2015年12月24日木曜日

超星神シリーズと特撮とオレ【9】

自分が実写ヒーローものに出戻ったのは1998年の夏ごろだった。
それは東映作品の「星獣戦隊ギンガマン」で、これで幼少期以来ハマって以降、自分が見ていない頃の作品群、自分が生まれる前のヒーロー物を片っ端から
レンタルビデオで見ていったものである。
すくなくとも2000年までにソフト化されていた(VHSレンタルソフトとして)ものはほぼ全部見たんじゃないんだろうか。
※仮面ライダーだけはBLACK以外興味がないのでスルー。 後々クウガとアギトだけは全話見たものだが。


ウルトラシリーズや戦隊シリーズ、メタルヒーローシリーズ、「がんばれ!ロボコン」などのコメディものに至るまで可能な限り見ていたが
大体一回こっきりで、中々二度三度と見返すものは少なかった。
傑作選としてリリースされていたウインスペクターと、恐竜戦隊ジュウレンジャーくらいじゃないだろうか。

ただ、ゴジラシリーズやガメラシリーズ、大魔神シリーズといったメジャーな特撮映画たちももちろん観ており
これらは映画ということもあってか何度も見返しやすいものだった。
後年、デアゴスティーニから出た「東宝特撮映画コレクション」も、幾つかつまみ食いとはいえ集めたのも、映画なのでさっさと観られる利便性があってのことだ。
テレビ番組は話数が多いから、どうしても見返すのが億劫になりがちだったというのもある。

海外の特撮映画でも、ハリーハウゼン作品である「タイタンの戦い」でストップモーションという技法を知り
当然海外作品も視野に入ることになり、海外作品においてのみ今でも特撮作品への関心を持ち続けている。


さて、こうしてみるとメジャーどころばかり見ていたし実際そうだった。
ピープロ作品のVHSレンタルは全くみかけなかったし、だいぶ後でDVDソフト化されたもののみ見ることになったのだが。


そんな自分が、東宝ヒーローにはじめて触れたのは2001年。
忘れもしない8月7日の事だった。

自分の当時住んでいた土地に新しくオープンしたレンタルビデオショップに並んでいた
「レインボーマン」の、全話セットがレンタルできるということで、まずは6巻くらいまで借りてみた。
全12巻だったので、記憶が確かなら6巻でM作戦編までは全部見れたはずだ。


第一話の印パ戦争から始まる導入、ヤマトタケシの目的が、プロレスラーとして妹・みゆきの脚の治療費を捻出するために
インドの聖者・ダイバダッタに弟子入りしようと入国、様々の事件を経てレインボーマンの変化能力を授かり
以降は「自分のため」と「日本を壊滅させようとする死ね死ね団との戦いのため」という
人間らしい欲と、自分の住む地域・国に及ぶ問題の解決に懊悩するタケシが度々描かれ、
そのストーリー性の高い物語にリアリティを持たせた世界観と、ドラマ面もおろそかになっていない構成に気づいた頃にはもう虜になっていた。

「M作戦」編は未だにヒーローものとしてこれを越えるのは難しいんじゃないかと思う名シリーズだと思っているし、
特にこのシリーズで描かれた「ヒーローが出来ることには限界がある」というシビアな問題提起は
その後のヒーロー物に陰に陽に影響を及ぼしているんじゃないかとも思える。
#特に東映作品「特救指令ソルブレイン」が可能な限りこれを体現している。


その当時の自分は、レンタルした作品は大体3、4日で消化してすぐ返すというパターンだったが
この作品に関しては7日フルで見切った上で返し、即座に残り6巻も借りて全話見終えたくらいだから
それだけ本作のインパクトが強かったことが伺える。
事実、しばらく後でDVD化されると聞けば即座に予約を取り全巻揃えたほどである。当然「ヨガの眠り」フィギュアも手元にある。

後年インターネットを自宅に導入するようになり、本作の評価などを見るとネタ的・カルト作的扱いが多いことに辟易していたものの
それでも自分の「ヒーローものとしてはこれが最も面白い作品」という評価は揺るがなかった。
2000年前半代、平成ライダーが高評価を得ていても他人事だったのは
元々仮面ライダーに興味がないのと、スタッフ側の発言がくどいというかワザとらしいこともあって全く興味の外だった。
唯一デザイン自体は好みではあるが。

よく視聴者側というか、受け手側の中でいわれる話で
「(自分にとって)一番いい物を見てしまうと、後は全部色あせてしまう」
という法則を後年知ったが、この当時の自分はまさにこの状況であった。
#これが、超星神シリーズが終わってからすぐヒーローものから離れた遠因でもあろう。


レインボーマンへの評価は確かに高かったものの、それはあくまでストーリー・ドラマ面の話。
特撮面に関してはむしろ不満も残るものではあった。
そして2002年当時はどの作品を見ても、特撮映像で唸るようなものあまり無かったため、ヒーローものそのものに飽きを感じた頃合だった。

そんな状況が続く2003年に現れたのが「超星神グランセイザー」だった。
自分が一番慣れ親しんでいた戦隊シリーズと真っ向競合する東宝作品。
そしてレインボーマンは上述の通り東宝作品。
個人的に本シリーズに異常なほど肩入れするようになった一因は、レインボーマンで楽しませてもらったからでもあった。

そして本シリーズ自体、そのレインボーマンに倣ったかのような構成を三作揃って取り入れている。
ストーリー・ドラマ両面はそれに及ばなかったのは残念ではあったが・・・。
しかしレインボーマンでは不満の残った特撮面に関しては流石に克服できていたどころか
競合作品と比べてもやはり本シリーズのほうが断然注目できるものであった。

「超星神シリーズ・個人的総評」でも書いたが、巨大戦をイベント的に、ストーリーラインに沿って入れるようにしたことが大きな工夫として目立っていたためで
川北紘一が生前拘った部分が活きたと言っていい。


レインボーマンのみならず、超星神シリーズ展開中には「電脳警察サイバーコップ」「七星闘神ガイファード」もレンタルして全話見たものだった。
ガイファードこそ無難かなぁ、という感想だったが
サイバーコップは今でも度々言及される合成と、それらとは別にストーリー、ドラマ面及び世界観に拘った物語作りと
見どころのある作品であったし、この二本も並行して見たことでさらに肩入れしていたように今としては思う。

サイバーコップ自体もまた、超星神シリーズと同様特撮面でなんとか東映作品と差別化し、張り合おうとした作品であったし
合成自体も実にさりげないものから、一目見ただけで無茶だコレ、というような酷いクオリティのものまで幅広かったが
スタッフの「やりたいことをとりあえずやる」という姿勢とその結果からくる清清しさはむしろ自分の心を掴んだものだ。
第一話の、銀行の壁を破壊した後のカットがまんま合成であるあたりには超星神シリーズでも見受けられた
「合成への万能感」を感じて微笑ましい。
#後の回だが高速道路はともかく、さすがに取調室くらいはふつうのセットを使えよ、と思った・・・。



自分が特撮という技術を使った映像作品に求めているものは何か。
「いい歳こいた大人たちが、懸命に頭をひねり、技術を駆使して見る側を楽しませる努力」
である。
それはウルトラシリーズのVHSソフト巻末特典(確かウルトラセブンだったはず)で見られた
ガッツ星人か何かの着ぐるみを製作しているスタッフの映像で感じたし、
平成ゴジラシリーズのメイキングなどを見ても感服させられたものであった。
そしてこの要素、東映作品はほぼオミットしている。
ヒーローの裏側を見せるのは野暮、という考えが根強い会社であるしそれは会社としてのポリシーの違いなので仕方ない。


そして、そうした表面を取り澄ました感じの東映より
あっけらかんと裏側を見せてしまう東宝や円谷のほうに自分は心を奪われていた。
ヒーローものから離れた、と言っている自分だがやはり東宝や円谷の
「(特殊映像という)ウソのネタばらししちゃう」という姿勢には未だに感じ入るところがある。
円谷英二が映像技術の部分で様々工夫したエピソードが今でも残されているが
東宝にしても円谷にしても根っこが同じだからこそ、裏側を見せることに躊躇がないのだろう。

今は特撮映画のメイキングをネット上で簡単に見られる時代となり
当然自分も見たりするが、合成においての進歩に感嘆することも多いし
ここをミニチュア(と実景)でやってるの?ということで驚くこともある。
とある方(個人)が述べていたが、「ハリウッドは過去の技術の継承と現在最新の技術の更新の両方が行われている」と聞いた時は
最新技術一辺倒という印象を持っていた自分がついついため息を漏らした話であった。
時間と機会があれば、特撮映画のみで特撮の世界にまた浸りたいとも思うほどであった。

もちろん、来年上映予定のシン・ゴジラも気になっている。
東宝自体のアクションと、東宝が集めた各スタッフの成果が如何ほどのものになるのか。
純粋に興味が尽きないものである。
まあ一番気になるのは特撮シーンのメイキングなんですが。 上映後に幾つか観られる事を期待したい。