2015年4月16日木曜日

脚本家・河田秀二への思いだけ

本シリーズに全て関わった脚本家は二人居る。
これは以前も述べたが、その一人はジャスティライザーの構成も手がけた稲葉一広。
もう一人は、今回の考察?の主役である河田秀二だ。
まず最初に個人的な話から入ることを許して欲しい。


河田秀二は、超星神シリーズ/東宝ヒーロー作品を将来背負って立つ脚本家である。


「ナニ言ってるのこの人?」と思われるかも知れないが、これはあくまで個人的な将来像の話。
それだけ、自分の中での河田秀二への期待感は大きかった。

初の河田秀二脚本回はグランセイザー第三十六話「さらば相棒!」
この話を見たとき、自分の中でドラマ面においての注目点が増え、さらにはグランセイザーそのものへの注目度が蘇ったことが今でも思い出される。
それまでのグランセイザーと言えば淡白なキャラドラマが多い一方ストーリーはそれなりに見るものもあったが、
第三部はウォフ・マナフの刺客たちとの戦いというバラエティ編となり
折角新展開へ雪崩れ込んだにも関わらずストーリー的には停滞感著しい時期でもあった。

だが、この回だけはそれまでと違ってドラマ面を大きく強化したかのような内容であった。
詳しいことは本編レビューを是非見ていただきたい。
レビューとしてみたとき、注目するポイントや自分自身の変化などで感想が若干変わったものの
それでも大筋において・・・ 「グランセイザーの、キャラドラマ面で褒められる唯一の回」という評価自体は変わらなかったことはハッキリと断言できる。
#実際は唯一、というほどでもなく幾つか光る別脚本家によるエピソードも再発見できたのだが。

それだけに、本放送当時は河田秀二への期待を本シリーズ終了まで抱き続けていた。
今は削除されたが河田秀二ファンサイト「新・なんて世の中だ。」の日記においても
セイザーX放送当時、第四弾と思しき企画書を提出するところまで来たのに、結局シリーズが終わったという話を河田自身が日記に記していたが
どれだけの人が覚えているだろうか?
そして自分自身も、ジャスティライザーの時点で「将来的には、河田秀二が東宝ヒーローを代表する脚本家になっていくんだろうなあ」という期待を持っていたため
余計に妄想は膨らんでいた。


しかし。
ご存知のようにコナミは三作で特撮ヒーローものから撤退し、後番組が「おとぎ銃士赤ずきん」という女児向け?アニメになってしまう。
それ以降は大仁田厚監督の映画脚本や映画「ストーンエイジ」、いくつかの深夜ドラマの脚本などを経て、現在は業界から離れてしまったようだ。

今でも非常に残念に思う。 
実はこのblog、そんな河田脚本回を改めて楽しみたい側面もあった。
そうして現在ジャスティライザー第四十話・四十一話(河田がジャスティライザーで執筆した最後の仕事)まで見てきたが
正直な感想を言うと、グランセイザー三十六話を超えるほどのものは、ジャスティライザーやグランセイザー四十八話においては見受けられなかった。

特にジャスティライザーにおける河田回は、全部「スキマを埋める話」以上の意味合いを持っていなかった。
それだけ東宝が用意した文芸スタッフ自体が人材的意味で少なすぎると感じられるのも悲しいところだが。
オリオン座博士や超能力青年、伝通院洸再登場にザリガンと
ジャスティライザーではコミカルというかネタに走り気味なキャラクターたちの出てくる回が目立つ。
一応、神野の初装着回や真也のパワーアップ回?などのポイントとなる回もあるのだが・・・。

割とキャラ立ちの点については、他の脚本家と比べると判りやすさの意味では問題はないのだが
ジャスティライザーに関しては、どうも他の脚本家回との悪いコントラストで浮いてしまった面のほうが強い。
#浦沢義雄回はまた別。

そしてセイザーX。
実はここで「次の作品は河田が構成もやるといいなあ」とまで思っていた。
しかし実際には林民夫氏を起用。  その結果三作中で評価が比較的高い作品になったことは周知の通り。
ただし、それでも腐るどころか水を得た魚の如く、脇を固める脚本家として立派に仕事を果たしたのである。
東宝側スタッフにしても、林氏の次の脚本回に河田秀二を据えたところから
相当の期待を持っていたであろうことは想像に難くない。
#セイザーXでは第五・六話からの担当。 特に第六話などは評価が高く、自分もここで再度河田秀二への期待を持ち直した。
刺激的あるいはアクのあるキャラや展開に頼らず、しかし人物ドラマに深みを与えた河田脚本はもっと評価されていいはずだ。


ただし、実際は先述の日記で様々の愚痴を吐き出すようになったのもセイザーXから。
その後河田自身が立ち上げたblogを見ると、どうも当時の東宝側スタッフの一部とソリが会わなかったらしい。
#blogがアーカイブとして閲覧できるが、当時の様子を記した記事がなくなっている。
#どうも本シリーズは、河田にとっては多大なトラウマを植え付けたようなのだが・・・。
恐らくセイザーXの時点で修復不可能なほどの決裂があったのだろう。
後年それを知り、非常に悲しい思いをした。

河田秀二は、元々刑事ドラマの好きな人間で、インディース映画界では有名な監督だったと言う。
刑事ドラマが好きな脚本家。
ここだけを抜き取ると、現在も東映ヒーロー物で活躍している小林靖子を思い出す。
そういえば小林脚本の作品である「星獣戦隊ギンガマン」でヒーローものに出戻った自分であった。


●ここからは完全なるたら・れば話な上に個人的感情の話なので、飛ばしていただいて結構である。●


個人的にはどうしても「なぜ河田秀二は、小林靖子になれなかったのか?」という思いもある。
大前提として才能の部分を言い出すファンも居るかもしれないがそれは脇に置くとして。

そもそも東映という会社は、当の小林も好きな刑事モノや時代劇などを長年てがけて来た会社。
小林自身は「特警ウインスペクター」のあるエピソードに感銘を受け、
エクシードラフトの頃にプロットを東映に送ったところ、それが先輩脚本家の宮下準一やプロデューサーの堀長文氏の目に留まり
その時点で社会人だったのだが、シナリオ学校に入学するなどして勉強を重ねた結果
プロの脚本家としてデビューしたことは、東映ヒーローだけを追いかけている人間にはよく知られている話である。
その後の「星獣戦隊ギンガマン」でメインライターになるまで実に5年の間サブライターで活躍していたが
これといったコネのない人物がプロとして本格活動・ひいては東映ヒーローになくてはならない人物となった点を考えると異例中の異例とも言える。


個人的才能の部分も確かにあるだろうが、それ以上に当時の東映は小林にとって非常に恵まれた環境であったことは無視できない。
何せ既に実績を積んでいた先輩脚本家たちが居たため、打ち合わせなどで個人的に吸収・昇華できる機会は多かったはずだ。
長らくヒーロー物を演出してきた監督達との打ち合わせも、刺激的であったろうし
プロデューサー陣も、恩人の一人といえる堀長文氏をはじめ日笠淳、高寺成紀、白倉伸一郎といった良くも悪くもアクのある面々と仕事をしていたことで
着実にキャリアアップしていったことも大きなポイントとなったろう。

また、ファンから見ても「ヒーローファンとして理想的なポジションに居る人物」である上に
「作品自体も面白い」という評価が加わった結果、今でも東映ヒーローファンには重要な人物と目されているわけだ。
#自分としてはウインスペクターとソルブレインが、東映ヒーロー物全体では最高傑作だと思っているだけに
#小林に関しては他の東映ヒーローファンみたいに過剰に好意的ではないが、若干のシンパシーは感じる。


そしてここでの主役・河田秀二が小林のように恵まれたキャリアを積めなかった理由も見える。
以前の考察?でも述べた気がするが、東宝自体がそもそもヒーロー物を継続して作っておらず
その上スタッフも毎回入れ替えが不可避という状態。
これは、超星神シリーズ展開時には円谷作品も展開中だったため
特に演出家がウルトラマンへ行ってしまうことがネックではあった。

河田秀二が超星神シリーズへ参加するまでの流れをネット上で見られる情報から引用・軽く纏めると
インディース映画「なんて世の中だ。」が吉本興業系のプロダクション「エス・エス・エム*」に認められて以降商業映画の世界へ足を踏み入れる。時期は2000年。
以降、様々な映画へ参加しつつ「月刊Gun」主催のビデオコンテストへ送った作品が評価され
辻本貴則、きうちかずひろ、押井守、そして後にグランセイザーの構成作家となる大川俊道ら五人がメガホンを執ったオムニバス映画「KILLERS」の1エピソードを担当。
#大川俊道自身も「太陽にほえろ!」や「あぶない刑事」を脚本で手がけていた。
#河田はつくづく刑事ドラマに縁がある人物である。

*現在はよしもとクリエイティブ・エージェンシー。

河田の旧blogによれば、この時大川俊道との縁が出来たためにグランセイザーへ参加するキッカケが生まれたそうだ。
その後ジャスティライザー、セイザーXと参加することとなったが
シリーズ終了後の活動は上のほうでも書いた通り。 
脚本家としての活動は2009年で終了。僅かに6年である。
先の小林靖子のキャリアと比較すると、6年も活動していれば一本はメインライターのテレビヒーロー物を手がけててもおかしくない。
ただし、オリジナルの劇場映画は2本ほど手がけているのだが・・・。


もし東宝が、東映のように毎年・・・とは言わないまでも2年ほど間を置きつつ2、3作ほど連続でテレビヒーローものを手がけており、東宝側でもノウハウを蓄積しつつ自分達で他社とは違う演出家・脚本家を囲い込めていたとすれば。
#ここはかなり重要なポイントとなるが、別の更新で述べたい。
そうすれば、河田秀二自身も先の小林が新人時代に置かれていた状態のように
先輩たちから様々吸収しつつ、自分なりの物語の作り方を確立できていたはず。
超星神シリーズは三本で終わってたにせよ、新シリーズで今度こそメインライターに昇格し
以降は「東宝ヒーローに無くてはならない脚本家」になっていた可能性もあったんじゃないかと思う。
※ここはスポンサーなどの現実的な話を完全に無視しています。悪しからず

もっとも河田秀二と小林靖子の最大の違いは
「先に映像監督として活動していた」ことであり、さらに言えば河田はガンアクションが好きで
刑事ドラマも「太陽にほえろ!」を心のバイブルとまで言い切る人物。
この経歴や嗜好の違いの時点で小林とは対極的な作家性である。
ここではあくまで「東宝作品に欠かせない人物」という体で吐き出させていただいた。


今でも、河田秀二が脚本家として活動できていたならと思うことはチラっとある。
既にヒーロー物や特撮作品への興味が失せた自分ですら、河田脚本のそれらが作られると聞けば
また見てみようかな、と思う可能性はあったと思う。
それだけ、個人的には河田秀二脚本に対する思いいれは強い。
あの「さらば相棒!」は、東映作品みたいに人物が強調されるわけでもなく、文学青年的な臭いすら漂っていない
ある意味淡白さのある東宝作品の中にそれらとは異なった魅力を湛えた名作だと今でも思う。

超星神シリーズの話題ではいつもスルーされてしまう河田秀二。
しかし、彼の作品が特撮映像一辺倒な印象になりがちな本シリーズのスパイスたりえたことだけは心に留めて欲しいし
可能ならば彼の手がけた脚本回を見て欲しい。


「河田秀二は、超星神シリーズ/東宝ヒーロー作品を将来背負って立つ脚本家だった。」


●その②はこちら

●その②の続編もこちらでどうぞ。