2014年12月30日火曜日

ジャスティライザー・中間総評:ドクターゾラ編

ここでは、「幻星神ジャスティライザー」第一話~第十六話までをおさらいしつつ
中間総評を行う。


【無難な滑り出しと、キャラクタードラマ】

前作「超星神グランセイザー」の評価でよく言われている
「人物が多過ぎる」という部分は、スタッフ側にとっても思うところがあったようで
このあたりは川北紘一も自著で触れていたほどである。
そこで、本作は思い切り登場人物を減らす方向へシフト。
装着するキャラクターだけで見ても1/4もカットしている。
その分前作評価の「人物が多い」に内包されていた「キャラクタードラマが希薄」という欠点を補うこととなった。
とまあ、現象面だけを見ればこういうことになるのだが実際はというと。

ゾラ編(以下今回)に関してはジャスティライザーの3人と澪・麗香そして源太郎の六人のキャラクターを提示しつつ掘り下げていく構成が取られている。

直情径行ではあるが人はいい翔太。
理知的かつ分析家の真也。
年頃の女の子らしい内面を持つユカ。

上二人はキャラクターの傾向というか属性というようなものが充分描ききれているのに対して
ユカは良くも悪くも「等身大の女子高生」的側面のほうが強く、翔太や真也に比べると
思いのほかキャラクター性は強くないことが伺える。
もっとも、これはこれでユカ自身が「ジャスティライザーの力と使命」に対して思い悩むという
現実的な側面を担当していると考えれば、それほど悪いものではない気もする。
なにせ他の二人はあっさり受け入れているのだから。

とりわけ真也は「何もわからないのに勝手に戦いの道具にされるのはイヤだ」と考えており
どこかジャスティライザーの力を持った自分というものを冷静に受け止めつつ、しかし状況は俯瞰して見ているキャラクター描写がなされている。
翔太も翔太で「困ってる人が居たら見捨てられないでしょ?」というシンプルな一言で
ジャスティライザーとして戦うことをうけいれている。

この対照的な二人のバランスを取る存在がユカと言えよう。
何せ大してジャスティライザーの力と使命について悩んでない二人と違い、ラクロス部主将という立場と、代表選手にもなりたいという希望と
ジャスティライザーという現実の板ばさみになって悩んでいるのがユカであり、
このあたりは話が進むに連れて散発的に出てくるところからもうかがい知ることが出来る。
普通の感性の少女をヒーロー側に配置することで、ジャスティライザーというもう一つの現実が際立つといってもいいだろう。

澪や麗香はまだこの時点ではそれほどキャラクターを掘り下げられているとはいいがたい。
源太郎は翔太の父ということもあり、それなりに絡みも多いせいかそこそこ描写は多い。

【翔太と真也の対比】

感情任せで、あまり深く考えずに行動するが根は明るくて陽性なキャラクターの翔太。
父親との関係も良好であり、第一話に出てきた幼馴染など交友関係もしっかり描かれている。
その真逆で、知的で状況確認・データ収集を行いながら何をすべきか判断していく真也は
ともすると慎重すぎるように見えるし、事実最初のうちは翔太とその考えの違いで衝突することもしばしば。
その一方、家族と言うものに関してはやや思うところもあるのか
伊達電器店での団欒などには距離を置く一面もうかがえる。
このあたりは、次のゼネラルバッカス編でより深く掘り下げられていくことになる。

こうして書いてみると、実際スタッフが企図していたであろう「キャラクターを掘り下げる」点は成功しているといっていい。
もっとも実際は16話かけてこの二人の人物像が地道に描かれていったわけで
他のヒーロー物になれているとこのスローテンポは少々物足りないかもしれない。
良くも悪くもしっかり地に足をつけて描写しているといったところか。

【翔太とユカの関係】

最初は苗字で呼び合っていたのが、次第に名前で呼び合うようになるわけだが
ここは正直早くケリを付け過ぎたんじゃないかという気もしなくもない。
この二人については半分カップルのような空気もあるわけだが、それは話が後半になってからのこと。
そういう意図があるとするなら、もうちょい引っ張っても面白かったんじゃないかなとは思う。

#とはいえ恋敵なんかを出す余裕がないといえば無いのが、ヒーロー物の悲しさではあるが。

さておいて、この二人だけを見ていると清涼感のある青春ドラマ的雰囲気も感じられる。
恐らくスタッフ側も「等身大の高校生」を書く努力をしているからかもしれない。
特にラクロス部との兼ね合いで悩むユカや、そのラクロス部の仲間である理緒たちなどの関わりの描写を
最後まで棄てなかった点はもっと評価されていいんじゃないだろうか。


【ストーリーは・・・】

本作の評価は、三作中低いことがよく知られている。
ヒーロー物としてはオーソドックスすぎる内容がその評価の大半を占めてもいるのだろうが
個人的には盛り上がるヤマみたいなものがないままなだらかに話が進んでいることが
一番のネックなんじゃないかと思う。

今回に関しては「ステラプレートがらみのシリーズ」がこの悪印象を与える第一のポイントとなっているように感じる。
いわゆるマクガフィンではあるが、これのネックは「敵側にのみ破壊する利点のあるもの」でしかなく
しかもジャスティライザー側がゾラの目論見に気づくのは相当後の話。
この間、オリオン座博士だの超能力青年だのが挿入されているわけだが
そういう突飛なネタを入れないと持たないというネガティブな印象すら与えてしまっているのは正直失敗だろう。

私見では、このステラプレートシリーズで脱落した大人の視聴者が多いように思う。
淡々と破壊されていくプレートは、ストーリー上大した盛り上がりを提供してくれず
プレートそのものも先述のようにジャスティライザー側にとっては「カイザーハデスの封印を守る」
以外の意味合いしかない(上に、随分後にならないとそこらへんが明かされない)ために
子供はどう思っているかは判らないにしても、ある程度物語やドラマを理解できる年代からしたら
これほど退屈なシリーズも無いんじゃないかという気もする。

オーソドックスすぎるくらい普通なストーリーなのだから、せめてこうしたギミック面は凝っておいたほうが良かったのだが。

【慣れて来たせいもあってか、バランスもよくなる特撮】

グランセイザーのレビューをとりあえず全部見た方ならわかりそうだが、
グランセイザーは第一・二クールとそれ以降で特撮面においてはクオリティに開きが出始める。
恐らく最初にがんばりすぎたせいだろうとは思うが。

本作においては、最初からグランセイザーでの経験もあってかムリをせずに
しかし他社作品と比べても高いクオリティと言える特撮を見せられていることは評価できる。
CGもVFXもこなれてきたようで、僅か1年とはいいつつも確実に経験はフィードバックされているようだ。
ミニチュア特撮以上に合成のほうが相当努力しているのか、可能な限り実景との違和感をなくす方向で合成をしている。

また、自在に巨大化する上にディティールアップまでするサイバーナイトや
サイバーナイトと宇宙巨獣の二面作戦を多用するなど、特撮パートへ流れていく部分も前作よりも進歩しているのが特徴だろう。


【中間総評】

細かい部分を言い出すとキリがないが無難。
これ以上の言葉が見つからない。
とはいえストーリー面の展開が本当に弱くなっているのはいかんともしがたいのだが・・・。
この傾向は、次のゼネラルバッカス編では若干改善されるものの、今度は・・・。