2015年12月8日火曜日

セイザーX・第三十五話

第三十五話「明かされるレミーの過去」

[ネオデスカル:ネオデスカル]
ディバイダー登場

 演出:市野龍一    脚本:林 民夫


<シャークとレミーのなぞ>

前回からの続き。
シャークには水属性の宇宙海賊の血が入っている。
そのため、未来が変わればグローザのように消滅してしまう恐れがある。
覚悟の上でネオデスカルに叛旗を翻し、今でもその考えは変わっていないと毅然とした態度で言うシャーク。
コスモカプセルによる未来の連鎖を食い止めるためなら自分一人の運命はどうということはないとまで言い放つが、
レミーの表情はこわばる。


ネオデアークでは、新しいダークアルマー建造を急ぐネオデスカル。
仮にサイクリードの命がここで失われれば、闇に包むことなく未来がまた変わってしまう。
それを恐れたネオデスカルがバレーダに促していたのだが・・・。


安藤家では三将軍が集まっている。
宇宙へ帰れば未来もかわるしセイザーXも喜ぶんでしょ、と言うアクアルに対しては
仮にコスモカプセルをネオデスカルが集めて願いをかなえてしまえば、何をどうしても自分たちは
また地球に来てしまうことを説明するブレアード。
だからこそ拓人たちに協力しなくてはと力説するのだが。

しかし、アクアルは苛立っている。
自分の居場所が欲しいだけだったのに。 中々得られない苛立ちに一人さいなまれていたという。
そんなアクアルにブレアードは、今お前はわからないだろうが皆何処かで繋がっているんだと諭す。
その考えは、安藤家で生活する中でブレアード自身が得たものだった。

そしてガレージでは、レミーが物思いに耽っていた。
存在が消えるときってどんな感覚なのかな、と拓人につぶやく。
シャークが使命に生きる気持ちもわかるんだけどなと拓人は言うのだが、
一方のレミーは、シャークが消えれば自分も消えるだろうと返す。
レミーは、シャークを父親だと認識しているようだったが。

コスモカプセルで願いをかなえたとき、自分の存在が判るんだともレミーはつぶやいた。


<レミーに残されたなぞ>

スタジアム前では、出店などで人出が賑わっていた。
そんな中、突如謎の怪人・ディバイダーが出現。
セイザーXが揃って対応することに。

無数の分身を使って翻弄するディバイダーに苦戦するセイザーX。
だが、傍らでセイザーパッドを使って分析・本物を見つけ出しタックルで怯ませるレミー。
肩を負傷するが、本物が割り出されたことでうろたえるディバイダーは撤退する。
しかし今までに無い無茶に呆れるライオたち。


安藤家に戻ると、シャークがレミーに告げた。
レミーは、シャークの子供ではない。
そして命は粗末にするな、お前たちは俺の未来なのだからと言い残し去っていく。

なぜそこまで真相を隠そうとするのか――――――
宗二郎が、話すこととなった。

過去に宗二郎がシャークと出会ったとき、シャークのそばに幼いレミーも一緒に居た。
不時着した宇宙船の光を見て、山奥の養護施設から抜け出してきたのだと言う。
それから不思議なもので、シャークに懐いていたのだが
彼女の余命は3年。 その当時の地球の医療技術では治せない不治の病に冒されていたのだという。


カプセルを集めきった二人は協議の末、未来に帰ってネオデスカルに対抗する戦力を作り上げることになったのだが
本当ならばレミーを治療したかったのだ。
しかし過去の地球の人々と環境に触れたシャークは、地球の未来を守る道を選んだ。
だから、レミーを連れて未来の医療技術で治療することもその時決めた。

養護学校の先生は、わけの判らないままではあったものの
この子に未来を与えられるのであれば・・・と、シャークの要望を受け入れ、レミーを託したのである。


だから、レミーはシャークとは血が繋がっているわけではない。
正体は過去の地球人、それがレミー。
そして2005年の現代に派遣するメンバーに志願したのが今のレミーだと言う。
病気の影響で装着に耐えられる体ではなくなったが、無事に育ったレミー。


もし1960年に、宇宙海賊の制圧阻止を願っていれば良かったのだが
それでは3年でレミーが死ぬ未来は変わらない。 だからこそ、レミーを生かすためにも
そして、闇に呑まれる未来を阻止するためにシャークは未来に戻ることにした。

レミーだけではない。 アドやケイン、ツインセイザーとゴルド、パトラも
自分が消えたあとの未来を作る、大切な命なのだ。
そうシャークは願っているだろうと、宗二郎は語った。


<絆と縁>

街中では再びディバイダーが現れる。
そこへシャークが立ちはだかり装着・対峙するのだが直後にセイザーXの三人が揃う。
二度目となる戦いでは対策も済ませたようで風の力のカプセルを三人が召還、分身を一掃。
ビートスラッシュで本体を撃破してしまう。

戦後、命を大切にしてくださいよとシャークに告げるライオ。


安藤家では、洗濯物を取り込むブレアードとアクアル。
まだおかしいサイクリードに対してアクアルが、もとに戻るように懇願する。
皆で宇宙に帰って、三人で一緒に過ごそう。
そこが私の居場所なの。 と素直に自分の願いを伝えたアクアル。
ブレアードもその態度にはあっけにとられている。


ライオキャリアー内では、アドたちが副官たちにシャークの招待などの顛末を説明していたが
聞き終わったパトラが、だから私たちは一人も宇宙海賊の血を引いていないんだと納得した。
全員が腑に落ちる。

そしてシャークリーガー。 レミーは感情を抑えきれない様子でシャークに詰め寄る。
シャークの使命は判るが・・・ 過去にシャークが、使命よりレミーの命を選んだように
自分もまた使命よりシャークの命を選びたいと涙声で訴えるのだが、
それでも自分の、コスモカプセルによる未来の連鎖を食い止める決断は変わらないと返し、立ち去るシャーク。


うなだれるレミーだが、立ち去った足元にあるものに気づいた拓人。
それは以前、レミーが拓人に促されて作ったタイムカプセルだった。
未来で、シャークはそれを回収して手紙を見ていたのだ。

その上で拓人は、血は繋がってなくてもシャークはレミーの父親なんだと言う。
精神的なつながりは実の親子以上だからだろう。


そして・・・
急がせたダークアルマーがようやく完成、戦いはいよいよ最終決戦へ雪崩れ込もうとする。


【レビュー】

今回はレミーを軸にドラマが進んでいる。
レミー自身の出自と、レミーとシャークの関係がここで明らかになったが、それは1960年にカプセルを一度集め終えたのにあえて未来に戻ったもう一つの理由となるものでもあった。
1960年から連れてこられた「過去の地球人」であるレミー。
だから、シャークが消滅してもレミーは消えない。

だがシャークにとってはレミーだけが未来ではない。 アドたち未来からのメンバーもまた、
自分が消えた後の未来の世界を託すに足る人間たちだった。
それはパトラが気づいた「宇宙海賊の血を引いていない人間たち」で固めたことからもわかるとおりだ。

このシャークとレミーの関係、第七話でレミーが作ったタイムカプセルを
ちゃんとシャークが回収していたことが描かれるなど、「絆」を強く感じさせる描写もあり
感心させられる。
#第七話も市野龍一と林民夫による仕事であることも留意されたい。


その一方、三将軍の中でアクアルも徐々に態度が軟化していく。
まだ操られたままのサイクリードを説得しようとしたシーンでそれは現れている。
居場所を求めていた彼女だったが、結局は三人なかよく宇宙海賊している事実こそが自分の居場所だった。
何も最高幹部になったりするだけが居場所じゃないということに気づいたということだろう。
ガレイド編のアクアルを思えば相当変化した部分と言っていい。


そしてダークアルマーを完成させてしまったネオデスカルだが・・・。
ここは正直勢いでながしてしまった感が強くて、イマイチ。
ドラマを優先し過ぎてしまってストーリー面が少し手抜きになったのだろうか。
前回の山頂に作ったものと、以前の月面クレーター部に作ったもので合計二つがダミーだったが
このあたりの説明が薄いのはともかく
本物のダークアルマー建造の時間稼ぎと思しきディバイダーとの戦いもアッサリしすぎる。


戦隊ものみたいに名乗りを上げたりするようになった本作ではあるものの
超星神シリーズ全編通してヒーローものとしてみた場合、視聴者が求めているものから外れる傾向が目立っていたが
これについては本作に至るまで直らなかった点の一つでもある。
幾度と無く触れた「カタルシスがない」「ケレン味がない」がこれである。


ただし、自分はそうした作劇をむしろ肯定する立場をとりたい。
そのあたりは「シリーズの総評」で詳しく語りたいが、これこそが東映や円谷にはない「東宝ならではのヒーロー物」を築く重要な要素の一つだと認識しているからだ。
大雑把な喩えで恐縮だが、東映・円谷が吉本新喜劇なら、東宝は松竹新喜劇をやればいいのである。
この喩えで何が言いたいか判っていただければ幸いだが・・・。

え?松竹もヒーロー物やってる?
まああれは東映に寄ってたからどちらかと言えば吉本新喜劇気味かな・・・ ということで。


【特撮の見どころ】

・なし

強いて言えばディバイダーの分身なのだがこれは切った貼ったの合成。
地面に影がまったく落ちてないが、まあ分身なので・・・。
本物のディバイダーが光りながら分身の中にまぎれるカットなど、それなりに見る部分はある。