2015年12月12日土曜日

家族

ジャスティライザーとセイザーXには共通項がある。
それは、東宝ヒーロー物においても形を変えて散見された要素でもある。
東映ヒーロー物でもなかったわけではないが、大抵ゲスト扱いだったり
あるいは「ヒーローと共に戦う存在」となっており、東宝作品のそれとは性質が大きく異なる。
これは東宝ヒーロー作品にただ一つある特色と言いきってよさそうなものである。

それはなにか。
答えは「ヒーローを陰に陽に支える家族」の存在。


これは東宝がはじめてテレビヒーロー物に参入した「レインボーマン」から見受けられる要素である。
そして「流星人間ゾーン」しかり「円盤戦争バンキッド」しかり「メガロマン」しかり。
10作しか作られていない東宝ヒーロー物だが、その過半数にこの要素が入っている以上注目しないわけには行かない。


レインボーマンことヤマトタケシには母たみと妹ミユキ、そして新聞記者であった父が居り
父は「M作戦」編終盤で殺されてしまうが、再会時にタケシがレインボーマンであることを知ることになった。
だが母も妹もタケシがレインボーマンであることは最後まで知らない。
毎度毎度フラフラになりながら家に帰って眠り、また出て行くタケシ。
母も妹もおかしいとは思いながらも、しかし日本を守るために何かをやっているらしいことは知っていたようで
彼女達はタケシの帰ってくるべき「家」を守ることでタケシを陰ながら支えていたともいえる。

とはいえ、度々死ね死ね団によって人質にとられたり狙われたりしており
このあたりが一種東宝らしいリアリティを感じる部分ではある。


ゾーンでは地球に漂流した防人一家による戦いが、
バンキッドでは宇崎家のご隠居が少年少女たちに戦力を与えバンキッドとして戦わせることになり、
メガロマンもたかしの母ローズマリーを中心とした防衛チームがそれぞれ作られており
この三作に関しては、後年東映ヒーローでも多く用いられた要素が試みられている。
つまり家族がヒーローチーム、および家族の父母が子供たちにヒーローとしての能力を開発し使わせるというもの。


さて前史を軽く振り返った上で本シリーズ。


ジャスティライザーでは主人公の一人・伊達翔太の父である源太郎が経営する伊達電器店が
ジャスティライザーたちの普段集まる場所として機能している。
本作においては母親の存在が明かされていない。
#松平健一との会話で、離婚したとおぼしき描写はある。

普段は澪や麗香、息子の翔太に仕事を手伝わせる一方
ジャスティライザーとしての話し合いを要するときはバックヤードを解放するなど協力的である。
もっとも当初は翔太自身、源太郎に自分が偶然得たジャスティライザーの能力をひた隠しにしていたし
その不自然さを訝しがった源太郎に殴られたりもしたのだが、ある回で源太郎自身も巻き込まれるようになり入院、
その後「人様に迷惑かけてねぇんだな?人様のためになることをやってるんだな?」と問いかけ
翔太がそうだと応えたことであっさり和解。
それ以降はジャスティライザーへ可能なかぎり協力するようになる。


終盤では「あいつらが帰ってくる場所を守らなきゃいけねえ」と、ダルガの放つメガリオンやブルガリオ軍団に蹂躙されていく街をよそに
一人伊達電器店を守ろうとしていたのが印象深い。
物語においては注目度がほぼ無いジャスティライザーだったが、この源太郎という存在が唯一ブレていなかったのは大きい。

ユカに対しては人生の先輩らしく、戦いに悩むユカにさりげないアドバイスを常にあたえる一方
両親とのわだかまりが解けない真也に対して鉄拳を叩き込みつつ、親の悲しさ辛さを語り
澪や麗香、神野には特に何も無い。

普段は翔太に対してはバカなことを言ったりやったりして和やかな空気を発散している源太郎。
だが、死ぬかもしれない戦いに臨む息子たちの安否を誰よりも案じていたのが源太郎でもある。
彼こそがジャスティライザーというヒーローの戦いの前後、素顔の彼らが戻るべき日常の象徴と言っていいものであった。


セイザーXではそのジャスティライザーでの伊達電器店と源太郎を発展させたような家族が現れる。
安藤家だ。
主人公の一人・安藤拓人には祖父・宗二郎と母・春子、妹・由衣が居る。
イギリスでエンジニアをしている父も居り、彼に関しては最終回の拓人の進路を指し示す存在ともなっている。

ワガママ一杯に育った幼少期の拓人を、古きよき父親の威厳でもって接したのが祖父である宗二郎。
本作当初はその宗二郎に認めてもらいたい拓人というのが、拓人自身のドラマの軸となっていた。
それゆえ何かと衝突することが多かった。
人様に認められたくて戦っているのか? 嫌ならやめてしまえ。
そう冷たく突き放す宗二郎だが、仲間に支えられ、自分がかつて救った子供たちに教えられ、
かつて敵だったブレアードたちやサンダーラとの出会いを経て確実に成長していった拓人。

一方の母・春子は拓人が戦いから帰ってくる場所・安藤家を一見何事もないかのように守っていた。
普段どおりに振舞いながら彼やその仲間がやってきたらご飯やフロを振る舞い
出撃を心配しつつも見守る立場であった。
戦艦の修理や、戦艦での打ち合わせなどが長引けばおにぎりを持っていくなど
後方で支える役目をも引き受けていた。

宗二郎もまた戦艦修理のみならずセイザーXの戦いをサポートするために各種アイテムを
ケインと共に作り上げるなど、彼も春子とは違う形で戦士たちを支えていた。


ジャスティライザーとの違いとして目立つのは、源太郎がうけもっていたヒーローのバックサポートという部分を宗二郎と春子に分散させた上で
宗二郎には特に、メカ開発によってより現実的なサポートを行っていることが目を引く。
さらに言えば源太郎はジャスティライザーの三人のドラマ展開に関わることが多いが
宗二郎は拓人とシャークのドラマ展開のみに限定されており、春子自身はブレアードのドラマ展開に関わるなど
人物が分散された上で、関わるヒーローが限定されていた。


そして二作の共通点を見てみると、前述したレインボーマンの母と妹の立場そのものでもある。
ヒーローが、戦いから外れて日常に帰る場所として最後まで機能していた。
家庭を軸に日常感を打ち出す傾向はレインボーマンも、ジャスティライザーも、セイザーXに至るまで共通しており
このへんは東宝ヒーロー特有と言える。

またレインボーマン同様、家族が人質にされる展開もあったりする。
源太郎と宗二郎がそれぞれ一度は捕まっていることに気づいた方もいらっしゃることだろう。
たみとミユキは一度だけじゃ済んでいなかったが・・・。