2015年4月22日水曜日

セイザーX・第一話

第一話「拓人は燃えているか!」

[宇宙海賊デスカル]
宇宙海賊・ライバック登場

演出:米田興弘    脚本:林民夫


<これは、これから起こる未来の歴史>


西暦2005年、宇宙海賊により地球は制圧・世界は闇に包まれる。
それから時は進み西暦2500年。
地球を解放するべく、海底都市からセイザーXが宇宙海賊の追撃を振り払いワームホールへ突入。
目的は2005年の地球へワープすること。
司令官・シャーク隊長がワームホールへ突入を指示。一度過去へ行けば二度と元の時代へ戻れないリスクを負ってまで
宇宙海賊侵攻前の地球へいくこととなったレミー、アド、ケインと彼らがそれぞれ乗る流星神。
お前達が、未来を救うんだ。
シャーク隊長のつぶやきは彼らに届いたろうか――――――


<2005年>

ツインリンクもてぎでは、新人F1ドライバーのテスト中。
直線を高速で突っ走るがカーブで制御不能になり停止。テスト不合格となる。
会場から追い出されそうになる少年の名前は安藤拓人。
近くのスタッフからは安藤宗二郎の孫なんだろう?と指摘され
試験官もそれならそのコネでF1レーサーにでも何でもなれるだろうといわれるのだが
じいちゃんは関係ない、自分の力でレーサーになりたいんだと返す拓人。

じゃあ帰っていい、と冷たくあしらわれるもなおも食い下がる拓人。
その時、上空に現われた宇宙海賊の戦艦バルガレオン。
これを、拓人の自宅に居た宗二郎も認めることとなる。
宗二郎は慌てて居間の収納から茶筒を取り出し、自宅から車で何処かへ飛び出していく。


そのバルガレオン内では、12個のコスモカプセルを回収するよう艦長・バーダーから命令される
ブレアード・サイクリード・アクアルの三将軍。
コスモカプセルとは一体?


<宇宙海賊登場>

テスト会場から出て行った拓人は、バルガレオンを追っていた。
やがてたどり着いたのはとある山。
登山客の居る中、バルガレオンが山近辺で移動を止め、突如攻撃を開始する。
逃げ惑う拓人と登山客たち。
その登山客の中で、子供二人が岩山から落ちそうになる。
すぐ助けてやるからな、と行きがかった拓人が言うが子供の一人は「最近の大人は自分のことしか考えねーからな」と冷ややか。


ロープを探していた拓人の前に、突如現われた一隻の流星神・ライオキャリアー。
拓人を認めたレミーがキャプチャ光線により艦内へ拓人を引き込む。
三将軍は初めて見たという態度を示す。 早速ブレアードは攻撃を指示。
攻撃を受けるライオキャリアーだが、後からアドの操縦するアドルイーグル、ケインのビートバイザーが合流。

レミーは拓人の腕にあるストレージリングを見て、宗二郎だと認識しているようだがそれを訂正させる拓人。
攻撃を受けるライオキャリアーの中で、ふと先ほどの子供を思い出す拓人は
レミーから操縦桿を奪い、ライオキャリアーを子供のもとへ移動させる。
やがて子供をキャプチャ光線で助け出す拓人。
ぼく、信じてたよとゲンキンな子供を見送る拓人だった。


<X!装着!>

バルガレオン内ではコスモカプセル・ウルフ5を発見したとアクアルが報告。
そこで宇宙海賊ライデックを差し向けコスモカプセルを奪取させるブレアード。
地上へはギグファイターと共に降り立ったライデック。 それを確認したレミーは拓人と共に地上へ降りる。
コスモカプセルを奪われないために、そのストレージリングを持っているなら貴方には戦う使命があるとレミーが告げる。

幼少のころから宗二郎から聞かされていた話が、現実のものになったのだ。
レミーから渡されたナックルクロスを使い、ライオセイザーへ装着を果たす拓人。
ライデックとの戦いに、ライオブレイカーをカプセイザーG2に転送させるレミー。
さらには戦いの最中ライデックの属性をセイザーパッドで分析・雷属性ならライオセイザーで倒せると教えるレミー。

さらに地上に降りてきたアドがイーグルセイザーへ、ケインもビートルセイザーへそれぞれ装着し合流する。
ライデックだけでは厳しくなったためブレアード自らが降り立ちコスモカプセルを強奪することに。
バルガレオン相手にはアドルイーグルに乗るゴルドと、ビートバイザーに残ったツインセイザーがそれぞれ担当することに。
カプセルを取りにいけとイーグルに促されるライオ。 その相手はブレアード。
取り合いの中、レミーからカプセルを武器に装着しろといわれるライオだが奪い合いはなおも続く。

その最中宗二郎がレミーの横に現われる。
茶筒の中から現われたのはコスモカプセル。しかも三つも揃っていた。
宗二郎からライオン1を投げ渡されライオブレイカーへ装着。
直後にライデックの攻撃で吹き飛ばされるイーグルとビートル。 
そのライデックへ向け、必殺技・ライオファイヤーを放ち撃破するライオ。
一瞬うろたえるブレアードだが、落ちているウルフ5を見つけ手に入れようとするが
ライオがさっさと回収、イーグルとビートルに囲まれたブレアードは撤退する。


拓人は子供の頃、宗二郎に約束したことがあった。
18歳になったら未来の中間達と一緒に、宇宙海賊から地球を守るために戦うんだ。
そしてその時が訪れた。
2005年・地球が宇宙海賊に征服されることが決まっている現代。
そんな未来を救うため、未来の戦士たちと戦う拓人。
セイザーXとしての戦いが今、始まる。


【レビュー】

第一話としては無難にツカミのとれている回。
戦う目的と、敵の目的とが同一である点も込みで、前二作と比べてもかなりわかりやすくなっている点が特徴とも言える。

三将軍が流星神を見た際「地球にあんなテクノロジーがあるなんて」とつぶやいていたが
バルガレオン自体は2500年にも現われているにも関わらず三将軍が知らない点が、今作のストーリーの謎としてさりげなく提示されている。
いわゆる「タイムパラドクス物」であり、同時に「マクガフィン物」でもある本作の
ストーリー面での複雑さが少しだけ見え隠れする描写だ。

#マクガフィンという単語は、原義としては使い方を間違えていますが
#ここでは、「あるアイテムを軸に進む物語」として「マクガフィン物」という言葉を作って表現させていただきました。

第一話を見ると、その戦いのロケーションといい最初からセイザーXの三人が揃ったあたりといい
前二作から考えると、東映の戦隊シリーズの影響を隠していない点に気づく。
グランセイザーが廃屋・ジャスティライザーが街中だったあたりはどちらかといえば平成ライダーっぽさもあるが
二作とも第一話の時点では装着した全員が揃っていなかったりするので
より「集団ヒーロー」らしい一話になっている。

本放送当時は、コミカル面込みでそこらへんの開き直りがあまりいい印象をもてなかった理由だったが
今見るとまあ、これはこれで無難なんじゃないかな?と思う。


今作のみシリーズ構成・脚本スタッフに林民夫氏が加わっている。
林氏はアニメ「サザエさん」「YAT安心!宇宙旅行」などで既に名前は知られており
アニメの印象が強い氏ではあるが、実写ドラマや映画も幾つか手がけている。
近作では「永遠の0」に関わっていたことも知られている。
本作で初めて(というより唯一)ヒーロー物のシリーズ構成を勤めることとなった。
会話のテンポの妙が光るが、キャラクター説明もあっさりではあるものの一話でほぼ全員を提示しているなど
これも前二作との大きな違いとして見受けられる。

また今作で「シリーズ構成」という役割が復活していることに気づいた人も居られるだろうか?
前作は何故か稲葉一広にはそれが振られていなかった(というか元々無かった)。
前々作においては大川俊道がシリーズ構成も手がけていたのだが、こちらはほんの数話しか脚本を手がけていない。
今作の林民夫は、割合から言って上記二名よりは多く手がけているというのもあるが
大川と違いちゃんと「構成」をしているようなので、安心して観ていいだろう。


また、今作は全体的にコミカルなやり取りや描写が多く含まれているが
これは生前川北紘一が「特撮魂」で述べていた話にも影響されているのだろう。
・グランセイザー → 「キャラ多過ぎる」
・ジャスティライザー → 「マジメ過ぎる」
という意見を受けてのスタッフからの回答とも言えるのが、本作セイザーXの方向性だ。
マジメと言われたジャスティライザーも途中でコミカルなシーンを入れていたもののことごとく外していたため、
最初からコミカルにしようというつもりなのだろう。

コミカル面に関してはヒーロー・敵両方に共通しており
特にブレアードは既にその粗暴で周りを見ない、一本気なキャラクターがその後の彼の運命を暗示しているかのようだ。
コナミが今作で提示した「ムギュッ!と愛情」というテーマによる商品展開といい、全体的に幼児にも判る作風になっているが
エンディングテーマや「今日の一言」までこれが徹底されている点にも注目。
#このあたりについてはゆくゆく総評あたりで述べるつもりだが。


【特撮の見どころ】

・バルガレオンの砲撃を受ける山

前作ジャスティライザーではのっけから巨大戦を見せていたが今回は控えめ。
そこらで爆発を起こす山はやはり見ごたえもあるといえばあるのだが、
山中でタイフーンを起こし発掘現場をメタメタにした前々作グランセイザーと比べても地味目に映るのはいたしかたないところか。

本作は意図的にか知らないが、やや合成がチープな面が見受けられる。
地球へ現われたバルガレオンの合成もどことなく古い印象を受ける(スケールがおかしい)。
途中で暴走するライオキャリアーの合成といい、目に見えてわかるコミカルさを前面に押し出しているのも今作の特徴だ。

ED映像までもその調子なので、前二作のようなクオリティを期待するとちょっと肩透かしを食うかもしれないが
それでもストレージリングを艦内パネルで確認した映像や、ライオブレイカーで回転するライオン1など
細かい合成のクオリティの高さは相変わらずなので、これはメリハリをつけるようになったと解釈してもいいだろう。