらにネオデスカルからの刺客・グローザの登場で謎が提示されていく。
第一話のレビューでも少し触れたが、2500年にセイザーXが立ち向かっていたバルガレオンと
2005年に現われたバルガレオンはどうやらそれぞれ所有者が違うような描写がなされている。
サイクリードが「地球にもこんなメカがあったなんて」と言っていたセリフがそれだが
2500年のものと同型ではあるものの、2005年のデスカル側はセイザーX自体を知らなかった所からそう判断できる。

そして、グローザがルーエ星の情報を伝えたくだりと
ケインがネオデスカルか?と問質すあたりを考えるに、どうやら2500年にセイザーXが戦っていた相手はネオデスカルだったようだ。
となると2005年に地球を闇に包んだのはデスカルということになるようだが
この500年の間に代替わりしているのは当然とはいえ、その要素をさりげなく提示している点は面白い。

ネオデスカルにワームホールは使えないはず、という話も実は今回出てきた話であり
これによりデスカル自体は今の時代の宇宙海賊ということもようやく提示されることとなる。
放送当時はぼんやり流していた部分だが、今改めて見返すとなるほどしっかり見ないと判らんかもしれない部分とも感じた。

ここまでの間、シャークを初めとしたセイザーX側のメンバーがデスカル・ネオデスカルを一緒くたに「宇宙海賊」と呼称していた点も、そうした疑問を抱かせる要素ではあったが
今思うと叙述トリックのようなものなのだろう。
天然でやってる可能性もあるかもしれないが・・・。


【特撮の見どころ】

・セイザーXと三将軍の技が相殺しあう
・塔がセイザーX側に崩れ落ちていく

後者はオックス9によるシールド展開~塔を反対側に押し出すシーンだが
実は超星神シリーズ三作を通して、CGモデルで建物を作って戦闘に用いるシーンはあまりない。
#グランセイザーで1回あったような気もする。
ともかく、元々ない建物を後付けで作ってこのシーンを実現させているが、実景との兼ね合い(やや曇天)のせいか
微妙にCGモデルの建物が浮いてしまっているのは残念。